※鳥獣保護法改正のときの参考人質疑です。二人の参考人が、実験利用のためのニホンザルの違法捕獲について触れているので、関連の部分のみ抜粋しました。

 
第154回国会 参議院環境委員会 8号 平成14年04月16日

(中略)

○委員長(堀利和君) 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案を議題とし、参考人から意見を聴取いたします。

(中略)

○参考人(坂元雅行君) 野生生物保全論研究会の坂元です。

 私は、野生生物の実効的な保全という観点から、本法案には基本的に反対の立場で意見を申し述べさせていただきたいと思います。(OHP映写)述べたいことは多々ありますが、時間の関係上、大きくは三点意見を申し述べさせていただきます。

 まず一点目は、狩猟の定義に関してです。本法案の第二条にこの点が規定されております。この狩猟の定義にはこの法律の在り方をどうするかという大変基本的な問題が含まれております。私はここで、被害防止のための駆除を担うべき者はだれかという問題設定をいたしました。

 これまで、狩猟というものはもう明治のころから職猟、つまり肉や皮を取ってそれを販売するなど、それを生業とする職業としての猟と、それから遊猟、スポーツハンティングに区分されてきました。しかし、明治の中ごろにはもうこの職猟というものが成り立たなくなってこういう区分は廃止をされます。いわゆるまたぎなども消滅して職猟というものはなくなっていったわけです。その一方、スポーツハンティングの方は、ブームなどもありまして狩猟者人口は増えてまいりました。しかし、それも一九七〇年代の後半をピークとして狩猟者は減少し、趣味としてのスポーツハンティングも凋落していったわけです。

 ただ、その中で農林業被害などを防止するための駆除というものをだれがどう行ってきたかですが、基本的には本業ではなく、こうした私的なスポーツハンターたちが言わば片手間に行ってきたというのが実態であります。それが、今日にもその体制が引き継がれております。

 では、今日これから被害防止のための駆除の担い手はだれであるべきなのでしょうか。

 被害問題というものは、生物多様性の保全と産業発展の両立という公共政策の問題です。そうであるとすれば、基本的には、そうしたことは民間の狩猟者ではなく公的機関が担うべきだと考えます。

 その実質的な理由を二点ほど申し上げたいと思います。

 一つ目は、被害防止のための駆除は本来、遊猟、スポーツハンティングの片手間に行えるようなことではないということです。被害防止のための駆除の目標としては、まず野生鳥獣の地域個体群の保全が掲げられなければなりません。また、被害に対する対応というものが、単なる応報ではなく効果的な被害防止が目標とされなければなりません。これらは、いずれも高度に計画性や科学性が担保されたものでなければなりません。

 理由の二番目です。

 これまで被害防止のための駆除というものが遊猟者にゆだねられてきたために、私的に商業利益を得るために、有害鳥獣駆除の名の下、非狩猟鳥獣、狩猟の対象にはなっていない鳥獣を遊猟したり、あるいは狩猟期間外に鳥獣を遊猟するということがまかり通ってきました。その具体例の一つがニホンザルです。これは非狩猟獣を実質狩猟してきた例として挙げられます。実験動物として転売することを意図しつつ、有害鳥獣駆除がなされてきたわけです。もう一つの例はクマです。これは、猟期外の遊猟の例として挙げられると思いますが、クマの胆のう、クマノイですとかユウタンとか呼ばれますが、それを取ること、そして売ることを意図しつつ有害獣駆除がされてきたというこれまでの経過があります。

 こうした問題意識から今回の改正案の定義を眺めてみますと、そこに大きな問題があることに気付かれます。それは、この狩猟鳥獣と狩猟の定義を見ると、狩猟というものは肉や毛皮を利用する目的だけではなく、農林水産業や生活環境の被害を防止する目的の捕獲、さらには生態系に対する被害を防止する目的の捕獲も狩猟に含めてしまっているわけであります。これは、被害防止のための駆除について、民間狩猟者への依存体制を今後も温存するものと言わなければなりません。また、このように今回の改正で定義を付けてしまうことは、科学性、計画性、そして適正さを担保する公的機関による捕獲システムへの将来の移行の芽を摘んでしまうのではないかと強く危惧されるわけであります。

 そこで、私としましては、狩猟、狩猟鳥獣の定義は限定的にされるべきだと考えます。端的に言いますと、狩猟というものは遊猟に限定し、被害防止の目的の駆除というものはこの定義からは外すべきだと考えております。

 二点目のお話をさせていただきます。

 それは、高度に商業利用される鳥獣の効果的な保護をどう行っていくかという点についてであります。

 ここで、クマの例を挙げさせていただきたいと思います。現在、クマについては過剰な捕獲が進んでおります。その典型的な例として、東北地方などでは春グマ猟という猟の仕方が伝統的に行われて、今日にも続いております。これは、春、クマが冬眠から覚めた後、クマが出没すれば恐らく農林業あるいは人身への被害があるだろうという予測の下に、予察駆除という名前で、クマが冬眠から覚めて間もないころ、冬眠穴の近くまで山に入り込んでクマを撃つというやり方です。これは猟期外でありますので、有害駆除ということで行われているわけです。また、イノシシなどを有害駆除するためにくくりわなという、手足などをワイヤーでからめ捕るわなが仕掛けられますが、このくくりわなに相当数のツキノワグマが混獲されております。これが一定の割合で掛かるということは、ハンターの間ではこれはもう周知のことであります。

 その結果、現在、日本では北海道にヒグマ、本州以南にツキノワグマが生息しますが、合わせて約一万頭のクマのうち年平均千七百五十頭が狩猟あるいは有害獣駆除で捕殺されております。先ほどお話ししました混獲されたものはここのデータに現れておりませんので、これを含めればそれ以上ということになります。

 この過剰なクマの捕獲の背景には、先ほども触れましたクマの胆のう、ユウタンの高い商業価値があるわけであります。このユウタンは、このように殺されたクマを切って、腹を切って取り出されるわけです。そして、それがこのように乾燥されます。乾燥されたユウタンは、その原形のままで漢方薬店で医薬品として販売もされます。また、この乾燥ユウタンの中から取り出された結晶状あるいは粉末状の胆汁、これもユウタンと呼びますが、このユウタンもその姿で漢方薬店で販売されます。しかしさらに、多くの量のユウタンというものは日本の製薬業者の製薬原料として使用されており、それが含有された製剤が漢方薬店で広く販売をされております。

 日本におけるユウタンの潜在的な需要は、年間二百キログラム程度と言われております。これは少ない数字に見えもしますが、しかし、これは実はクマ約一万頭分の量に当たります。クマ約一万頭といいますと、日本のクマの全生息数にも匹敵する数になります。

 野生生物保全論研究会では、国内におけるユウタンの流通について調査を行いました。皆様のお手元に配付してあるレポートはその調査結果でありますが、この調査結果によりますと、漢方薬店、これはこの円グラフの左側ですが、漢方薬店で流通しております先ほどの原形や粉末のユウタンの三三%は日本の国内のクマが供給源になっていることが分かりました。それより大きい緑側の部分は、これは海外の野生のクマのものです。それから、更に大きな量を使う製薬業者の方でも一二・三%は国内の野生のクマのユウタンが使用されていることが分かりました。

 国内の野生のクマが殺されまして、そこから取り出されるユウタンが一体どのぐらいの値段で取引されているかですが、これは物によって大きさが異なりますので幅がありますが、数十万円から百数十万円でハンターから漢方薬店などに取引されるということです。しかし、問題は、これらのユウタンの取引に対して、現行法上、全く規制がないということであります。

 そこで、今回の改正案の条文を見ますと、そこに販売禁止鳥獣についての規定がございます。そこでは、販売されることによりその保護に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣であって環境省令で定めるものは販売してはならないとあります。これは、これまでヤマドリについて適用されてきた条文ですが、適用対象が一般的に鳥獣に広げれられたこの機会に、クマ、そしてやはり商業利用されるニホンザルについてこそ適用されるべきだと考えます。この販売禁止鳥獣のこの規定をいかに実効的に使うかについては、時間の関係上ここでは省かせていただきますが、御質問いただけば、その点についても申し述べたいと思います。

 三番目の問題です。それは、鳥獣保護法が保護する鳥獣の範囲についてであります。

 鳥獣ですから、これは鳥と哺乳類ということになりますが、従来は明確な規定もなしにモグラ類、ネズミ類、そして海生哺乳類を法律の対象から除外してきました。今回の改正案では、この除外の仕方に段階を付けた上でこの点を明文化しております。この中で、特に本日申し上げたいと思いますのは、法律の適用自体を丸ごと除外する、この八十条に関してであります。特に、海生哺乳類について適用除外が広く認められてしまうのではないかという危惧を私どもは持っております。

 この規定の該当部分を見ますと、「他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるもの」と規定されております。この趣旨を考えますと、ある種の法律が適用されていれば、本法律の目的、つまり鳥獣の適切な保護管理ということですが、これが達せられるので本法律を重ねて適用する必要はないと、こういう趣旨の規定だと思います。

 そこで、この鳥獣保護法における適切な保護管理とは一体何であろうかということであります。この点、本改正案一条の目的規定から考えますと、少なくとも農林水産業の健全な発展に寄与しつつ生物多様性の確保を図る観点からの保護管理と、このように理解されなければなりません。そこで、海生哺乳類について考えますと、海生哺乳類は陸生哺乳類よりも絶滅のおそれのある種の割合が高い点で極めてその保護については問題が大きいものです。

 この点について扱っているのは水産関連の法律ですが、従来の水産関連法の中でこの海生哺乳類がどう扱われているかを見てみたいと思います。

 まずは、肉などとして消費される資源として、あるいは専ら有用漁業資源への害獣として扱われております。後者の場合には、それ自体の資源管理については顧みられることはありません。そして、実際にその水産関連の法律の目的を見てみますと、まず水産資源保護法という法律がありますが、そこには、水産資源の保護培養を図り、漁業の発展に寄与すると書かれてあります。また、漁業法という法律があります。漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用し、もって漁業生産力を発展させるとあります。これを見ますと、生物多様性確保の観点からの野生鳥獣の保護管理は望むべくもないと言わなければなりません。法律の目的は全く異なっております。

 実際、海生哺乳類の具体例を見ますと、沖縄で有名になりましたジュゴンや鯨の仲間のスナメリなどについては水産資源保護法で捕獲が規制されているのみ、トド、そして鯨・イルカ類になりますと漁業法で捕獲割当て数が定められているのみ、ましてアザラシ類になりますと何らの法的対応もなしという現状であります。

 その中でも具体例として御紹介したいと思うのは、トドについてであります。これは、今緊急の問題となっております。皆様のお手元に、北海道海獣談話会というトドやアザラシ類の研究者団体が昨日、緊急声明を出しておりますが、それを配付してございます。鳥獣保護法からトドを除外することに反対するという趣旨の声明であります。

 この声明の内容を中心に、その概要をごく簡単に御紹介したいと思います。

 千島列島及び北方四島で繁殖しているトドは、一九六〇年代には二万頭いると言われておりました。ところが、その後の四十年間でそのわずか四分の一、五千頭にまで数を減らしております。環境省でも水産庁でも、それから研究者団体の日本哺乳類学会でも絶滅のおそれがあるという評価がここでされております。

 このトドについては、特にこの適用除外の規定に当たって、本改正案が適用されないということがないようにここで強く訴えさせていただきたいと思います。このトドの問題に関しても、御質問もしいただけるようでありましたら少し具体的に申し述べさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

(中略)

○委員長(堀利和君) 次に、高木参考人にお願いいたします。高木参考人。

○参考人(高木直樹君) 高木です。よろしくお願いします。

 私は、獣害総合研究所というのを、この名前で約十年やっていまして、こういった名称を聞いたことが皆さんないと思いますが、農林業の被害対策の研究をずっとしております。主に猿、イノシシ、クマの被害を研究してやってきました。これまで行政とのかかわりとしては、被害防除システムの開発とか、あとは特定鳥獣保護管理計画の策定の助言とか、実際の現場の調査等をやってきました。

 今回、私がこの法案で何を話すかといいますと、違法捕獲について話をしていきたいと思います。いろいろとこの法案の中ではお話ししたいこともあるんですが、ニホンザルの違法捕獲について話をさせてもらいます。

 前の方のスクリーンを見ていただきたいと思います。(OHP映写)ここからずっとスクリーンをパワーポイントでやっていきたいと思います。

 まず、どんなにこの鳥獣保護法に、こういう許可を取らなきゃいけないとか、被害がなければとか、特定計画で定めなければと書いてあっても、農家の方というのはそんな法律は基本的に知りません。役場の方もほとんど知りません。ですから、憎しみ捕獲と言って、生産者ですね、猿やイノシシ、クマの被害に遭っている方が独自にくくりわな、これは兵庫県篠山市ですが、この先にわなを仕掛けてありますと堂々と書いています。これ見つかったら、これは捕獲行為で摘発されなきゃいけないんですが、知っていて、だれもこんなものは摘発しません。役場も鳥獣保護員も知っています。
 こちらは、徳島県でミカン農家が猿やハクビシンの被害に遭っているということでトラ挟みを、ホームセンターで手軽に買えるのも問題ですが、捕まえて殴り殺すというようなことをやっている状況です。こういうのを憎しみ捕獲と言います。

 次、お願いします。

 今度は、こういった有害駆除の歴史は長くて、許可の制度だとかいろいろ変わってきていると思うんですが、憎しみ捕獲はどんどんどんどん地域では習慣となります。私はそういうものを習慣捕獲と言っていますが、ここは地元の方が、この方が捕獲したわけですが、実際は狩猟免許も持っていない。このおりはまた別の人ですが、このおりの所有者も狩猟免許を持っていない。これは何のおりかというと、猿を捕まえるためのおりで、長年使っていると。私のところ、私がこういうのを発見しましたので、現場に行って本人に聞いてみると、無許可で何が悪いというようなことです。捕まえた猿をどうするのかといったら、当然殺すぞというようなことを言っているわけです。猿は非狩猟鳥獣ですし、これを捕まえるためには学術研究であるとか特定計画であるとか有害鳥獣駆除の許可が必要なんですが、そんなものは関係ないというのが現場の実情です。ですから、今警察が取調べしておりますが、かなり開き直っている状況です。これは三月の状況です。
 次、お願いします。

 次に、猿は食べたりとか一般個人の方は販売したりということは考えていません。基本的に愛玩でやっています。これは、これもホームセンターで売っているちょっと大きめのおりですが、こういったものを買ってきて、何の許可も得ずに捕まえると。捕まえて飼育して、大きくなったら手に負えないので山に放すというような現状があります。こういうのも堂々と道端でこういったおりで飼っていますので皆さん知っているわけなんですが、全く摘発されることはありません。これは三月の十四日の状況です。

 次、お願いします。

 続きまして、これは要望捕獲というふうに私は言っているんですが、有害駆除では物足りないということで、予察駆除ですね、有害駆除の中の予察駆除、被害が起こることが予想されるのでどんどん捕らせろというような地元の考えですが、これは役場ぐるみですけれども、たくさん猿はいるんだということを証明するために実績を上げようということで、被害がなくてもどんどん捕獲をしていると。これは四月の状況です。これはもちろん許可ないですから、放獣させています。

 次、お願いします。

 これは二月の状況ですが、これは密売捕獲というふうに言っているんですが、これは、違法捕獲の中には実験施設への譲渡とか、そういったものがあるんですが、日本には、二年ぐらい前に騒ぎになりましたが、二か所、ニホンザルを販売している業者がいます。そういったところの一つが岐阜県、もう一つは熊本県ですが、岐阜県にありまして、その周辺の地域ではどういうことが起こっているかというと、このおりも全く許可は得ていません。ここに辛うじて付いていた、上に許可証を張り付けてありますが、これはほとんど字が読めませんが、十四年に猿が捕獲されたんですが、許可証の標識の許可期限は平成十一年度のものであるということで、許可なんかもう関係ないと。役場も一緒に分かっていてやっています。

 更に良くないのは、捕獲された猿を一頭一万円で買わないかというようなことで業者に連絡していると。たまたまこのときは岐阜県の業者が連絡がつかなかったということで、何を思ったか私のところに連絡してきたものですから、すぐに摘発ということになりました。これは密売目的の小遣い稼ぎの捕獲ということになります。

 次、お願いします。

 次に、これ結構多いんですが、無目的捕獲というふうに私は言っています。これは役場というのは、役場、市町村ですね、おりを被害があるときに購入するわけですね、猿でもイノシシでもクマでも。そういうものを使わなきゃどうするんだというような地元からの意見がありまして、被害がなくても毎年恒例で現地に置いて捕獲を続けるということです。市町村が今現在、有害鳥獣駆除の許可を出せるようになっていますので、市町村の担当者というのは、いつでも出せるやということで、おりが一年じゅう開いていても何も気にしないわけですね。ですから、これもそうでしたが、四月七日、この間ですが、猿が捕まったということで、よくよく調べたら許可をだれも取ってなかったということで、県や市町村、それから警察等が行って放獣したということになっています。

 次、お願いします。

 次に、組織的な違法捕獲。これは、医学、猿を利用している実験、猿を利用した実験をやっている大学等が近くにある場合、こういったものが習慣となってやられています。これはこの後新聞で、新聞記事をお見せしますが、滋賀県の例です。

 滋賀県には滋賀医科大学というところがありまして、そこはニホンザルを実験に利用しています。それをいいことに、引き取ってくれることをいいことに、市町村は生け捕りをどんどん行いまして、そのたびに大学に持っていって引き取ってもらうということをやっているわけです。このときには何が違法なのかというと、有害鳥獣駆除というのは、これは滋賀県の場合ですが、おり捕獲は県の権限です。銃の許可は市町村です。銃だとたくさん捕れないわけですね。手間も掛かる。だから、おりを使ってたくさん捕ろうとする。でも、おりを使って捕ろうとすると、被害がない時期には許可が下りないということで、これは今までで初めてだと思うんですが、学術研究を申請して許可を得て医学実験に回しているというふうな状況、たまたまこれを私発見しまして、その日に県と相談しまして、すぐに警察に通報し、この捕まっていた三頭はその日のうちに放獣しました。

 次、お願いします。

 更に余罪があるだろうということで、今度大学側を調べてみたところ、この町からだけで五頭が行っていた、五頭が入っていた。大学側は、無許可で捕獲したものを飼育する場合は飼養許可は出ないわけですが、それがないことを知っていて半年以上にわたってこういったものを飼育していると。何で飼育していたんですかというと、いや、しようがないから預かっていたと。そんなの通じるわけないだろうというふうに私は思うわけです。そういうのが発覚しましたので、二月にその猿たちを元の群れに帰すということで一か月、二十日ですか、掛けてリハビリを行って、三頭とも無事群れに帰しました。無事に群れに帰ったということです。

 次、お願いします。

 こういったものは新聞に出るのは一部ですが、こっちはいつかな、十三日の新聞ですね、こっちは二月かな、こういったものは結構地方では出ていますし。

 次、お願いします。

 私は、全国の各自治体から被害対策であるとか保護管理の調査を受けていますので、現場に行くと平均して週に二回か三回は違法捕獲に出会います。通り掛かりで見るだけで違法捕獲がある。だから、今回、本当はこの法律案の中の罰則がどうだとかいろいろ細かいことを話すところだとは思うんですが、私はどんなに細かいことをやっても、現場が法律を知らないんでは話にならぬやろうというところからちょっとこういった現場の話をさせてもらっています。

 今、特定鳥獣保護管理計画を策定し始めていますが、地元というのは、猿やイノシシやクマは害獣です。あるいは金になる動物というふうに考えていますので、これは岐阜県の三月二十日の例ですが、猿が捕まっていた形跡があるんですが、それは何者かに持ち去られている。三重県でも三月にありました。滋賀県でもあります。これは完全に事業の妨害になっていると。これは警察の鑑識が調べていますが、ほとんど摘発というか、犯人を捕まえることはできていません。

 次、お願いします。

 これは四月の十三日ですね。数日前に起こった事件ですが、特定鳥獣保護管理計画を策定するための動物に電波発信器を付けますが、そのために大人雌を捕まえていますが、学術研究で捕まえているおりに入った猿を地元住民が殺害したと。これもよくある話なんですが、殺した理由は何でかといったら、いや、捕まえている理由が分からなかったから殺しておいたと言うんですけれども、そういうことが通っているわけですよね。で、何の反省もない。

 ちょっと前の新聞にありましたが、こういうことをやっているのを見ると、やはり私の立場からいうと、やはり警察に届けたり、県に指導を仰ぐわけですが、そうすると嘆願書を出して、結局はだれも何の罰則も受けていないと。この法律は何なんだというふうに私は思うわけです。

 次、お願いします。

 ニホンザルというのは、集落とか市町村では一体どういう扱いをされているのかといったら、一頭当たりの報奨金が幾ら幾らと、農業被害があるからということで、猿というだけで、イノシシというだけで、クマというだけで捕獲がされている。たくさん捕れば被害がなくなると思って、この五十年から六十年やってきたわけで、全く被害はなくなっていない。もっと冷静に科学者も考えれば分かることで、猿を捕ろうがイノシシを捕ろうが、そんなに被害は減らないものです。それについては、質問があれば答えたいと思います。

 これは通称地獄おりと言われている群れ捕獲用の大型囲いさくですが、これも集落の方がお金を出し合って建てます。しかし、許可を得ずに猿をどんどん捕まえている。こちらが、最近は余り見ませんが、猿かかしといって、捕まえた猿を首をつって、これで大きい猿をやればほかの猿は来ないだろうというようなことが通っている。いかに動物のことを知らない人たちがこういうことをやるかと、その犠牲になっているのは動物たちであるということです。

 こうやって捕獲されている猿は、私がずっと見てきている中で、今度は捕獲した、適法に捕獲したとしても、それを飼養する場合には飼養許可とかが必要なわけですが、例えば、これは昨日現場で見付けてきたもので、現場で猿の数を数えたら十三頭いると。その中で、こういったゼロ歳、一歳、二歳という非常にかわいい猿ですね。お客さんが集まりそうな猿が全体の半分を占めていると。親の数からいってもこれが繁殖個体なわけではないのに、飼養許可数は四頭しか出ていないんだと。これは明らかにもう調べれば分かるんですね。違法ですよね。DNAを調べたりしたらもう簡単に分かる話なんですが、そういうことはだれも県は知らない。知らないというかやろうとしない。それは地元の中でトラブルを避けているというようなことがあるかと思います。

 それで、二年前の違法捕獲の疑いが掛かったときも、すべて繁殖個体であるというようなことを言い切られてしまって取り締まれなかったということがありますので、今後、こういった無許可の、飼養許可を得ずに飼っているものについて個体管理をするためには、マイクロチップを入れていくとか、DNA鑑定をするとか、入れ墨を入れるというようなことが、そこまでやらないと駄目、飼養許可を取らなきゃいけないですよと言っても、それは繁殖個体と言ってしまえば終わりなんで、そういう抜け道がいっぱいあるんだというようなことであります。

 私の時間はあと、もうないですか。じゃ、以上です。ありがとうございました。

○委員長(堀利和君)
 以上で参考人の皆様からの意見聴取は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。

(中略)

○小宮山洋子君 個別に伺いたいんですが、坂元参考人に。

 二十三条と二十四条にあります販売禁止鳥獣等とその販売許可の規定などについてなんですが、医学実験のためのニホンザルの販売ですとかユウタンと呼ばれるクマの胆のうの販売、そのために密猟が後を絶たないというお話を聞いています。実効性が担保できる飼育規制や譲渡規制、これについて具体的なお考えがあれば伺いたいということと、もう一点、クマのユウタンが日本で広く流通しているということは先ほどのお話にもありましたけれども、海外のクマの保護ですとか国際条約との関係でも問題だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

○参考人(坂元雅行君) まず、販売禁止鳥獣それから譲渡や飼養の規制の点についてでありますが、まず先ほど申し上げましたように、高度に商業利用されている鳥獣については販売禁止のこの規定を最大限活用すべきだと考えております。

 ただ、この二十三条の後に二十四条という規定がありまして、ここでは、都道府県が許可した場合には、これは学術研究目的など一定の目的の下に許可ですけれども、これがあれば販売禁止鳥獣であっても販売が可能となっております。したがって、この二十四条の例外規定を厳格に解釈しませんと販売禁止はしり抜けになってしまいます。

 特に、この学術研究目的ですけれども、ニホンザルの問題で提起されておりますように、ニホンザルは脳神経医学等の研究に使われるためにこれは販売をされるわけですから、ここの二十四条の学術研究目的にこうした脳神経医学等の研究目的は含まれないということを明確にする必要があります。つまり、学術研究目的とは鳥獣の生態、習性、行動、食性、生理等に関するものであることを法律に明記すべきだと考えます。

 また、この販売禁止の規定に関しまして、もう一点御指摘させていただきたいと思いますのは、今申し上げました例外的な販売許可というものは原則都道府県知事が行うことになっておりますけれども、改正案の七十九条二項に見られますように、都道府県はこの事務を市町村に委任できることになっております。しかしながら、実験目的のニホンザルや、それからクマのユウタンの流通というものは全国規模であります。また、先ほど高木参考人の意見の中で紹介されたように、市町村レベルで不祥事が絶えません。こうしたことを考えれば、販売規制は実質的に全国スタンダードであるべきであります。そこで、この七十九条二項の運用に当たっては、政府としては都道府県にこの点問題がないように徹底をする必要があると考えます。

 また、販売禁止にならない鳥獣に関して、これは飼養と譲渡の規制がやはりあるわけですが、先ほど高木参考人が言われたように、捕獲してきたものから繁殖したものもその飼養の規制の対象にするのでなければ、問題点が指摘されたときに、これはここで生まれたものですと言い訳をしてすべて免れてしまうということになりますから、そこの点を明確にすることが必要だと考えます。

 それから、二点目の御質問の世界のクマの保護の件ですが、野生生物保全論研究会が行った調査によりますと、国内の野生のクマ由来のユウタンも流通しておりますが、海外の野生のクマ、それから中国で、これは一種の牧場が経営されておりまして、そこで飼育されたクマの腹を切開して生きたまま胆汁を搾り取るということが行われております。そうしたユウタンが日本に入ってきて、広く流通をしております。

 我々が調査したところでは、調査した漢方薬店百二十八店のうち二十一店がワシントン条約上輸入が禁止されているクマしか生息していない国のユウタンを扱っておりました。製薬業者についても、調査した五十業者中二十三業者がそのようなユウタンを扱っておりました。また、中国クマファームのユウタンといいますのも、ここで飼われております九七%のクマは輸入が禁止のツキノワグマですので、この輸入もワシントン条約違反となりますが、これを扱っていた漢方薬店、製薬業者も非常に多数に上っております。これは、日本のユウタンの需要や取引が世界のクマの保護、グローバルな生物多様性の保全、そしてワシントン条約の責任ある効果的実施を大きく損なっていることを示します。

 そこで、私としましては、確かにユウタンの中には例外的にといいますか、ユウタンの一部は合法に輸入できるものもあります。多くは輸入禁止ですが、合法なものもあります。そこで、合法なものも一定量は国内でどうしても流通します。そこで、合法に流通するユウタンをきちんと管理をすることで違法なものを排除する、こういう仕組みが必要です。この仕組みは現行法、種の保存法にもこの仕組みは現にあります。これを適用すればよいだけです。

 それに加えて、それぞれの供給源の制御が必要です。海外の野生のクマのユウタンに関しては税関の対応能力を強化することが必要ですし、中国クマファームのユウタンについては今後とも輸入の禁止を継続してやはり税関で徹底をする、国内の野生のクマに関しては、先ほど申し上げましたように販売禁止鳥獣としてその流通を制御すると、こういうことであります。

(中略)

○小宮山洋子君 もう一点、高木参考人に今度は伺いたいんですけれども、ニホンザルなどの捕獲や飼育の許可権限、現在は市町村にあるわけですが、以前、県にあったものが変更されているのに現場では徹底していないということが先ほどお話にあったいろいろな場面でも出ているのかと思いますが、この点はどうお考えでしょうか。

○参考人(高木直樹君) 高木です。

 猿に限らず、イノシシ、シカ、クマなど大型哺乳類は広域に動いています。ですから、各市町村境で行動を阻止するようなものではないので、まず適正な保護管理はできない。

 次に、市町村側から見た被害をなくすための捕獲としての有害駆除の効果についてですが、その地域の地形図を見ていただければ分かりますが、この部屋を山だとすると、この山にいろんな動物がたくさんいます。その中で、田んぼや畑の面積というのは恐らく一個一個はこれよりも小さいものであると。そういったところで、先ほど私ハンターのことを言いましたが、ただ捕獲することができるよというような人が山にちょこちょこ行ったり被害がある場所で捕っていくような有害駆除というのは基本的に効果はないだろうと。この広い、自由に動き回れる山の中を動いている野生動物の被害を止めるのであれば、捕獲という方法を取るよりは、限られた農地を囲っていった方が農家にとっては早いんではないかというふうに思います。

 また、先ほどもうさんざん言いましたが、捕獲許可が県にやはりないと、いつでも出せるぞというようなことで、実際捕獲が行われた後に、県に報告する段階でさかのぼって捕獲許可を出しているのがかなり目立ちますので、市町村に許可権限を下ろしたのは間違いであろうというふうに私は思います。大体、市町村の担当者が鳥獣保護法を知っているわけがありません。実際に知りません。

 以上です。

○小宮山洋子君 終わります。

(中略)

○岩佐恵美君 先ほど、高木参考人から捕獲の様々な実態があるということが示されました。憎しみ捕獲とか要望捕獲、今の予察駆除ですね。それだとか密売捕獲だとか、非常に私は衝撃を受けました。改めてこういうことがあってはならないというふうに思いました。

 問題は、こういう捕獲を許しておくというか、それが日常茶飯事というのは動物にとっても非常に良くないですし、私は人間社会にとってもやっぱり良くないというふうに思うんですね。猿を残虐に撲殺をするということが子供の教育上も良くないんじゃないかということを何か思いました。

 それで、高木参考人は、無差別な猿の有害駆除が猿害を増やしているんじゃないか、もっと猿に接する接し方があるのではないかということを言っておられるというか、ちょっと私どもの参考資料として、これは調査室からいただいた資料の中に高木参考人の活動のそういう面の紹介がありまして、大変そこの点に私は興味を持ちました。

 やはり、先ほども三浦参考人から言われましたけれども、猿は日本独特であるとすれば、日本でそういう猿にどう接していったらいいのかということをもっともっと深めていく必要があるだろう、共通認識にしていく必要があるだろうというふうに思うので、高木参考人からその点についてお伺いできたらと思います。

○参考人(高木直樹君) 高木です。OHCをお願いします。(OHP映写)

 有害鳥獣駆除をやると被害が増えるというのは、事実としてはあるんですが、全部ではありません。増え方とか、被害の増え方、被害地域の増え方、いろいろありますので、それについてちょっと説明させてもらいます。

 レーザーポインターが壊れているようなので前に行かせてもらいます。済みません。

 まず上の図を見てもらいたいんですが、これは有害駆除を実施する前のそれぞれの群れの行動範囲です。そこで、このミカンのマークがあるところでミカンを作っています。猿はミカンが大好きです。一度そういうものに執着すると毎年食べに来るわけです。当然被害があるということで、このCという群れの地域で有害駆除がほかよりもたくさん行われてきた。その結果が、猿の群れというのは五十頭とか百頭、一つの群れでいます。

 自然状態で十二頭なんてあり得ません。これはどういうことかというと、有害駆除によってこのC群という群れが極端に数が減った。B群を見ると二十八頭、A群は八十八頭、これが普通です。ということは、C群の数が有害駆除によって減ってくるとその群れの縄張が守れなくなって隣接群がこの群れの範囲に侵入してきます。そうすると、今まで食べたことのないミカンの味を覚えるがために翌年も出てくる。そうすると、ここでB群の数が減る。B群の数が減るから今度A群が、スライドと言うんですが、群れの行動範囲をスライドしてきて、またミカンの味を覚える。結局、十年間で百頭を超える頭数を撃っていますが、被害額は増えている。ここだけで一億五千万のミカンの被害があるということで、必ずしもたくさん捕ればいいというものではない。これは、被害量は一か所で増えたという例です。

 もう一例だけ言います。

 こちらは有害駆除、先ほどの質問で無差別な駆除が被害地域を拡大するというのの例ですけれども、猿は集団、群れで生きています。それぞれの群れには縄張があります。

 これは、L8というのは、数字が大きければ大きいほど悪い性質を持っています。L2はL8に比べていい群れです。L8は非常に被害を出しますので集落の被害は深刻です。ところが、L2については、レベルと言いますが、レベル2は余り被害がありません。ここは猿がいません。こういったところで、この年から県は有害駆除にお金を出し始めました。

 四年間に八十二頭の駆除をしたところ、被害地域が四倍に広がりました。これはどういうことかというと、ここにいた群れはレベル8と言って、人を見たらすぐ逃げてしまう悪い群れ、こちらは余り被害出していませんので、まともにライフルや散弾で撃たれてしまうということで、ここにいた猿の群れの数が減って、こっちが、増えてはいませんが、頭数が変わらないために群れがスライドして、今まで、これ川ですが、猿が渡れなかった川を渡って反対側に行ったということで、被害地域が拡大している。

 こういうことが分かったのは、これは九一年のデータですが、十年ぐらい前からの話です。それまでは電波発信器がなかったがために殺せば減るだろうと思っていましたが、今、猿の研究者の中で、猿を殺して被害が減るということを言う人はまずいないと思います。ただし、被害量は減っています。被害地域は増えましたが、猿の数は減っていますので、全体の被害量は減っている。

 問題は、一軒一軒の農家を救済するために防除施設とかを建てていくわけですが、防除施設は高いものです。一集落当たり二千メーター設置すると、猿さくで言うと大体一千万掛かりますので、四十集落で四億掛かるわけです。四億というのは、年間の被害額の何十年分にもなる、もう何十年じゃない、百年分とかになるわけですから、こういう政策は被害対策としては間違いであろう、農家も救われないだろうということの事例です。

 以上です。

○岩佐恵美君 ありがとうございます。

 今、市町村にその被害対策とか保護管理が移行しているわけですけれども、そういう中で先ほどの、被害が目の前で起こるわけですから、私も、今住んでいる東京の三多摩の地域というのは猿害とかイノシシ害とかがあってすごくみんな大変だという思いを日常的にしているものですから、やっぱり何か憎しみ捕獲とか、どうしてもそういうところに流れてしまいがちです。

 やはり、それではなかなか大変で、当面、市町村に下ろしていくと、今お話があったような、こういう違法捕獲というのがなくならないのではないだろうか。それを何とか現状でなくしていくために法律的にどうしたらいいのかということについて、坂元参考人にどう考えていったらいいのかということをお伺いしたいと思います。

○参考人(坂元雅行君) やはり、使うツールとしては、今法律にある特定鳥獣保護管理計画に着目すべきだと思うんですね。

 ただ、先ほど議員の方から御指摘があったとおり、現在、策定されているのがわずか一つと。これはなぜかと言いますと、とにかく、シカのようにたくさん捕りたいものについてはそれなりの誘導措置が法律に組み込まれております。厳しい、特定計画を立てれば厳しい規制を都道府県の判断で緩和できるからです。これに対して、猿やクマのような種については、この策定を動機付けるような仕組みが法律上ありません。特定計画は任意の制度です。これが一つですね。

 そして、特定計画を動機付ける仕組みを作った上で、やはり特定計画の内容づくりの面で、今、高木参考人から御示唆のあった非常に興味深く効果的なそういう知見を、すべての都道府県でこれを集約することができるような役割を政府は果たすべきだと思います。

(以下略)

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