平成20年 実験動物の飼育についての実態調査を
※動物愛護法に関する馬渡龍治議員の質疑より。
第169回国会 衆議院環境委員会 12号 平成20年06月10日
○馬渡委員 久しぶりに環境委員会で質問させていただく機会をいただきまして、委員長、理事の皆様方、本当にありがとうございます。
私は議員になって、まず真っ先にやりたいなと思ったのが、動物の愛護と適正な管理を求める活動です。二年前に、自民党の中で初めて動物愛護管理推進議員連盟というものをつくらせていただいて、今六十名を超える同志の皆様方とともに活動をしておりますが、一言に動物愛護といっても、多岐にわたる、そしていろいろな法律に関係する、省庁もたくさんある。特に日本の国においては、先進国と比べると、そういった面では愛護や管理に対してまだまだ頑張らなきゃいけない余地があるな、そう思っています。とりわけ、生命倫理や動物福祉に関しては、これから本気になってやっていかなきゃならない、そう思っております。
今、人と動物とのかかわりというのはいろいろなところであって、日本の国では、ペット、犬、猫が合わせて二千三百万匹以上いると言われています。そして、畜産動物は牛、豚、鶏などを合わせると八億から九億の数があると言われ、実験動物は一千万から二千万ではないかと推計されています。こんな中で、ペットショップなど、年間数百万匹の動物が輸入されています。
私たち人間はこれらの動物に対して必要以上の多大な苦痛を与えてはいけない、そういう倫理的な責任があろうかと思います。この倫理を動物に関係するすべての分野でしっかりと確立していかなきゃいけない。学校教育や職業教育、またいろいろな分野においてその理念が根づいていくことが望まれますし、動物に対する生命倫理や動物福祉についての概念や知識の普及拡大が望まれます。
そこで、動物福祉に関しては、動愛法を所管する環境省がしっかりとしたリーダーシップをとっていただいて、関係する省庁とよく連携をとって頑張っていただきたい。これから、環境省はその点についてどのように取り組んでいかれるのか。ここは桜井環境副大臣に御答弁いただきたいと思います。
○桜井副大臣 今委員が御指摘されましたような動物福祉や生命倫理は大変重要なことだと考えておる次第であります。学校や地域、あるいは家庭などにおける教育活動、広報活動などを通じて普及啓発を図ることは極めて重要なことだと思っておるわけであります。
こうした普及啓発の重要性については、動物愛護管理法に基づいて策定した基本指針でも明記しているところでございます。
今後とも、関係省庁、地方公共団体、関係団体などと連携をしながら、動物愛護週間におけるさまざまな行事等を通じて、動物の愛護及び管理に関する教育活動や広報活動などを推進してまいりたいと思います。
○馬渡委員 動物福祉とか生命倫理については、獣医師の育成に対しても重要なことですから、きょうは質問しませんが、その点について、環境省は関係する省庁ともしっかりと協議していただきたいと思います。
文部科学省は、初等教育においても、生命倫理の教育の観点から、動物との触れ合い教育を推奨しているんですが、その場合、動物の生理だとか習性などの正しい理解を養うことが必要です。動物愛護の観点から、環境省として、文部科学省とよく連携して、適正飼育だとか動物の命の大切さなどを理解するための教育をぜひ子供たちに進めていただきたいという思いがあるんですけれども、その点について、副大臣、いかがでしょうか。
○桜井副大臣 動物との触れ合いや動物の適正な飼育の経験が重要でありますし、特に子供が心豊かに育っていく過程が重要であろうというふうに思います。
環境省では、全国の自治体や関係団体と協力して、動物愛護週間の各種行事を開催したり、適正飼養講習会を開催するなどの取り組みを進めているところでございます。
今後とも、子供を含む国民の間に生命尊重、友愛等の情操をはぐくむことが大事だろう。そして、今お話しのように、関係省庁はもちろん、地方公共団体や獣医師会、関係団体等とも連携して、動物の適正飼養などの普及啓発にさらに取り組んでまいります。
○馬渡委員 ぜひよろしくお願いします。
動愛法は過去二回改正されて、いろいろな基準がよくなってきたんですけれども、実は産業動物の飼養及び保管に関する基準というのがいまだに改正されていないんです。
動物福祉の基準については、OIE、国際獣疫事務局やEUなどでは産業動物に対する取り組みが進んでいますが、日本においては農林水産省がアニマルウエルフェア、いわゆる動物福祉に対応した家畜の飼養管理の検討会を設けています。
この基準を所管する環境省として、独自に取り組みを始めるべきだと思いますけれども、現時点ではどういうふうになっているんでしょうか。
○櫻井政府参考人 動物愛護管理法に基づきますいわゆる家畜の適正な飼養保管を確保するということの観点から、これは環境省に動物愛護行政が来る以前でございますけれども、昭和六十二年の十月に、総理府告示といたしまして、産業動物の飼養及び保管に関する基準というものが定められているところでございます。
一方、近年、EUあるいはアメリカなどにおきまして、家畜の飼養保管に関する基準の策定というような議論が進んでおります。国際的な関心も高まっているんだろうと思います。
我が国におきましても、こういった国際的な動向を踏まえまして、農林水産省におきまして、家畜別に飼養管理のあり方ということの検討を始めたというふうに聞いております。環境省といたしましても、その会議には出席をしているところでございます。
環境省といたしまして、これらの検討状況を踏まえまして、現在の産業動物の飼養保管基準というものの改正についても検討をしてまいりたいというふうに考えております。
○馬渡委員 この間の改正で、動物実験のスリーR、代替法の促進とか使用数の削減、苦痛の軽減の国際原則が示されたことは一歩前進したかなと思います。
ところが、実験の実態把握については全く手つかずとなっているように聞いております。都道府県の策定する動物愛護管理推進計画において、各都道府県が、どこに、どのような施設があり、どのような動物が飼育されているのかというような実態調査を行うとしていますが、国として、このような自治体の調査が促進されるように取り組むべきだと思いますが、どうなんでしょうか。
○櫻井政府参考人 環境省では、動物愛護管理法に基づきまして、平成十八年の四月に、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準というものを定めたところでございます。
この基準を踏まえまして、動物実験施設の所管省庁であります厚生労働省それから文部科学省、農林水産省さらには日本学術会議が、それぞれ具体的な指針を作成しておるところでございます。それらに基づきまして、各実験施設は実験動物の適正な取り扱いに十分配慮しようということになっているところでございます。
一方、御指摘の都道府県の取り組みでございますが、都道府県が動物愛護管理推進計画というものを定めております。その中で、動物実験施設の実態調査を、これは主としてアンケート調査などが中心でございますが、そういった調査を実施するということを明記している自治体もあるわけでございます。
環境省といたしましては、これら多様な関係機関による総合的な取り組みを通じまして実験動物の適正な取り扱いが確保されるように、今後とも、特に動物実験施設の所管省庁、先ほど申しました厚生労働省、文部科学省、農林水産省といったようなところでございますが、そういったところと、さらには都道府県と一層の連携を図って、実験動物に関する適正な取り扱いが進むように取り組みを進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○馬渡委員 このような実態をしっかりと把握していただくということは、単に、動物福祉、動物愛護の観点だけではなくて、前に私がこの委員会で質問に立たせていただいた、例えばアフリカツメガエルのツボカビ症のこと、ああいった問題が起きたときにどういう対処をするか、実態を把握することは必要だと思いますので、ぜひ強力に進めていただきたいと思います。
さて、最近では業者、いわゆるブリーダーとかペットショップ、繁殖業者などが倒産して、犬や猫が放置されるという事件が幾つも報じられています。家庭からの犬、猫の引き取り数が減少している中、これら動物業者の飼育放棄によって、その放置がふえているんじゃないかという懸念があります。最も動物の生命倫理や福祉を求めなければならないこういった業者に対して、しっかりと環境省は指導していただきたいと思うんです。
自治体の動物行政では、これらの業者から引き取りを行っているのかどうか、最近、環境省が自治体に照会したと聞いたんですけれども、その結果はどういうものがあるのか、教えていただきたいと思います。
○櫻井政府参考人 動物愛護管理法に基づきまして、動物取扱業者は、この業者が遵守すべき事項として、その飼養の施設に見合った動物の数を超えないということ、施設に過剰な動物を入れるというようなことを避ける、あるいは、仮に廃業をするというような場合には他の業者に譲渡をするというようなことを定めているところでございます。いずれにしましても、動物取扱業者というのは動物愛護の精神を最も体現していなければいけない人たちであろうと思います。都道府県においては適切に業者の指導を行っておられるものと考えております。
環境省といたしまして、こういった動物取扱業者から都道府県などへの引き取り依頼がどのくらいあるかという実態につきましては調査をしておりまして、現在、整理分析中でありますが、現時点で把握している範囲では、およそ二割ぐらいの自治体では業者からの引き取りを行っているようでございます。
環境省としまして、最終的な調査結果も踏まえて、今後、動物取扱業者が適切な飼養管理を行って、安易に都道府県の収容施設に引き取りを依頼するというようなことのないように都道府県に対して要請をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○馬渡委員 ぜひそのように、強烈に、強力に指導をお願いいたします。せっかく法律が変わって制度が変わっても、実際にうまくいっていないことがあるんですね。そこはぜひ環境省として厳しく監視をしていただきたいなと。
特に、一つの例を言うと、動物取扱業者が登録制となって、業者は店舗及び広告に登録業者であることの標識を明示しなきゃいけないことになりました。ことしの五月には東京都が初めて無登録業者を告発しましたけれども、このような無登録業者がいっぱいあるんじゃないか。また、登録業者であっても標識をしっかり明示していないんじゃないか、そういうものが多く見受けられます。
ですから、この標識を明示させるために環境省はどんな努力をしているのか。また、その取扱業者に起因するトラブルについて、環境省と国民生活センター、消費者センターなどで連携をとって、情報を集めて、そういうトラブルにぜひ対応していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○櫻井政府参考人 動物愛護管理法におきましては、ペットショップの利用者等が同法に基づく登録を受けた動物取扱業者であるか否かということを容易に判別できるように、標識の掲示ということが義務づけられておるところでございます。環境省では、登録に関する業務を行います都道府県や業者などに対しまして、パンフレットの配布あるいは環境省のホームページなどでその周知徹底を図っているところでございます。
また、業者のトラブルということでございます。これまでも国民生活センターからの情報提供があったりしておりますが、今後とも情報収集に努めまして、その結果を都道府県と共有して、トラブルの防止、あるいはまた動物愛護管理法の精神に反することのないように、法律の円滑な運用に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○馬渡委員 十八年に改正した動愛法は五年後の見直しですから、今度は二十三年になります。いろいろな課題がまだまだ解決されていないと思います。それの点検整備にぜひ環境省の皆さんに頑張っていただきたい。特に動物虐待とは何なんだと言われたときに、まだ定義がないんです。単に直接暴力を振るって傷をつけたり殺したりするだけじゃなくて、私は飼養の怠慢による虐待もあろうかと思います。
例えば、前に起きた広島のドッグぱーくの事件だとか大阪のブルセラ症の事件だとか、食事をちゃんと与えなかったり、身の回りの世話をしなかったり、病気になっても放置するというネグレクト、そういった虐待、それも虐待だと思いますし、パピーミルという、これは委員長が写真を見たら泣いちゃうような、母犬が狭いケージの中で、劣悪な環境の中で、とにかく子犬を産ませるだけ産ませる、最後はぼろぼろになります。そういったぼろぼろになった母親から生まれてきた子がペットショップで買われて、本当に一カ月もしないうちに何かおかしくなって、獣医さんのところに持っていくと心臓疾患ですね、そういう事例があるんです。
だから、業者が金もうけの道具として動物を使って、もう要らなくなったら、先ほど言ったように、自治体に引き取りをしてもらったり、そのままほったらかしにしたり、または疾患にかかった子犬を売ってしまったりというのが現在あっちこっちで見受けられますから、ここはその改正に向けて、どうしたらそういう悪徳業者をやっつけられるか。一たんそういう事件を起こした業者は、もう二度と取り扱いができないぐらいのペナルティーを科するべきじゃないかと私は思うんです。環境省の皆さんが頑張って、ぜひそれを検討していただきたいなと思うんです。
虐待の事例を集めて、直接傷つけたり殺したりじゃなくても、そういった飼養の怠慢も虐待の中に入れて対処できるような、何か虐待対策マニュアル的なものをこの改正に向けてつくっていただきたいと思うんです。積極的に取り組んでいただきたいという思いがあるんですけれども、ここは並木環境大臣政務官、お答えいただけないでしょうか。
○並木大臣政務官 馬渡議員には、日ごろより動物議連の中心メンバーとして、動物の愛護や管理、そうした点でさまざまな御提言をいただいていますこと、まず敬意を申し上げたいと思います。
御指摘のとおり、虐待というものの考え方なんですけれども、これはもう御存じかと思いますけれども、動物愛護管理法には、愛護動物をみだりに殺し、または傷つけたとかいうこと、また、みだりに給餌または給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行った者は処罰する、こういうような規定になっているわけですけれども、実際に取り締まる上で、虐待の定義というのが、どこまでが虐待かというのは社会通念上いろいろな意見が分かれるというようなことで、取り締まり当局もそれについてちゅうちょしている、こういう事例も多いようでございます。
この社会通念というところでの、言葉としてきちっと決めるかどうかということについては、個々の事例が動物虐待に当たるかどうかということは、行為の目的とか手段、また苦痛の程度等を総合的に勘案して社会通念上判断せざるを得ない、こういうあいまいなことになっています。
今御指摘のとおり、事例がさまざまにあるかと思いますので、関係省庁あるいは都道府県等と連携しまして、そうしたマニュアルのようなものがつくれないかどうか、先生の御指摘でございますので、ぜひ検討していきたいというふうに思っております。
いずれにしても、動物をしっかりと愛護していくということがより大きく社会に広がっていかなければならないというのが基本原則だと思いますので、そういった点を踏まえて、これからも、動物の愛護管理、そうした考え方の普及に努めていきたい、こういうふうに感じております。
○馬渡委員 政務官、ぜひお願いいたします。
(以下略)
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