武田薬品湘南研究所 見学会
2月20日、武田薬品湘南研究所が一般向けに見学会をするというので行ってきました。電車の中から見てもかなり壁のように巨大なこの施設。いよいよ中に入る日が来たのか…と少しブルーな気持ちで出かけました。
動物関係の方もかなり行かれたようですが、たくさん来ていたのは、地元のごく一般の方々でしょうか。日本最大といわれる動物実験施設に、日常の人々…。なんとなく違和感を感じなくもありませんでした。でも、かなりの人でごったがえしていた湘南鎌倉病院の内覧式に比べると、そこまでの人出はなかったですね…。研究所となると、やはり少し身近ではないというか、もっと関心を持つ人は少なくなるのかな?とも思いました。
一般の方々はどういう目的で来ていたでしょう、「武田のファンです」と言っている人もいましたが、「P3もあるの!?」と驚いている女性もいました。焼却の外注のことを問題にしている男性もいました。
見学させてくれたのは、P1、P2レベルの生化学実験室と、合成実験室だけで、動物棟は見せてはくれませんでした。まあこれは予想していたことですが…がっかりです。動物棟も、一部だけでも見せて、後で消毒をすればよいのではないかと思うのですが。生化学実験室だって、消毒をしなければいけないのは同じだと思うのですが…。
それに、まだ動物ケージが入っていないような雰囲気の話も聞いたんですけど…。(入ってないところを見ても仕方ないか? うーん、でもそれでもやっぱり見てみたい)
他にも理由はあるのでしょうが、実験動物を飼う場所をわざわざ見せたくないというのが本音なのではないかと、やはり感じてしまいます。見学者は、5つの建物を横につなぐ「ブロードウェイ」という大きい廊下を通ったのですが、図面を見ると、動物棟側には同じものはないようで、かなり細い廊下みたい…? 何となく、やっぱり動物は地味ーに裏手なのかな、と感じます。施設の裏側の約半分くらいが動物棟です。
もらったパンフレットは、かなり立派なものでしたが、動物について触れてあるのは、この図面の中の「動物棟」という言葉だけです。部屋を見せないだけじゃなくて、そもそも動物実験に触れたくないのではないか…という疑問がふつふつとわいてきます。
見学コースには、動物福祉に関しては、1枚パネルがあっただけでした。横に、実験動物管理の責任者という獣医師の方が立っていていろいろと聞くことはできましたけど…それでも、あとから「あーあれも聞けばよかった」と思うことばかりで、時間切れですね…。
ちなみに、ケージは、去年改訂されたThe Guide第8版のサイズはクリアするものを入れるようですが、EUサイズではないってことなのかな~という感じ? 使う動物は、マウス、ラット、イヌ、サルまでは教えてくれました。薬事申請に必要な動物だから、まあ当たり前ですよね…。(←ここ、少し認識が間違っていたかもしれないので、下に補足を書きました。ちなみに、ネコも使う様子→ http://ow.ly/41xX2 )
(研究ではなく)実験動物の管理を担当する獣医師の数は、まだ決まっていないのでしょうか…いまの数では足りなさそうに思うのですが。
武田がほんとうに実験動物の3Rに取り組むというのなら、ソフト面も充実させてほしいし、もっと情報公開してほしいと思います。少なくとも、今のHPの「なぜ動物実験を行うのですか?」に、一文で答えているだけの状況は何とかすべきだと思うし、代替法などももし取り組んでいるなら、もっと宣伝すればよいのではないかと思います。
ちなみに本格的に研究が始まるのは、おそらくゴールデンウィーク明けではないかのことでした。
でもこの見学会、聞けば教えてくれるけど、聞かなければ特に誰かが説明するわけでもなく、ただ歩いて通るだけというスタイル…少し想像していたのとは違いました。
それから、釈然としなかったのは、キッズルームです。社員向けの保育所ですね。かなり広くて、80人くらい預かれるそうです。ここで子供たちが楽しく遊ぶ……そのほんの少し先には、動物たちが閉じ込められている動物棟があるんです。
人間に生まれてくると、おもちゃもあって、楽しく遊んでお父さんやお母さんとお家にも帰れる。でも、サルに生まれてくると、窓のない部屋の小さな檻に閉じ込められて、実験に使われる運命です。おなじ研究所の屋根の下で。
動物たちは、おもちゃはもらえるのでしょうか? そんなことを感じました。
ここは正門と反対側の出口です。大きなトラックでも入れそうな搬入口がありました。動物たちにとっては、ここが運命の入り口なのかな…。
全体に言って、人間向けのアメニティがすばらしいことはわかりましたが、動物が入れられるところはどうなんだろう? とにかく広くて、犬なんかいくらでも走らせられそうなスペースがあちこちにありますが、実験結果に影響するとか何とかで、そういうことはありえないのでしょうね…。
他の写真は下記にアップしました。
写真
P.S.終わってからは湘南エチカの会の集まりに参加、こまごまと事務的な処理があったり、今後の話し合いなどをしました。
そこで聞いたのは、見学会で見せてもらった実験室の流し、2種類の下水につながる口(一般下水道につながる口と、循環水につながる口)が、シンクの中で隣りあってが開いているだけだったということ。それは少し驚きました。(圧倒的に一般下水に流す量の方が多いそうですが)いかにもうっかりミスが起きそうな構造ですね…。
やはり皆さん見るところが違うと思いました。ちゃんと説明する人がついての説明会を、地元の方向けにはするべきではないかと思いました。
補足:この日、武田薬品の人から、「毒性試験は大阪に残す」という説明を受けた人もいるそうです。
武田問題対策連絡会のサイトにある、第3回の住民説明会の報告という資料には、武田の回答の記録として、
「実験動物は薬の候補物質の安全性と有効性を確認する目的で使用します。その多くは小動物(マウスおよびラット等)ですが、大動物での安全性試験が義務付けられているため、イヌ、サル等も用います。」
と書いてあったので、薬事申請につかう毒性試験も湘南でするのかな~と思っていたのですが、確かに、住民向けに配られたパンフレットには、湘南でやる試験は、
薬効薬理試験、薬物動態試験、薬剤安定性試験、RI試験、P3実験
と書いてあるそうです。なので、大阪に毒性試験を残すというのは本当なのかもしれません。
その後、住民説明会は武田側から拒否されていて、住民運動の方たちも、はっきりした詳細はわからないそうですが、おそらく、第3回の住民説明会での説明は、「動物実験は法律で義務だからするんだ」という、よくある企業側の言い訳的な説明だけをしたので、誤解を招いたものではないかと思います。