※実験用のサルを運ぶように言っているのは、一番最後ですが、感染症法改正に関係して、動物の話題も出てくるので、全体を転載しました。

 
第142回国会 衆議院厚生委員会 14号 平成10年05月27日

○柳沢委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島正光君。

○城島委員 おはようございます。民主党の城島でございます。

 きょうは一私の方からは、今の両案につきまして、感染症の予防といったことを中心としながら、特に重要なこの新しい一類あるいは再興・新興感染症の大ざっぱに言うと約半数が動物由来の感染症である、まして、特に一類あたりの、最近新しく報告をされている、あるいは新しく重篤な事態に至る原因の多くのものが動物由来ということもありまして、そういう観点で、特に人畜共通感染症あたりについて、実態面から少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 その前に、今回の法改正というのが、言われておりますように、約百年を超す、百年ぶりの大改正である、時代の変化にある面では即した改正をしたいという趣旨であるわけでありますが、内容として、そういった方向に我が国の感染症対策というのが進んでいかざるを得ないという環境にあるというふうに思いますが、率直に申し上げて、それを実効あるものにしていくという観点に立ちますと、やらなければいかぬ課題が山積をしているのではないか。

 一言で言いますと、国内の人材の質、量も含めてでありますけれども、研究施設あるいは検疫の体制、さまざまな、一言で言ってインフラの整備が緊急の課題であろうし、そういったものがない限り、なかなか実態としてこれが効果を上げていくということにならないというふうに思いますが、総論的に、厚生省として、この法律案の趣旨に沿った体制がきちっとできていくというためには、今申し上げたような観点からして、一体どの辺に問題がある、あるいは課題があるというふうにとらえられているのか、そしてまた、それに対してどういう方針をお持ちなのかを、まずお伺いしたいというふうに思います。

○小林(秀)政府委員 お答えを申し上げます。

 感染症対策を進めるに当たりましては、感染症の診断、研究、治療を行うことのできる人材の養成というのが大変重要であります。ところが現在は、大学の教育もありますけれども、また感染症という病気自体も減っているということもあって、まず、基幹になるお医者さんになかなか感染症という学問に乗り出していただけない。やはり学問の研究としては、がんだとか心臓病だとか難病だとかというところに研究者の意識が行ってしまって、なかなか感染症をやっていただける医者が育たないというのが、一つ大変問題があろうかと思っておりますけれども、我々としては、感染症対策をやっていただけるような人材の養成というのが非常に重要だと思っております。

 次に、感染症の指定医療機関というのを今度法律上決めまして、そこについては、こういう基準、要件を持ったものをいわゆる指定医療機関にしようということで、要件を定めて今後行くわけですけれども、そういうことによりまして施設とか設備の整備というのをやっていく、そういうことが非常に重要である、このように思っておるわけです。

 このため、今後は、国の示す基本指針だとか都道府県が策定する予防計画の中で具体的に定めて、そしてこれを実施へ向けて努力をしていこう、このように考えております。

○城島委員 おっしゃるように、特に人材面では、それこそ質、量ともに早急に対応しなければいかぬわけですけれども、これはちょっとリードタイムがかかるわけですね、時間的には。そういうこともありますし、もちろん基本的な教育もあるでしょうけれども、それにしてもかなり緊急的に、これは医師あるいは獣医も含めてでありますが、この法律案に沿ってきちっと対応ができるような教育というのはなかんずく必須だろうというふうに思いますが、具体的に例えば、予算措置とかあるいは教育の、新しい感染症について、現実に現場でやっている人たちというのは、当然見たことのない人が圧倒的に多いと思いますけれども、その辺の教育というのはいかがでしょうか。

○小林(秀)政府委員 予算については、ちょっと今数字が出てまいりませんけれども、感染症の関係の研究費というのを厚生省では昨年からとっておりまして、その中で、感染症の研究をやっていただくということができるような仕組みを今まず持っております、それが一つ。まず研究費を投入することによって研究者の研究マインドを育てていく、そして対応していく。それから、海外との交流をやることによって、そして研究者も外国へ行く、また外国の研究者も日本に来ていただくということもやっていくというのも、その研究費の一環として、支援事業としてやっておるところであります。

 その次に、もう一つは、今先生も御案内と思いますが、MRSAという院内感染のことが大変問題になっておりますが、実は、今回の新しい法案では、MRSAも第四類の感染症と規定をいたしておりまして、これへの対策も今後いよいよ医療機関できちっとやっていただくということになるわけでありますけれども、この法律をまつまでもなく、一部の大学では、感染症対策の重要性というのは非常に認識をされておりまして、一つはやはり、MRSAという菌が出てきて院内感染を起こすということが医療機関として恥ずかしいということの認識を各大学も持たれまして、相当感染症に対して大学が力を入れ始めていらっしゃるということが現実問題として起きてきているということだろうと思うのであります。

 それから、今回の新法もあって、私は感染症について国が力を入れるということが、そのことがひいては関係者にもだんだん伝わってふえてくると思います。

 ただ、緊急ということになりますと、当面は、国立感染症研究所における研修とかいうところで、まずは公衆衛生で働く保健所のドクターだとか、それからそれ以外でも、衛生研究所だとかそういうところの先生方にまず感染症に対しての教育をきちっとやっていくということが大切で、そこは鋭意努力をしてまいりたい、このように思っております。

○城島委員 現場の特に獣医師の中では、来年の四月から施行になった以降の届け出義務あたりを含めて、新しい病気であるということがあって、若干の不安感があるわけでありまして、その間の教育あたりについての配慮をぜひお願いをしておきたいなというふうに思います。

 その流れの一環でありますけれども、今回のこういった、特に検疫あたりを含めてみますと、新しい、特に一類あたりの病気の診断についての施設というか研究体制というのがまた大変問題ではないかな。このままいくと、いわゆる一類あたりの感染症についての診断というのは、今までどおりといいますか、アメリカのCDCに依頼をしなければいかぬ、あるいはそういう協力をいただかないと日本独自の中では対応が難しいということじゃないかと思うのですね。

 特に、そのためにはP4の研究施設、これは施設はあるようでありますが、稼働していないということのようであります。しかも、確実な情報ではないかもしれませんが、どうもこのP4の施設というのは、今のところアジアには武蔵村山の一つしかないようでありますが、残念ながら稼働していないということのようであります。この稼働していないことを含めてでありますけれども、これを何とか、やはり本来であればきちっと稼働していくようなことをやらなければいかぬわけですけれども、これについてはどういう状況で、どういう方向になりそうなんでしょうか。

○小林(秀)政府委員 まず最初に、先ほどの研究費の関係でございますが、九年度から新たに設けた研究費でございまして、新興・再興感染症の研究費として新たに十五億円、予算化をいたしております。内訳を言いますと、このうち十一億円が純粋の研究費、四億円が推進事業費といって、外国から先生を呼ぶとかこちらから人を派遣するとかというような事業費が四億円で、合わせて十五億円の予算を確保したところでございます。

 次に、P4の施設についてでございますけれども、先生御指摘のとおり、この病原体等安全管理基準のレベル4を満足している施設は日本に一つございますが、稼働をいたしておりません。稼働をしていないのは、地元の市、市議会、住民団体の了解が得られないためにいまだ稼働していない、こういう状況でございます。

 しかし、稼働していないために、今先生がおっしゃったように、新感染症だとか一類感染症のような病原体の分離培養ということは実質上できない状況になっておりますが、ただ、実際の一類感染症なんかの診断につきましては、ウイルス性出血熱であってもこうした施設を、P4を必要としない診断が、抗体検査というのは可能でございます。したがいまして、今後は米国の疾病管理センターの協力も含めて必要な検査体制を構築していくとともに、さらに我が国においても必要な体制の整備に努めてまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、早くこのP4の施設を稼働させるように最善の努力をしていかなければならない、このように思っております。

○城島委員 そのP4の施設、住民等の理解がなかなか得られない、得にくいことであることは間違いないわけでありますが、これは今のところ見通しは立たないのでしょうか。

○小林(秀)政府委員
 残念ながら、今のところ見通しは立っておりません。

○城島委員 せっかく建てられたこともありますが、もちろん住民の皆さんの理解というのは最低限必須であります。今言ってもしようがないわけでありますが、少なくとも建てる段階で住民の皆さんの理解をきちっと得られていれば恐らくそういうことにならなかったんだろうと思います。いずれにしても、極めて重要な施設であるというふうに思いますので、稼働できるような方向で一層の、しかも早急な対応をぜひお願いしたいなというふうに思います。

 それから、感染症予防の中で極めて重要な一つが侵入防止ということでありますが、検疫体制についても、最初申し上げましたように、それこそ人も含めてということになりますが、検疫体制は極めて重要だと思います。今後の新しい感染症への対応等を含めて、検疫体制についての厚生省の御見解、大丈夫なのか、あるいはどういう点に問題があるのか、検疫体制に絞って御見解を承りたいというふうに思います。

○小林(秀)政府委員 検疫法につきましては、新興感染症を初めとした国内には常在しない感染症の海外からの侵入を防止するとともに、国内の感染症対策と連携のとれた検査体制の整備充実を図ることを目的として今回改正案を提出をいたしております。具体的には、検疫感染症の中に一類感染症の追加、それから保健所等の地方機関との連携の強化というような水際作戦をやっておるわけであります。

 ただ、体制としては、今の検疫所並びに支所の数のままで対応をしようといたしております。今まで私ども検疫所の運営をしてまいりましたけれども、実際には、特に検疫関係ですと、国民の皆さんから、自分は下痢をしていますとか発熱をしていますとかという症状がある方が申し出られると検査をするという形をしていまして、こちらから一々体温をはかってとか下痢がどうかということを確認をしてからしか通さないという形はとっておりません。それでございますから、今のところは申し出た人を対応する。今度は病気の数はふやすけれども、実際の患者としてはそんなにいるわけではないわけですね、そういうことから、私は今のままの体制で対応できるもの、このように思っておりますが、ただ事態が変わればそれは変わったでまた必要な措置をとる必要があろうか、このように思います。

○城島委員 必ずしもそういうことで急にふえるわけじゃないということでありますが、新しい体制に新しい法案の趣旨に沿ってやるとすれば、法案を改正する一つの背景として環境がかなり変わってきているということもありますので、現段階での体制で必ずしも十分というふうには思えないところが多々あるわけでありますので、そういう点も含めてぜひ検疫体制についても見直しをしていただきたいなというふうに思っております。

 次に、この法律案の中の極めて大きなポイントになるというふうに思いますのが、最初申し上げましたように、人畜共通感染症ということが一つ大きく踏み込まれている、この中に趣旨として入ってきたということは今までのあり方とはかなり大きな違った点ではないかということで、この点については評価できるというふうに思っております。

 昨年の農水委員会でありましたけれども、家伝法、家畜伝染病予防法の改正のときもこの人畜共通の感染症ということについての視点が抜けているのではないかという質疑を数名の委員がしましたし、私からも強くその辺について、必要あらば厚生省の対応をということを求めたわけでありますが、そういう観点からするとこれは一歩踏み込まれているということだろうというふうに思います。

 それで、ちょっと一点だけ論議の前に確認をさせていただきたいわけでありますが、感染症予防法の十三条の「獣医師の届出」のところで、新しく「サルその他の動物」とありますが、「サルその他の動物」は政令で定めるというふうになっていますが、これはどの辺の範囲を想定されているのか。及び、狂犬病予防法の中でも新たに猫がつけ加えられておりますが、これについてもその他政令で定める動物というふうになっていますが、この両方の案について、どの辺の範囲が想定されているのかをお尋ねしたいと思います。

○小野(昭)政府委員
 今回御提案申し上げております法律案の第十三条についてでございますが、一類感染症から三類感染症のうちでも、人への蔓延防止が非常に重要である、また、感染源の遮断ということが極めて重要な感染症の中で、その感染症を人に感染させるおそれが高い動物について政令で定めることとしております。現状におきましては、人に重篤な症状を起こしますエボラ出血熱、あるいはマールブルグ病、あるいは細菌性の赤痢を媒介いたしますおそれの高い猿の類全種につきまして政令で定めまして、獣医師の届け出義務を課すこととしております。
 また、狂犬病予防法の関係の御質問でございますが、犬は当然でございますが、猫のほかにスカンク、アライグマ、キツネといったものを考えているところでございます。

○城島委員 大体わかりました。

 先ほど申し上げましたように、人畜共通感染症をちょっと調べてみますと、WHOとFAOの合同専門家会議の報告書があるのですが、かなり古い報告書によっても約百三十種類という報告があります。さらに、一昨年のWHOの報告によると、新しく認識された感染症で、局地的あるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症というものをいわゆる新興感染症というふうに定義をしたわけでありますが、さらに、既に知られている感染症で、撲滅に近いような程度にまでなった以降再び流行し始めている感染症、これを再興感染症というふうに定義しているようでありますが、三十種類以上の新興感染症が出現をしているというふうに報告しているわけであります。

 このように、新しい病気も再興している感染症も、大変問題なのは、人畜共通感染症、最初に触れましたように、動物由来の感染症が極めて多い。また、一類なんか特にそうでありますが、未知であるということもあって対応策というのがなかなか難しいというところが一つ特徴かなというふうに思われます。

 こうした新興あるいは再興感染症の原因というのを調べてみますと、やはり最近の国際化あるいは交通手段のさまざまな発達ということに伴って、動物も含めてでありますが、人、動物の移動の拡大や高速化ということが指摘をされているわけであります。マールブルグウイルス、あるいは最近有名になりましたエボラあたりについてはほとんど猿というふうに思われていますが、猿類を介して原産国からアメリカあるいはヨーロッパに侵入した。これはどうも航空輸送ということによって感染したようであります。

 また同時に、こうしたウイルスが、今まではほとんど静かにしていたわけでありますが、本来であると、熱帯雨林とか森林地帯というところに生息する未知の動物が保有していたのではないかというふうに思われるものが、御案内のように、発展途上国における地域の開発等によって猿あたりが奥地に入っていくということによって猿あたりへの感染ということが起き、そのことを通じて人に感染をしていく。そういうことによって人での世界的流行が始まっているのではないかというふうに思われているわけであります。

 そうした点からすると、こういった原因を考えると、世界的に今後も、ほっておきますとそれこそ新感染症ということになると思いますが、そういうことが一層ふえていくと同時に、我が国においても例外ではないということが言えるのではないかというふうに思うわけであります。そういう点で、非常に私自身が問題意識で心配しているのは、実は動物の輸入の検疫なんであります。

 これも、現実的に、ちょっと調べてみますと、どうも日本においては、僕なりの整理をしますと、我が国はペットという概念が非常に広がっているのではないか。一般的に、欧米先進国というふうに限定をしますと、ペットというと、犬、猫、それから一部の鳥、そういう範囲をペットと称する。ところが、日本の場合は、特にバブルの時代で言うと、場合によっては、エキゾチックアニマルということで、投機の対象ぐらいにまでなる要素もあって、ありとあらゆる動物がと言った方がいいと思いますが、いわゆるペットと称して飼われているし、ペットショップは多いですし、ほとんど輸入が原則フリーになっている。これは欧米先進国から見ると極めて異常な状況にあるのではないかというふうに思うのです。

 検疫制度一つ調べても、特に輸入の野生動物ということに限定しますが、その検疫については、例えば、ほとんどの国においてはもちろん、我が国も大については狂犬病の予防接種とか健康証明書が必要であります。今度新たに猫に関して狂犬病の対象になるわけでありますけれども、猿に関しても、野生の猿の輸入についても検疫を行っている国は圧倒的に多いですし、それから、例えばドイツでは研究用とサーカスの使用以外に猿の輸入を禁止している。あるいは、アメリカでは輸入業者の登録制と検疫施設の査察を基本的に課している。それから、ペットとしての猿類の輸入は原則禁止をしている。

 今ちょっとアメリカ、ドイツのことを申し上げましたけれども、一般的に押しなべて言いますと、諸外国においては野生動物の輸入というのは原則禁止をしているということだと思いますが、日本の場合は、先ほど申し上げましたようなそういうことからするとほとんどフリーである。もちろん、動物に関しては今まで狂犬病予防法しかなかったからということもありますが、また同時に、ペットの概念としていつの間にかそういうふうに非常に拡大をした、場合によっては投機の対象にもなっていったということもあるのではないかということです。

 それで、まず一点、そういう状況を含めて御質問したいわけでありますが、膨大な数があると思われますが、今、いわゆるペット業者と言われている業者の数が一体どれぐらいあるのか。さらには、ペットも含めてでありますが、輸入されている動物の状況、どういう観点で分類されているかはちょっとわかりませんが、どういう状況にあるのか、お尋ねをしたいと思います。

○小野(昭)政府委員 ペットに関する御質問でございますが、御質問のペット業者の数というのは私どもとしては把握をいたしておりません。

 それから、輸入の関係でございますが、猿類につきましては、ここ数年の統計によりますと、年間約三千頭から四千頭が我が国に輸入をされております。なお、これらの多くは学術研究用であるというふうに聞いておりまして、御指摘のように、いわゆるペット用が主流であるというふうには聞いておりません。

 その他のペット類の輸入実態についてでございますが、動物検疫所の統計によりますと、犬につきましては年間約一万三千から二万頭、オウム、インコ等の鳥類、鳥でございますが、これは年間約六十万羽であると承知をいたしております。また、食肉目の動物についてでございますが、輸入動物業者団体の調べによりますと、フェレットが年間約一万二千頭、アライグマが年間約五百頭、キツネ、スカンクが年間おのおの約二百頭程度が輸入されているというふうに聞いております。

○城島委員 猿についてはほとんど学術用ということでありますが、データによると、約二割から二五%ぐらいはペット用として輸入されているんじゃないかというように私の方では把握をしているわけでありますが、いずれにしても、今概略御説明あったように、報告されただけでもかなりの数の実はペット用の、ある面でいうといわゆる野生動物を含めてでありますが、輸入をされている。しかも、これがほとんどフリーで入ってきている。現実的には、最初申し上げましたように、動物がまだ、感染症という観点からすると検疫もされないで入ってくるものが多いわけでありますから、非常に危険性もある。必ずしも全部危険だと申し上げているわけではありませんが、危険性もある。

 海外のこの分野の専門家と話をしてみますと、最初に申し上げたように、日本というのは極めて特殊な国だという認識なんですね。これだけフリーに野生動物を入れている。ペット業者の幾つかの広告を見ますと、これは誇大広告であるとは思いますが、世界各地からあらゆる野生動物を仕入れることができますというようなったい文句を堂々と広告に出している業者というのは結構いるのですね、調べてみると。

 そういう点からしても、海外のこの分野の専門家が言いますと、日本というのは島国ですから、そういう点でいうと、人畜共通感染症のまさしく実験場になっているよということなんですね。これは極めて危険な状況にある、そういう観点からするとですよ、限定して申し上げますけれども。そういう感染症という観点からすると、極めて異常であり、異質であり、実験的な施設になっているように思える。

 どういうことがこれから起こってくるか。何にもなければ一番いいわけでありますが、そういう状況にあるということだと言われているわけでありまして、ある面でいうと、検疫を含めてしっかりしていく必要があるのではないかというふうに思っているところであります。

 ペットの業者の数も、実は各県単位のデータというのがあるわけでありますが、総数、掌握されていないということでありますが、一言で言って、極めて膨大な数があるんですね。県単位でいっても、少ないところでも四、五百のペットショップがあります。ということで、全国的にいうと膨大なペットショップがあって、そこでも適切な管理がされていると思いますが、厚生省としては、今までの中で一体どういう、この点についての厚生省通達なり、あるいは監視なりということをされてきているのか、あるいは今後について、この辺についての何か問題意識をお持ちなのか、お尋ねをしたいというふうに思います。

○小野(昭)政府委員 
先生御指摘のように、動物由来の感染症の予防対策ということを考えていく際には、動物を取り扱います輸入業者等の関係営業者に対します指導、あるいは、動物を飼います国民の皆さんに対しましての動物由来感染症に関する知識の普及が重要であるというふうに考えております。

 どういう指導をしたかという御質問でございますが、これまでに、昭和六十二年に「小鳥からの人へのオウム病感染予防方策について」、また昭和六十三年に「ペット動物由来人畜共通伝染病予防方策について」という通知を全国に通知いたしまして、ペット業者等に、自主規制としての衛生管理体制の確立等について指導しているところでございます。

 なお、この昭和六十三年の通知の、人畜共通伝染病という言葉についてでございますが、これは適切な見直しが必要であるというふうに考えております。というのは、人畜共通伝染病、例えばO157を例にとりますと、これは、牛には症状をあらわしませんが、人に症状をあらわしますので、共通伝染病と言えるかどうかということはちょっと議論のあるところでございます。

 これらを含めまして、今回の法案の成立を見ました段階で、どういった適切な指導が必要かということにつきましては十分検討してまいりたいと考えております。

○城島委員 ペットの効用というか、最近はいろいろな、犬等を使った教育等を含めて、非常に効果があると言われていますから、ペットそのものを私は否定しているわけじゃなくて、そういうことをきちっと、いい方向にいくためにもきちっとした規制というのが、あるいは監視というのがこの部分は逆に必要な分野ではないか。余りにも野放しになっている、危険性が非常に高いというところを指摘をさせていただきたいし、ぜひ検討いただきたいというふうに思います。

 それで、それに関してでありますが、こういう状況でありますから、ペット業者ですとか、あるいはこれからそういう分野に携わる人も含めて、こういった分野においてもそれこそサーベイランスが必要だろうというふうに思うんですね。極めて重要じゃないかというふうに思いますが、この辺についての、健康診断も含めてでありますが、サーベイランスの必要性についてはどういう御見解をお持ちなのかを伺いたいと思います。

○小林(秀)政府委員 今回の法律の改正案を出すに当たって公衆衛生審議会にお諮りをしておるわけでありますが、その公衆衛生審議会の意見書におきましては、今後の検討課題として、動物実験施設の従事者等の動物由来感染症に感染する危険性の高い動物取扱従事者に対して、定期的な健康診断、抗体保有状況の調査等が指摘をされたところでございます。
 今後、法の施行後、動物由来感染症対策を進めていく中で、御指摘のハイリスクグループに対する調査、健康診断を初めとする対策について検討してまいりたい、このように思っております。

○城島委員 先ほどの、輸入動物の実態というのもなかなか今のところ掌握されない実態であるということでありますが、その辺も含めてでありますが、ぜひきちっとした対応をとっていただきたい。

 特に、今度の法律改正でかなりそこは進むとは思いますが、例えば輸入についても、犬等についても、貨物でない限り、手荷物に入りますとこれはノーチェックになるわけでありますし、数も把握されない。しかもこの数は意外と多いのですね、実態として入ってきているのは。そういうこともありますので、その辺のことも含めた対応、それから、今申し上げましたペットに対する検疫のあり方ということも至急検討いただきたいと思います。

 そういう状況で、ぜひちょっと大臣の御見解を、ある面でいうと、こういう観点からすると野放しになっているいわゆる野生動物、日本流でいえばペットの輸入実態のあたりについて、極めてこの感染症という観点からすれば課題が多い、あるいは問題が多いというふうに思いますが、大臣の御見解をちょっと承りたいというふうに思います。

○小泉国務大臣 前に、感染症だけでなくて、ペットショップに関しては猛獣なんかの問題でも問題があったことがありますね。ライオンとかトラとか、これは管理の仕方によっては人に対して多大な迷惑をかけるという、管理体制、監視体制。

 感染症を考えますと、確かに現在、トカゲとか蛇とかワニとかをペットにしている方もおられるわけですから、今御指摘のように、我々が思っている以上にたくさんあるのかもしれません。こういう問題についても、現状を把握できるような体制、そして適切な指導ができるような体制を、関係者と提携しながら厚生省もとっていく必要があると思います。十分検討させていただきたいと思います。

○城島委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、猿について、問題の指摘と現状をちょっと把握しておきたいと思うのですが、実は研究用の猿の輸入について、日本の航空会社は、研究用の猿については取り扱いをいまだに停止をしている。いわゆる一般的な野生の猿についての取り扱いをしている。実はこれは研究用の猿については、今、逆にかなりきちっとした管理がされていて、ある面でいうと安全度が高いわけですね、本来は。そうじゃない一方の野生の方がどちらかというと、当然でありますが、安全度からいくと危険性が高い。逆転しているわけですね、私の方から見ると。

 けれども、最初の不幸な事故があって以来、依然としてこの実験用、研究用の猿の輸入について日本の航空会社の取り扱いが行われていない、細々と海外の航空会社を使って今輸入をされているわけであります。それは、研究段階で今後も同じようにこの猿を使っていくとすると、極めて研究に対しての支障を来すような実情に今陥りつつあるということでありますが、これについて厚生省、どういう把握をされてどういうふうな対応をとられようとしているのかをお尋ねしたいと思います。

○谷(修)政府委員 今お話ございましたように、特に研究開発、具体的に私どもの関係では製薬企業等が動物モデルとして薬の安全性あるいは有効性の試験のためにこの猿を用いるということで、現在のところ必要最低限のものは確保されているというふうに聞いておりますが、ただ、このまま輸入ができないというような状況が続きますと、研究開発への影響というものが出てくるんじゃないかということを心配をしております。

 今回の法案において、先ほど来御議論がございますように、この猿についても輸入検疫を行うということでございますので、新法が施行後日本に入る猿については、安全が確保されたもののみが輸入されるということから、現在この取り扱いをやめております日本の航空会社においてもその取り扱いの推進を図っていただくよう、私どもとしても対応してまいりたいというふうに考えております。

○城島委員 ぜひその辺の、かなり逼迫してきたような状況でありますので、対応をよろしくお願いしたいと思っております。

 以上で終わります。

(以下略)

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