※自動車衝突事故の動物実験が非難されたときの国会質疑。

自動車研のサルの衝突実験記事

 
第108回国会 参議院内閣委員会 3号 昭和62年05月21日

○久保田真苗君 それでは、次にがらっと問題が変わるんですけれども、動物保護の問題について。これは総理府本府の御所管なんでございます。

 私がぜひこれを取り上げてみたいと思いますのは、この動物保護の問題は総理府が非常にいい法律を持っておいでになるわけです。動物の保護及び管理に関する法律というのでして、昭和四十八年に、もうこれは長年の民間運動とそれから国会議員の努力によりましてついにできて、みんなが喜んだという法律なんでございますね。そして、動物保護審議会という内閣総理大臣の諮問機関である非常に格式の高い審議会もできたということなんです。しかし、こういうことは非常にフォローアップが大事だと私ども思うんです。それで、特にこのうちに十条、十一条という条文がございまして、この条文にかかわることを、私はきょうはそこだけを取り上げてみたいと思います。

 十条というのは屠畜の問題なんですね。これは動物を殺さなければならない場合、できるだけその動物に苦痛を与えない方法でしなければならないという法律になっております。そして、総理大臣は関係行政機関の長と協議して、その方法に関して必要な事項を定めることができるという、この法律は罰則まで伴う、総理府本府としてはかなり珍しいくらい強い法律をお持ちになっていらっしゃるわけなんです。

 それで、私がお願いしたいと思いますのは、ひとつこれに関連して、屠畜の方法が今どういう現状にあるか、そしてその所見についてお伺いしたいと思うんです。

○政府委員(橋本哲曙君) 総理府といたしましては、ただいま先生御指摘のとおり、動物の保護及び管理に関する法律に基づきまして、できるだけ動物については苦痛を与えないで処分しなければならないということで現在指導をしているところでございますが、ただいまの屠畜の方法でございますが、総理府としては十分に実態を把握しておりませんが、この法律の十一条に基づき産業動物の専門委員会を開きまして、そこで産業動物の飼養及び保管に関する基準を現在検討中でございますが、その先生方からのお話によりますと、一般的には、牛と馬につきましてはハンマーまたは打撃銃によりましてみけんに穴をあけまして失神させるということで、なるたけ苦痛を与えないということで、その後頸動脈を切りまして放血するという方法をとっているというふうに聞いております。また、豚の場合につきましては電殺という方法をとっておりまして、大体二百ボルトから四百ボルトの電流を通しまして失神状態にしまして、牛、馬と同様に頸動脈を切りまして放血をしているというような方法をとっているというふうに聞いております。

○久保田真苗君 現在、毎年牛につきましては百五十万頭、豚につきましては二千万頭以上の屠殺が行われます。ですから、これは決して小さい問題ではないと思うんです。そして、今おっしゃった屠殺の方法なんですが、私、動物福祉協会というのを知っておりまして、この福祉協会が長年の間、外国の動物愛護団体等ともどもに屠殺の方法を、この牛につきましてですが、打額銃ですね、今おっしゃった銃によってみけんに穴をあげるという方法をせめてとってほしいという訴えをしてきまして、この結果を今どういうことになっているかと思いました。ちょうど決算部会で芝浦の食肉センターを拝見させていただくことができました。精しくここで申し上げられません。しかし、打額銃というのはそれならば非常に苦痛がないかということについては多少の疑問ありますけれども、今行われている方法としては三十秒ぐらいの間で牛がもうそこへ沈み込んでしまうという、時間が短いということにおいてはそうなんですね。

 それで、この打額銃を使っているところをきのう厚生省がもう急いで調べてくだすったんです。それによりますと、牛について、屠畜場三百八十三カ所のうち、この行額銃を使うのが二百四十六カ所なんです。しかし、それ以外につきましては手動ハンマーでやっている、それが百二十二カ所。それから、それをミックスしてやっているというところがありまして、その他というのがあるんです。その他というのは直接頸動脈を切開するという方法で、非常に残酷だと思います。まだこういうことがかなりの屠畜場で行われているということは非常に残念に思うわけです。なぜならば、今、牛は農水省におきましては畜産振典事業団で扱われているんですけれども、こういうところの経理が非常に円高差益のためによろしいのですね。しかし、そういう中においてまだ打額銃というこんなちっぽけな銃がそろえられないということは非常に残念だと思うんです。

 なぜならば、屠畜について、衛生面は厚生省です、肉質については農水省です、価格については畜産振興事業団です、そして実験動物については文部省でございますと、ばらばらになっております。そこで、確かにこれは内閣総理大臣のもとで、官房長官の監督のもとで行われるということが非常に適切だと思います。時間がありませんので私はもうこの問題だけにお願いをいたしますけれども、つまりは屠畜方法の改善について今それを現に基準をつくっておいでになるのでしたら、ひとつぜひ実態を見ていただきまして、そしてこういう最良の方法が行われるように――大変私はその動物に対して申しわけないことだと思うんですね。ぜひそこのところをよろしくお願いしたいと思います。

 それから、実験用動物については、既に世上相当の非難が起こりました。この前、猿をはりつけのようにして何回も自動車の衝突事故のあれに使ったということで、福祉団体等から抗議が参りました。ところが、それを見ますと、通産省、文部省に行っていまして、決して動物の保護を所管する総理府には来てないんですね。そういうことでございますので、私、これも確かにこり法律御所管保の官房長官の御責任になりますので、この趣旨が徹底されるように――なぜなら総理府は既に告示をお出しになっています、実験動物について。しかし、それがちっとも徹底されていない。広報の面で非常に多額の広報費をお持ちでございますので、こういうのもぜひ広報で国民がよくわかるように周知していただきたい。

 屠畜の方法の改善それから実験動物についての周知徹底、この二点についてぜひよろしくお願いしたいと思います。御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(後藤田正晴君) 今、久保田さんのおっしゃった動物の屠殺の方法について、できるだけ残酷な方法を避けなきゃならぬ。これは法律があるわけですし、それから実験用の動物については、確かあれ基準があるんですね。それらの出しっ放し、行政のやりっ放しになってはおりはせぬのかなという疑問を、今久保田さんの御質問を拝聴しながら思いました、この点は。これは十分そういう非難を受けないように、制度がきちんとできている以上は、これは私どもの方として各省庁に趣旨を徹底してそして努力をしていきたい、こう思いますのでお許しいただきたい、こう思います。

(以下略)

サルの衝突実験図解

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