※化審法改正における山根隆治議員の質疑より。
※動物実験代替法の開発・活用を明記した画期的な附帯決議につながりました。
 参考:

 
第171回国会 参議院 経済産業委員会 11号 平成21年04月30日

(前略)

○山根隆治君 次の質問に移ります。

 実は、動物愛護法改正が数年前されましたときに私もこの法案作りにかかわった一人でございますけれども、動物実験の問題についてお尋ねをいたしたいと思うんです。

 当時、この法案作りの過程の中で、学術会議の方からもお話を聞いたり市民団体の方からもお話を聞く、そういうふうな機会に勉強を多くさせていただいたわけでありますけれども、日本が今世界的に、思想的に言えば共生の思想というか、それが、先導的な役割を日本が果たしてもおかしくないような、日本古来持っている空気といいましょうかアイデンティティーがそういったところにあると思うんですけれども、そういう意味からしても私は動物実験を回避するということについては日本が率先して取り組まなくてはいけない問題だと思いますけれども、現実にはやはり、欧米に比べ、特にヨーロッパに比べてかなり遅れているというような状況があるわけでございます。

 我が国として、動物実験を回避するためのいろいろな措置というものについて、代替措置等も含めて主導的な役割を果たすべきだと思いますけれども、この辺の決意について大臣からお尋ねをいたしたいと思います。

○政府参考人(後藤芳一君) 動物の愛護も大事である、一方で化学物質の安全性に関する審査というものも厳密にやらなければならないと、こういう両面がございます。特に、環境中でどのような挙動を化学物質がしていくか、あるいは生体あるいは人の中に入りましたときに化学物質がどのような作用を及ぼして影響を与えていくのかと、こういうところを慎重に測っていかなければならないということでございます。これにつきましては不断な研究を進めてございます。

 ただ、生物体というのは特に、さらに人ということになりますと深いものがございまして、なかなか解明されていないものもございます。そのような状況の下で、国際的に試験方法というのは標準化、基準化しまして共有しておりますんですけれども、一方で研究開発も進めてございます。

 研究開発の、例えば大きく分けますと、化学物質の構造からどのような影響を及ぼすのかということを測っていくような、そういう方法であります。あるいは、細胞に影響を及ぼすときに、生体の細胞だけではなくて、生体の細胞を一部培養しました細胞で同じような働きをするような細胞というのを作りまして、それに化学物質を加えることによりまして実際の動物などを使わずに影響を評価するというような方法も進めてございます。

 これは大変大事な分野だと思いまして、動物の愛護もありますし、いろいろな経済的な負担もございますので、この辺の研究開発につきましては実際に予算もかなり今年度用意してございますけれども、例えば、先ほどの分子の構造から測るものにつきましては二十一年度では一億七千万、あるいは、細胞を培養するものにつきましては二億五千万、それから、人ではなくて、いわゆるiPS細胞と申しておりますけれども、受精卵ではないところから細胞を合成しまして同じように人体への影響が測れるような、そういう手法でございますけれども、これについては十億円という、今iPSの研究開発については力を入れておりますけれども、そのうちで進めてまいるということを今も続けておりますし、これからも全力でしてまいりたいと思っております。

○山根隆治君 やはり、その根本にある哲学というか思想というか、そういうものが問われている時代だと思うんですね。

 特に動物愛護についていえば三R、御承知のように、代替的な措置を求める、そして動物を犠牲にするときには痛みをできるだけなくす、そして動物実験は避ける、こういうようなことがやはり基本的理念でなくてはいけないんですけれども、この辺のところがやはりいろんな行政の執行にかかわってきますので、是非そうした物の考え方というのもしっかり徹底をしていただきたいというふうに思います。

 今お話ありました、iPSの話がございました。ES細胞、これらもこれから再生医療ということで今注目を浴びて、研究も相当日本国としても今予算を費やしてやっていこうと、こういうふうなことを承知をいたしていますけれども、現実的にはまあまあこれからの分野というふうなことだろうと思いますけれども、将来的には動物実験に代替されるような措置ということについてやっぱり有望なものになっていくのかどうか、その辺、見通し、簡潔にお答えください。

○政府参考人(後藤芳一君) iPS細胞につきましては、御案内の、日本でこの培養の方法が解明されまして、これが国際的に研究をリードできるかどうかというようないろんな議論もなされております。

 ただ、進捗を拝見しておりますと、実際にそれが安定した形で使えるのか、途中でまた細胞が変わっていってしまう、がん化をすると、こういうような指摘もあったりしまして、懸命に研究が進んでいるところかと思います。こうしたものがちゃんと供給されるようになりますと、化学物質の評価のところにちゃんと使われる。これは、国際的に合意をしまして、そこに導入をしてまいろうということでございます。

 この動物愛護につきましては、我が国もそうですし、米欧も大変高い意識を持っておりますので、鋭意これを進めてまいると、御指摘のとおり進めてまいるというつもりでおります。

○山根隆治君 動物愛護については非常に認識が高いというふうに、我が国もと言いましたけれども、我が国は高くないんですよ。だから、そこが問題だということを申し上げているんですね。

 いろんな分野の方々からお話を聞いた中で、やはり平均的にヨーロッパに比べて動物愛護の精神というか、そういうものが非常にまだまだ行政には弱いということがもう既に明らかになっていますので、その辺、我が国もという我が国はちょっと遅れているという認識だけは是非持っていただきたいと思っております。

 それで、これは申し訳ないんですけれども事前通告していませんでしたけれども、二〇〇五年に日本代替法検証センターというのがつくられているということでございまして、これは期限は五年ということですからもうあと一年ほどしかございませんけれども、専従者は一人というふうな状況だというふうに聞いているんですけれども。この日本代替法検証センターについては、これをやはり組織として今後どう運用されるのか、あるいは改善、拡充されるお考えがあるのか、今承知されていたら、ちょっと事前には申し上げていなかったので資料がなければ結構です。資料がなければ決意表明で結構ですけれども、よろしくひとつ御答弁をお願いいたします。分かんなきゃ分かんないで。

 ちょっと続けます、更に。これは急なことでございますので事実確認するのに時間が掛かっていると思いますけれども、是非、こうした検証センターがありますので、お願いしたいと思います。
 じゃ、お願いいたします、答弁をお願いします。

○政府参考人(岸田修一君) 今御指摘の代替試験法の検証センターということ自体、私は承知していなかったんですが、ただ、その組織の基となっておりますのは、国立医薬品食品衛生研究所というところがございまして、そこが従来から動物試験の代替法、その検討をしておりまして、その検討した成果をOECDの評価に提供する、あるいはOECDにおけるその代替法の検証作業あるいは評価、そういったものへの協力と、こういうことを行っておりまして、こういう代替法の促進に向けまして一層の努力をしていきたいと思っております。

○山根隆治君 そこで、大臣にお尋ねをさせていただきたいと思うんでありますけれども、その代替実験法の研究に関するやっぱり予算ですね。これは今、政府答弁のニュアンスと私が申し上げているニュアンスは少し違いますけれども、やはり動物への愛情といいましょうかね、先ほど申し上げました三R、犠牲をできるだけ少なくする、犠牲の場合には痛みを取る、そして代替の方法というものを取っていく、こういうのは基本的な考え方としてもう既に定着したものがあるわけでございますけれども、日本としてはやはりまずは予算でしっかりと国の姿勢を示すということが大事だと思いますので、大幅な予算のアップをこれから、有力な閣僚でございますので決意をお聞かせをいただければ有り難いと思います。

○国務大臣(二階俊博君) 先ほど来、山根先生から動物愛護について基本的なお考えを伺いまして、大変参考になりました。

 今後において、動物愛護の精神に基づいて実験その他においてはもっと慎重に、しかも抑制的に対応していくということが大事でありますが、そのためにも予算が必要だというのは仰せのとおりだと思っております。必要な予算については、関係省庁とも十分連携を取って責任者と話を詰めてまいりたいと思っております。

○山根隆治君 EUでは三月に、動物実験をした原料の使用、流通を禁じる法令が施行されました。我が国では逆に一部の化粧品の安全性評価に動物実験が課されています、これは医薬部外品のところでございますけれども。これらについてやはり世界の動きと逆行するような動きという見方もされるわけでございますけれども、今後、これらについて改善をしていくお考えがあるのかどうかをお尋ねいたします。

○政府参考人(岸田修一君) 先ほどから議員の方から、動物愛護法の改正におきまして苦痛の軽減、代替法の利用、動物利用数の削減、こういった観点からの取組、こういったものを現在やっているわけでありますけれども、それからまた先ほど、国立医薬品食品衛生研究所を中心として、欧米とも協力しながら代替法の開発、またその代替法が使えるものかどうかという評価、そういったものへの取組も行っているわけであります。

 欧州において化粧品指令が改正になりまして、この三月に一部の毒性試験を除いてEU圏内で動物試験を実施した化粧品等の販売を禁止する旨の公布をされたところでございます。ただ、化粧品の安全性確保についてはやはり重要な課題というふうに認識しておりまして、現段階においてやはり動物試験により安全性の確認を行わざるを得ないものも多いのではなかろうかと、こういうふうに思っておりますが、今後とも代替法の開発、そういったものを取り組むとともに、欧米のみならず米国等の情報も集めて適切に対応してまいりたいと、こういうふうに思っております。

○山根隆治君 適切に対応の前にはやらざるを得ないというふうなことも言っているので矛盾、混乱がございますけれども、是非積極的にそうした動物実験を避けるということで研究、検討を前向きに、前向きですよ、前向きにやっていただきたいと思います。

 時間の関係でまとめて二つほど質問を最後にさせていただきたいと思いますけれども、動物実験の数を削減する方法の一つとして、各機関での重複実験、これを避ける必要があろうかと思いますけれども、それらの問題について厚生労働省の方でどのような検討をなされているか、お尋ねをさせていただきます。

 そして、いま一つは環境省の方にお尋ねをさせていただきたいと思うんですけれども、環境汚染物質の指標となるものは野生動物の死体ということが言えるかと思いますけれども、今後、化学物質の環境影響評価指標として野生動物の死体の回収と調査の制度、これを制度化することが必要ではないかと思われますけれども、これらについてどのような検討が今後なされていくのか、前向きに取り組んでいただきたいという思いも込めて、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 以上です。

○政府参考人(岸田修一君) 化審法の運用に当たりまして、動物試験の重複をできるだけ少なくするという措置を講じているわけではありますが、具体的には、事業者が同一の新規化学物質について届出を行う場合に、試験結果を事業者間で共有することによって試験を重複して実施せずに届出をすることができるよう、これは事業者に対して周知を行っているところでございます。

 また、政府が実施している既存化学物質の安全性点検におきましても、関係省庁間あるいは関係部局間において試験対象物質あるいは試験の種類、そういったものが重複しないようあらかじめ調整を行った上で実施しているところでございます。

○政府参考人(原徳壽君) お答え申し上げます。

 環境省におきましては、一般環境中における化学物質の残留把握のために、化学物質環境実態調査というものを行っております。この中で、水質や底質のみならず、生物中に含まれる化学物質の測定をしているところでございます。

 この生物中の化学物質の調査の一環では、野生生物の体内に含まれる様々な化学物質を測定しておりますが、動物愛護の観点から、使用する動物の数をできるだけ抑制するとともに、例えばタヌキでありますとかあるいはウミネコなどにつきましては、その死骸を積極的に現在も活用しております。

 今後とも、この実態調査の実施に際しまして、野生生物の死骸なども活用して化学物質の残留把握に努めていきたいと考えております。

(以下略)

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