1973年の国会会議録より

大出分科員大出俊

※旧「動物の保護及び管理に関する法律」ができた年の国会会議録です。

 

第071回国会  衆議院予算委員会第三分科会 2号
昭和48年03月03日

○倉成主査 休憩前に引き続き会議を開きます。
 厚生省所管に関する質疑を続行いたします。大出俊君。

○大出分科員 三十分という時間ですから、厚生省の皆さんは間口がたいへんお広いわけですから、たくさんの問題をかかえておりますけれども、時間があれば問題を二点にさしていただきたいのですが、できれば一点にしぼって承りたいと思います。

 そこで、厚生省は狂犬病予防法などの所管をなさっておられるわけでありますが、そういう意味で、飼い犬あるいは野犬、こういうふうな形で犬をとらえたときに、いま全国に野犬と称するものはどのくらいおるとお考えでございますか。

○浦田政府委員 野犬と申しますか、いわゆる野犬と称してその辺をぶらついております犬をひっとらまえまして、保健所で施設に抑留するわけでございますが、その数で申し上げます。

 昭和四十六年の数で抑留頭数は七十二万三千九百七十三頭でございます。そのうち四万四千五百七十九頭は引き取り手があらわれまして返還いたしております。したがいまして、差し引き六十七万九千三百九十四頭が処分をされたということであります。

○大出分科員 ひっとらまえる、こういうお話なんですが、なかなかひっとらまえる人も少のうございまして、横浜で飼い犬条例その他の関係がございまして見ておりますが、なかなかうまくひっとらまえられないんですな。だから、ひっとらまえかねている犬がだいぶいるわけですね。そうすると、これは年間七十二万三千九百七十三頭とらまえておるわけですから、そうなると、これはいわゆる抑留できない犬を含めると、ばく大もない数の犬が放置されている、こういうことになる。

 そこで、もう一つ承っておきたいのですが、犬にかまれた、けがをした、死んだという犬の害といいますか、これが一体どのくらいの数にのぼるかという点、あわせて承っておきたい。

○浦田政府委員 犬にかまれてけがをした人の数でございますが、昭和四十六年では一万三千八百五十九人でござます。その原因となりました犬の数が一万四千五百六十頭になっております。

○大出分科員 それはどこで調べた数字でございますか。

○浦田政府委員 保健所のほうに届け出た数字でございます。

○大出分科員 これはもう少しこまかく、各都道府県その他にわたってまでそちらに資料はございますか。

○浦田政府委員 各都道府県別の数字、それから迷惑苦情とか、そういった犬にまつわります被害関係の件数別にございます。

○大出分科員 いま検察庁を通じまして全国こまかく、かみ殺されたというような場合に、それを追跡してみたら最終的にどういう被害者、加害者の側のやりとりになっているかというところまで含めて実は調査をお願いしてありまして、照会をしているという中間報告を実はいただいておりますが、相当詳細な資料ができる、そういう御協力をいただいているいま過程なんですけれども、この私のところにありますのをちょっと申し上げますと、これは四十七都道府県でありまして、年次別咬傷犬、つまりかんで傷つけた犬、被咬傷人の数、それから苦情の受付件数、これは各都道府県別にあがってきているのがあるわけでありますが、全部読み上げてもしかたありませんから、最近のものにしましょうか。この四十三年のを見ますと、一万五千八百三十一というのがかんだ犬の数、それからかまれた人の数が一万六千二百六十六、それから迷惑の苦情というのが、鳴き声の苦情が三千六百六十六、放し飼いで、ほうり出されている犬の苦情が二万五千六百七十四、それから田畑を荒らしたというのが九千九百五十一、そのほか脱ぷんだ何だという苦情、これが二千百九十一、その他が六千六百七十一、迷惑という意味の苦情の申し出がございましたのが総計五万一千三百四十五件、こういう数字が四十三年に出ております。

 それから、都道府県別で四十四年、四十五年、四十六年と犬にかまれたあるいは傷をした、そういうふうなものがあがっておりますが、都道府県別の、四十六年末現在で、かんだ犬が一万五千二百三十六ですか、それからかまれたほうが一万三千四百二十八、四十五年が、かんだ犬のほうが一万四千二百四十七、かまれた人のほうが一万三千四百六十六というふうな数字なんですね。したがって、これは相当な数にのぼっているということはこれで明らかだと思います。

 そこで、もう一つここで最近のものを調べてみますと、ここに資料が一つありますが、本年の一月二十五日に、東京都調布の市立の第二小学校の校庭で体操中の児童が十五人、近所の飼い犬に飛び込まれて、手や足をかまれて病院に収容されている。それから、これは一番近い例でありますが、昨年の十一月には福島県で五歳の男の子さんがかみ殺されている。去年の十月に兵庫県で七歳の女の子さんが、これがまた犬にかまれて死んでおります。昨年の六月に石川県で一歳十カ月の男の子さん、同じ一月に静岡県で一歳の女の子さん、これは全部犬にかみ殺されて命を失っているわけであります。こういうつい最近の事例があります。

 ところで、これは飼い犬条例なるものがあるからいいや――ところが、飼い犬条例がない県も今日ございまして、最近新しいのが幾つか手元に入ってきておりますが、これもつい最近きめた県がございます。そういう状況のままで放置しておいていいかどうかという点ですね。

 そこで、狂犬病はここ数年来皆さんのたいへんな御努力が実っておりまして、発生を見ていない。たいへんけっこうなことなんでありますけれども、しかし、こういうたいへんたくさんの犬の害をほっておくわけにはまいらない。いま取り上げましたのは犬だけでありますが、ネコなどというのもたいへんにたくさん――これは皆さんの御家庭の周辺を見ていただけばわかりますように、たまたまネコ取りなんていうのはおりますけれども、数はふえる。こういうようなことでありますが、そこで、大臣は犬かネコを飼ったことがございますか。

○齋藤国務大臣 犬は現在でも小さいのを一匹飼っております。

○大出分科員 そこで、国際的に見まして、どこの国でももうほとんど動物愛護あるいは管理あるいは虐待防止という形の法律がない国はなくなってきている。大体体系別にながめてみると、法体系は三つありますね。一つは、飼い主の責任を明らかにさせるという意味の、動物の管理という面の法律の体系、それからもう一つは、動物実験その他を含む虐待防止という形が強調されているもの、それからもう一つは、今度は環境庁に鳥獣保護に関する仕事が行ったんだと思いますが、むしろ自然保護という形の動物愛護という体系などがございます。この英国、西ドイツ、あるいはアメリカなんかは州法がたくさんございますけれども、中華民国、ショウカイセキさんあたりのところにもちゃんとございますし、ブラジルあたりにもございますし、だんだんだんだん法律がここに入ってきてふえてまいりましたが、これはという国はもうほとんどある。そうすると、経済大国などといっている日本でそういう法律が考えられないということはもうおかしい時代が来ている、こう私は実は思うわけであります。

 そういう意味で、皆さんのほうに一つの案を、私案をつくって昨年差し上げまして、砂田総理府副長官のお手を当時わずらわせまして、各省の御意見を、かた苦しい意味でなく承った。専門調査室を通じまして、砂田重民さんのお手を通じてお願いをいたしました。だから、これは公式見解ということは決して申し上げません。また、そういうぎすぎすしたやりとりをする筋合いでもございませんので、要は、申し上げたい要点は、どこかの省が責任を持っていただきたい。日本政府にものを言った外国の人もあきれているんですが、動物愛護という法律はございますか、いやございません、どういうところが所管をなさるんですか、いや、狂犬病はどっちでございます、鳥獣保護はあっちでございますと、さっぱりわからぬと言うんですね。自治省の関係もある。都道府県には飼い犬条例があるんだから、なんてことになる。それでは困るから、だから、まずどこかに一つ窓口をおつくりいただきたい。そういうことで、過去の経過の中では、安井謙さんが総務長官をおやりのときに、たまたま総理府がというふうにお引き受けいただいた経過が一件だけあるんですが、それ以後、この非公式の御見解の中では、総理府はていよく断わっておられます。

 しかし、今日、環境庁もおできになったわけですから――たまたま月曜日に分科会で三木大臣に環境庁ということで質問する時間をつくっておきましたが、内閣委員会の公式な筑波学園都市調査がございまして、私、おられませんので、まげてきょう環境庁、総理府の御関係にもおいでいただきましたので、齋藤大臣にこれらの問題について、まず所管をどうするか。そうして国際的に見るとこのように法律体系がいろいろあるのだけれども、今日、もうこの種の法律をこしらえましてももうおそ過ぎる段階ではないか。早過ぎはしない、むしろおそ過ぎる段階だ、こう思いますが、そこらの御見解をまず承りまして、きょうは何とかひとつ、どこでということだけはきめていただきたいと思って、あえて出てきて質問しているわけです。

○齋藤国務大臣 先ほど来お述べになりましたように、かまれるといったふうな被害があり、そのほかいろいろと迷惑をこうむっているという事情を、お述べになりました統計等によりまして、私も十分承知いたしました。なるほど厚生省には狂犬病予防法というものがありますが、これは病気をあれするためでございまして、これはやはりいまお述べになりましたような管理の面からいって、愛護の上からいって、何か別な法体系が私は必要だというふうに、お話を承りまして痛感をいたしました。私も実はうかつでございまして、あまりいままで存じ上げておりませんでしたが、別な法体系において、そういう犬、ネコ等の愛護と管理、そういうものを中心としてつくる必要がある、私はそういうふうに考えた次第でございます。

○大出分科員 これは、愛知さんが外務大臣をおやりになっているときに外国から手紙が参りましてね、愛知外務大臣閣下ということで。これは英国なんですが、日本の犬の扱いというものは非常にひどいものじゃないかというわけです。これは日本に外国の方がお見えになりまして――これは犬の収容施設その他さっきの浦田さんのおっしゃるとらまえるところですね。これはとらまえるところから写真がございますが、針金を持っていって犬をとらまえたところの写真なんですね。収容施設に入れて、これはほうり投げているんですね。これは犬が点々とほうり投げられているんですね。こういう写真などがございまして、犬が首輪で首を締められて妙な顔をしているところから始まりまして、そういうのが向こうの刊行物に載ったりしている。そこで、クローズさんという御婦人が日本にお見えになって、これは当時中日新聞や東京新聞が取り上げて「野犬処置の改善を望む」ということで記事になったこともある。それで愛知さん、たいへん困って、それなりに回答せざるを得ぬで、困ったことがあります。これは商取引がからんだとはいわれながらも、日本に犬は一切輸出すべきではないというキャンペーンが英国で張られたりいたしまして、とらまえて連れていった、さあ、えさも何もやらずにほうり出しておく、そういうふうなところから始まって、あまりといえば、動物の虐待にすぎるではないか、それが一体経済大国といわれる日本のやり方かというので、そういう国際的な問題もございますので、私は、やはりこの際、たいへんぶつかるところはあります、ありますが、あえて法律をつくる必要がある。そうしてその法律の中で、関係のある狂犬病なり狂犬病予防法の関連条文なり軽犯罪法の関連条文なりというものは整備をしていく必要があると思うが、環境庁の立場でひとつお答えいただければ――総理府でけっこうです。

○小宮山政府委員 先生の御意見ごもっともでございまして、先生のほうから御提案のあった動物保護の法律については、いろいろ私も聞いております。現在、法律の中では、環境庁の、先ほど申しました鳥獣保護の問題、これはハンターあるいは繁殖期というような問題もございますし、こういう意味でも環境庁が適当かと思いますし、また罰則については、まだ軽犯法の中に入っておりますけれども、保護を与えたということもあまり聞いたことはありません。総理府といたしましては、まだまだ専門的知識もございませんけれども、私のほうが労をとりまして関係各省と協議し、どこかの省に落ちつくように今後指導をしていきたいと思いますけれども、前にも安井前総務長官が総理府というようなことの発言もございますけれども、ただ、私のほうの役所が受け取りましても、これができません。その後、環境庁ができましたので、環境庁自身は鳥獣保護のようなことをやっておりますので、一番適切ではないかと考えております。

○大出分科員 私、実は関係条文その他も全部調べてありまして、おどかすわけじゃないんですけれども、これはこの国会でひとつ関係のございます大臣各位には直接全部質問をしてみたいと思っているのです。それで、皆さん犬をお飼いになったことがございますか、から始まって、御意見を承っておいて、どうしてもそれでもまだおやりになる気にならぬとおっしゃるならば、実は「三時のあなた」というところで、山口淑子さんがいろいろなことをいまおやりになっていますが、昨年お見えになりまして、フジテレビの記者の方々がたくさんついてお見えになって、要点は、千葉県の夷隅郡岬町和泉二千二百二十五というところにお住まいになっている石川照夫さん、石川易子さん、この方の御長男の武男さん、十歳が、犬にかみ殺されて、これは新聞記事になりました。この方を山口さんが「三時のあなた」にお呼びになって、そこで、犬の害をどうしたらいいか、そういう番組を組んだことがある。その後、私のところにお見えになって、日本という国は困る。あの方は外交官夫人ですから、外国においでになって知っているものですから、それで、どうしても日本の国がおやりにならないというのは、国際的にまずい。だから、国会で努力する方々があって、できなければ、全国的なキャンペーンをひとつやろうではないか。もう犬の害でなくなられたこの御両親などたくさん来ていただいて、国はどうして責任を負ってくれぬのだろうか、どこへ行ったってとりつくしまもない、これで一体行政府の責任が負えるのかということまでやろうじゃないかという機運まで実はあるのです。私は賛成なんですけれども、しかし、その前に、私ども国会に席があるのですから、何とかそこまでぐらいのことはできないはずはないだろうという気持ちなんです。

 そこで、この現行法上の規定についていえば、軽犯罪法が一つあります。これは、二十三年五月一日、法律第三十九号ですね。これの一条の十二号に「人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し、又はその監守を怠ってこれを逃がした者」、いまいみじくも小宮山さんおっしゃるように、該当者がないのですよ。これはあるだけです。それから第二十一号「牛馬その他の動物を殴打し、酷使し、必要な飲食物を与えないなどの仕方で虐待した者」、これもないでしょう。年じゅうやっているんだけれども、ない。罰は「拘留又は科料」なんですね。「十銭以上二十円未満」、これは刊法十七条。罰金等臨時措置法には「五円以上千円未満」ということになっている。これは二条二項です。もう一つ、民法で七百十八条、「動物占有者の責任」という項がある。これは、かみ殺した犬を持っている人間が悪いんだというだけじゃ困るんですね、そのまん中に国の措置として何かがなければ。だから、結果的に行き着く先はどうなるかというと、民法の訴訟なんです。ですから、いま申し上げた石川さんなんかも訴訟になっているのです。
 そうすると、これだけ、さっき冒頭に浦田さんお答えになったような犬の害が、全国的に毎年、目に見えないもの、あがってこないものも含めれば、何万かある。それがそのまま放任されている。これでいいはずはない、こう私は実は思うわけでありまして、狂犬病予防法、これは二十五年八月二十六日、法律第二百四十七号ですけれども、この法律は狂犬病対策を目的としたものであるが、犬の「登録」、これは四条ですね。それから「犬の引取」、これは五条の二です。それから「抑留」、六条というふうに、犬に関しての規定があります。これもどこまでしからば活用されているか、所管の省である厚生省に承れば一番いいのですが、狂犬病と名がつけばいざ知らず、そうでない限りは、これはちょっと該当しているものはほとんどない実情です。

 ここらのところを考え合わせて、どうしても法律的に整理をして、まず一つは、国民の皆さんに、どなたも犬を飼ったりネコを飼ったりする、あるいはその他の鳥獣を飼うわけですから、その管理責任を明確にする。そういうものを国会が審議をしてこしらえた、そのことだけでも相当大きな、これは管理責任という意味で国民に責任を感じてもらうことになるだろう。そこから先、さらに罰則という問題も、やはり最小限度のものは考えなければならぬ。たとえば五万円以下の罰金ぐらいのことにはしなければならない。まずそういうふうに思うのですが、そこらについて、環境庁もお見えになっておられますので、御意見をひとついただきたいと思っているわけであります。

○首尾木政府委員 現在、環境庁といたしましては、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律を持ってございます。ただ、この法律は、御案内のように、野生の鳥獣を対象にいたしておるものでございまして、私どもは自然保護という観点から、野生の鳥獣が自然環境を構成する要素として非常に重要なものであるという観点からこれをやっておるのでございまして、人の管理下にあるものは、これはいわば自然というものではございませんので、一応現在の鳥獣保護行政の対象としてはなじまないものであるというふうに考えているわけでございます。

○大出分科員 年じゅうこれはなじまないのですよ。これは自治省なんていうのはひどくなじまないのですね。それで、もうやたらなじまないものですから、ちっとはなじみになってもらわなければ私どものほうは困るのです。だから、出てきたわけです。

 いまおっしゃるように、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律で、ここにちゃんと抜き出してあります。これは文部省にも関係があるのですよ。文化財保護法の中に「動物、植物及び地質鉱物でわが国にとって学術上価値の高いもの」、こうなっておるのですね。だから、文部省が三下り半みたいな御意見で、これもわが省はという意味ではなじまないと書いてある。学校の先生に一生懸命、動物を大事にしろなんていうことを言わせておいて、文化財のほうはなじまない、こう言う。そこらじゅうなじまなければ、これは一体どうする。

 だからそこで、小宮山さんは総理府だから、関係各省がなじまなければ、総理府がやはりなじんでいただいて、各省にかかわるものですから――農林省なんかもずいぶんひどいことなんですが、かたかな獣医師法を掲げて――あれはろくでない法律ですな、古過ぎて。ところが、実際にこの現場はどうなっているかといえば、獣医師はみんなかかわるのですけれども、これはいにしえに加藤シヅエさんがおつくりになった法律というのは、避姙なんかを義務づける、犬の避姙、ネコの避妊。

 ところで、これは皆さんに承りたいのですけれども、人間の避妊というのはどのくらい金がかかるか、犬がどのくらいかかるか、ネコがどのくらいかかるか、御存じですか。

○浦田政府委員 どうも事情をつまびらかにしておりません。

○大出分科員 これは獣医師会の皆さんもこの点は非常に重視しておりまして、私もこの正月お目にかかって聞いてみましたが、人間さまよりも犬やネコの避妊のほうが高いんですよ。ですから、これはこう簡単に義務づけたからここに問題があるのですよ。子供さんが、かわいいのをもらってきて、自分が食べるものを、親がおこるものだからこっそりやって飼っているのがあるのですね。そんなところで、貧乏人の金がない人、そういうところに避妊を義務づけたって、とってもできるものじゃないのですよ。ハイソサエティーのお遊びみたいな法律をつくったってしようがない。

 そうすると、そこまでおりてみて、一体どういうふうにすれば犬害なんというものを含めて環境整備ができるかという、そういう問題なんですね。だから、生活環境に直接かかわりがあり、国際的にもたいへんきめこまかに法律が整備されているのですから、日本の国にそれがないというのも、これはやはり国際的にも責任を負わなければならぬ日本の国ですから、よろしくない、こういうふうに思うのですよ。だから、いま御存じないのだけれども、もうちょっとそこらは、皆さんのところも全く関係がないんじゃないのだから、ひとつお考えをいただきたいと思うところなんです。

 それから最後に、時間がぴったりになりましたのでこれでやめますけれども、実は犬というのは、調べてみると、昔、集団的穴居生活をやっていた動物ですから、そういう意味で一つの性癖があって、かんだり殺したりしている犬は野犬じゃないのですね、その大多数が飼い犬なんですね。散歩に連れていくこともしない、ほうりっぱなしにしてつないでおく、そうすると、必ず強引に食いちぎっていって、とたんにかむ。そういう欲求不満を常に犬に与えている。あわせて、犬というのはたいへんに病気が多いのですね。犬の尿などというものは、気をつけないととんでもないことで、人間が共通の病気になってしまうというものがたくさんある。ここらのことなども一体だれが責任を負うのか。そういう思想の普及もないし、ここに犬の病気がいろいろ書いてございますけれども、このままにしておいたのでは非常に危険だと私は思うのです。そういう人間より不潔である犬、ここらの点も――トキソプラズマの原虫などの問題をめぐってもずいぶん問題がある。そこまで含めて、そうなれば、一つの法体系をここでこしらえなければ国としての責任が果たせないのじゃないか、こう思いますが、もう一言ずつお答えをいただいて、何とかこの辺で――総理府小宮山さん、恐縮だけれども、音頭をとってやっていただいて、私がものを言うのについても全く窓口がないのではいかんともいたし方がない、そう思いますので、もう一ぺんひとつお答えをいただいて、終わりたいと思います。

○齋藤国務大臣 私、先生のお話を聞けば聞くほど必要なことを痛感いたしました。いままでのような狂犬予防なんというのではなしに、別の体系で、管理の姿、さらにはわれわれの日常生活の平静を維持する上からいっても何とかしなければなるまいというふうに痛感いたしました。おそらく総理府のほうで相談して所管をきめることになると思いますが、その節には私もできるだけ早く所管がきまるように努力をいたしたいと思います。

○小宮山政府委員 たしかに野犬の問題とか、犬やネコの繁殖はたいへん大きな問題でございます。地方では野犬が多くて主婦がなかなか帰れないとかいう問題もございますので、新しい問題だろうと思います。そういうことで、いま厚生大臣がおっしゃいましたように、関係各省と協議いたしまして、特に厚生省とは十分連絡をとりまして所管官庁をきめ、新しい法律内容を検討させていただきたいと思います。

○大出分科員 私のほうも一生懸命やりますので、ぜひひとつ御協力いただきたいと思います。

(以下略)
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