※動物愛護法改正前、下田敦子議員の質疑より。

第162回国会 参議院文教科学委員会-10号 平成17年05月17日

(前略)

○下田敦子君  ありがとうございました。

次にお尋ね申し上げます質問は、少し方向を変えてお尋ねをさせていただきます。

 実際、私、負託を受けております立場から、幾つかの団体が今国会に懸ける期待もあってお尋ねもあり、また要望もされておりますので、改めてお伺いしたいと思います。

 まず、医学薬学研究教育あるいは基礎医学研究のために使われている動物実験に関しましてですが、今国会に動物愛護管理法の改正を求める請願が出てきております。

 動物実験に関しまして、詳しい専門家の方によりますと、現在、日本での医薬品、化粧品の製造、あるいは大学の基礎研究などに使われている動物実験は年間、哺乳類で約一千万匹に至るそうであります。意識しないまま、様々な場面で動物実験の恩恵を私どもは受けております。

 ちなみに欧米では、法律に基づきまして、実験動物の正確な使用数や目的の公式な統計データ、政府によって公開されておりますが、日本では、関連学会によるアンケートを除いて正確なデータが全く存在いたしておりません。非常にそういう意味で、ある意味での後れと申しましょうか、そういう実態があって、関係者以外にはほとんど知られていない状況があると。

 欧米では、動物実験の三原則と呼ばれる、苦痛の軽減、代替法の活用、使用数の削減、この理念が法律や指針、勧告であらゆる規制に反映されていると聞いております。アメリカでは、動物福祉法という、動物福祉法という法律があるそうでありまして、実験動物条項が連邦法として存在しているようであります。これに対しまして、日本の動物愛護管理法は、実験動物の苦痛の軽減しかうたっておりません。しかも、使われた頭数とか届出とか、そういうものに関しては非常に薄いものがございます。

 今回、六年ぶりに同法の改正議論が進んでおりますけれども、これは議員立法による改正案が今国会に提出されていますので、多くを望んでいる団体があるということでございます。欧米のように三原則を反映した改正案にしていただきたいという要望が高まっております。動物、しかも実験に使われる動物の福祉に関する基本的な情報を公的に把握して公開されるような仕組みも取り入れてもらいたいという国民の願いであります。

 この点について文科省はどのようにとらえておられるか、大学教育の観点からお尋ねをいたしたいと思います。

 それから、先日、これはすばらしいなと思うのですが、文部科学省から農林水産省に対して、財団法人実験動物中央研究所が大臣の確認を受けていない遺伝子組換えマウス、これを使用した可能性のあることの連絡に応じられまして、素早くこれに対してお話をされたということが報じられております。さすがは文科省という気持ちでこの記事を拝見しました。この経緯がその後どうなっているのかをお尋ねをいたしたいと思います。

 以上です。

○政府参考人(清水潔君) 実験動物についての取扱いについてのお尋ねでございます。

 先生御指摘のように、動物実験は人の健康、安全あるいは医療の向上と密接不可分の、ライフサイエンス研究に必要不可欠なものでありまして、文部科学省としては適切に実施さるべきものというふうに考えております。

 現在、動物実験につきましては、私ども、法令あるいは局長等の通知によりまして研究機関内の委員会による審査、承認、あるいは法律に基づく政府機関による審査、承認など、国により様々な規制の方式があるけれども、我が国では、先ほど申し上げたように、大学等研究機関に設置された委員会において実験計画の審査等を行い、種類、数の把握も含め適切な動物実験が実施されていると、こういうふうに承知しておるわけでございます。

 現在、それぞれ、先生からも御指摘ございましたように、それぞれの実験動物がどのようなあれをしているかという、使われ方をしているかということについては、実験動物に関連する団体が調査、それを公表しているというふうな段階であるというふうなことでございます。

 第二に、財団法人実験動物中央研究所についてのお尋ねでございます。

 本年の四月に、財団法人実験動物中央研究所が遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律に基づき適切な拡散防止措置を取ろうとしているかを、確認を事前に受けないで遺伝子組換えマウスを飼育していたことが判明したわけでございます。当該マウスの飼育は産業利用目的であったことから、四月十四日、これを所管する農林水産省に情報提供を行いました。農林水産省は、当省からの連絡を受けて現地調査を行い、当該マウスの使用等を行っていた施設は以前から拡散を防止するための措置が取られており、拡散の事実はないことを生産記録等により確認したとしているところでございます。

 農林水産省は、四月二十日、同研究所に対して法令に基づく報告を命じ、四月二十七日の同研究所からの報告書の提出を受けて、四月二十八日に研究所に対して文書で再発防止のための措置を徹底するよう厳重注意をしたと聞いております。

 文部科学省といたしましては、当省所管の法人において遺伝子組換えマウスの不適切な取扱いがあったことは遺憾であり、今後このようなことがないよう対応をしてまいりたいというふうに考えております。

○下田敦子君 大変適切なお話で、誠に自然体系を崩さないためのお役所の対応に、文科省の対応に敬意を表したいと思います。

(以下略)

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