医薬部外品も、化粧品と同様、医薬品医療機器法(旧薬事法)にもとづく規制を受けます。何となく薬に近いようなイメージをもたれる医薬部外品の薬用化粧品ですが、海外では多くは化粧品に分類されます。言ってしまえば、「薬ほどの効果はなく、実態は化粧品」であるものが多いのです。

■欧米には医薬部外品というカテゴリはない

EUでは化粧品の動物実験が禁止されていますが、EUには医薬部外品というカテゴリはなく、日本の医薬部外品にあたるものは、化粧品になります。アメリカも医薬部外品のカテゴリはなく、化粧品か、一部は医薬品になります。

■医薬部外品のほとんどは承認申請に動物実験は必要ない

「しみ・そばかすを防ぐ」「育毛」「薬用」など、効能・効果をうたえるものが医薬部外品とされており、販売するためには承認申請が必要です。ちなみに、化粧品には承認申請の制度はなく、メーカーの自己責任によって安全性を担保すればよいことになっています。そのかわり、化粧品には全成分表示が義務付けられました。

医薬部外品にあたる薬用化粧品は、申請区分によって3つに分けられていましたが、平成26年(2014年)11月、改正薬事法である医薬品医療機器法が施行され、新たに以下の区分となりました。すべての医薬部外品に対して動物実験が行われているわけではなく、この中で必ず動物実験が必要になるのは区分1、部分的もしくは場合により必要になるのは区分(2)-2~5と区分(3)です。承認数が圧倒的に多いのは、動物実験の要らない区分(4)と区分(5)-1の製品です。

sheet 医薬部外品新分類
旧区分との対比および必要な試験法の種類に関しては、こちらの表をご覧ください。

区分(1)新有効成分含有医薬部外品
区分(2)-1 新効能医薬部外品
区分(2)-2 新剤形医薬部外品
区分(2)-3 新含量医薬部外品
区分(2)-4 新配合医薬部外品
区分(2)-5 新用法医薬部外品
区分(3)新添加物含有医薬部外品
区分(4)類似医薬部外品
区分(5)-1 同一医薬部外品
区分(5)-2 新指定医薬部外品 (薬用化粧品以外の品目です)
区分(5)-3 新範囲医薬部外品 (薬用化粧品以外の品目です)

平成26年度の改正で新たに発出された通知・事務連絡は以下の通りです。

※どれくらい動物実験されているの?

まだ改正前の区分での統計しかありませんが、たとえば平成21年の統計は以下の通りでした。

医薬部外品の申請件数H21

旧申請区分1……既承認のものと異なる成分・用法
旧申請区分2……既承認のものと同一性が認められるもの
旧申請区分3……新規成分配合、有効成分増量など

動物実験が要求される可能性があったのは区分1と区分3でした。申請件数の多くを占めるのは区分2なので、医薬部外品の新製品のほとんどは、実は動物実験は必要ないのです。

また、上記統計では、動物実験の資料が添付された医薬部外品の正確な申請数はわかりませんが、平成24年5月15日開催の化粧品の動物実験を考える院内集会で厚生労働省が発表した数字によると、平成23年度は38件とのことでした。

申請ベースでは平成24年度に区分1は3件、区分3は69件申請がありましたが、区分3はこの全てに動物実験がされているわけではありません。平成26年5月13日開催のヒューメイン・ソサエティ・インターナショナルの議員向け勉強会で出てきた資料によると、この年の承認数は、区分1は0件、区分3は39件で、この39件のうち動物実験がされなかったものが24品目、動物実験がされたものが15品目でした。さらにその15件のうち、化粧品は12品目で、化粧水3品目、クリーム6品目、リンス1品目、育毛剤2品目でした。全体の承認数が1968件だったので、動物実験が行われた品目は0.6%だけ。今でもすぐ、動物実験は止められるのです。

余談ですが、こういった細かい統計を出すのは大変なシステムになっているそうで、これらの数字に毎年の統計があったわけではありません。数を知ることすら大変だったのです。

■EUは日本に対し、医薬部外品について改善を求めている

EUは日本に対し、以前は医薬部外品の撤廃を求めていました。現在は、日本に改善を要求しています。

医薬部外品に使っていい成分というのは決まっていますが、その配合ノウハウなどの前例はメーカー秘伝のようになっている部分もあるそうで、わかりにくいところがあります。動物実験を行うことのできないEUにとっては、それでは参入障壁になってしまうということではないかと思います。

駐日欧州委員会代表部 「現在の日・EU経済・通商・投資関係」より
http://www.euinjapan.jp/relation/trade/current/healthcare/

化粧品
(中略)
b) EUは、「医薬部外品」に分類される化粧品の明確化と(動物試験に対する)代替試験の利用の受け入れが必要と考える。医薬部外品には、脱臭剤、染毛剤、育毛剤の一部、脱毛剤、薬品入り歯磨きの一部などが含まれている。

■医薬部外品の動物実験(の一部)はここでチェックできる!

医薬品医療機器総合機構(PMDA)のサイトで審査報告書が公開されています。
(ただし、厚労省の部会で審議されたものに限る。つまり旧区分1のもののみ)

PMDA:医薬部外品の承認審査情報
http://www.info.pmda.go.jp/approvalSrch/QuasiDrugSrchInit?

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