※ペットフード法のための質疑ですが、EUの動物福祉に関する5ヵ年計画について触れられており、動物実験の3Rの話も最初の方に出てきます。

 
第169回国会 参議院環境委員会 6号 平成20年05月20日

(中略)

○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。

 それでは、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案について質疑をいたしたいと思います。

 以前に愛がん動物の関係の法律を考えたといいますか議論したときに、動物の福祉という言葉があるということが実は分かりました、アニマルウエルフェアということでありますけれども。動物福祉を考えるという意味ではこれはちょっと別の言い方になるかもしれませんが、家畜のほとんどはやはり最終的には人間の口に入ることが多いわけですけれども、サプライ・チェーン・マネジメントということから考えても、やはり動物が健康で飼養、飼育されていることは非常に望ましいと、そういった意味をも含めて動物の福祉というふうに言っているかもしれません。明確な定義が、私がまだ知っているところではございませんが。

 それで、まず最初に農水省にお尋ねしたいわけでありますけれども、EUの委員会において動物福祉に関する五年間の行動計画が公表されたと。動物には当然ペット等も含まれるというふうに考えられますが、五年間の動物の保護及び福祉政策の改良、そのための具体的な行動計画を採択しているということでありまして、その行動計画は五つの分野から成っておりまして、第一点は、動物福祉の最低基準の引上げ。二点目は、動物福祉分野における研究及び動物試験における三つのRの原則と。三つのRというとスリーRということでほかの意味になるかもしれませんが、ここは全くそういった意味ではほかの意味で、代用するということ、減少、改良の促進と、こういう三つのRの原則の促進と。三点目が、動物福祉に関する表示の規格化の導入。四点目は、家畜飼養者や一般国民との動物福祉に関する情報の共有及び提供の促進と。最後の五分野目でありますけれども、それはEUの動物福祉分野における国際的な主導的立場の保持の行動計画から構成されているわけでありますけれども。

 これは、農林水産省、こういったことがEU全体で進められているという、これをどういうふうにとらえているか、あるいは今後どういうふうに我が国において対応するかという、この点についてちょっとお聞きしたいと思います。

○政府参考人(本川一善君) 御指摘のように、EUにおきましては、家畜福祉といいますか、アニマルウエルフェアというものに関しまして、これまでいろいろな段階で家畜の取扱い等に関しましてEUの指令というのを出しておりまして、それによって最低限の基準というのを定めてきております。例えば、一九九三年には屠畜段階のそういう基準を定め、それから農場段階の基準については一九九八年、あるいは採卵鶏は九九年、そういった形でそれぞれ畜種別も含めて基準を定めてきております。

 御指摘の行動計画につきましては、こういう指令の下で、二〇〇六年から二〇一〇年までに五年間、更にそういう取組を進めるために公表されたものというふうに私ども承知をしております。EUにおきましては、具体的には、例えば採卵鶏についてはケージ、かごで飼育することを禁止をするとか、あるいは分娩場を除きまして妊娠をした豚については群で飼わなければいけないとか、あるいは子牛についてもつないで飼うことを禁止するといったような、そういう意味では非常に厳しい内容を含んでいるものがあるというふうに受け止めております。

 一方、こういうアニマルウエルフェアにつきましては、EUだけではありませんで、米国でもそういう取組の兆しがございまして、米国では生産者団体によるガイドラインが定められております。それから、OIEという国際獣疫事務局、こういうところでも検討が始まっているところでありまして、私どももこういう動きをとらえまして基本的考え方を勉強会で整理をし、さらにはそこから、各畜種別にどのような基準が適切かといったようなことを具体化するべく今検討を進めているところでございます。

○加藤修一君 イギリスでは、動物福祉実行戦略ですね、多分これはEUの関係からイギリスで具体的に展開しようという話でありますけれども、ただイギリスでは、この実行戦略は、EUの関係含めて、それからイギリスはイギリスで法律を大改正して、二十本程度あるやつを一つにまとめたという大改革を行ったというふうに聞いておりまして、今、今後対処しなければいけないという答弁があったわけでありますけれども、これ法律も含めて、いわゆる動物の福祉の関係について、単なるガイドラインだけではいけないんではないかなというふうに考えておりますけれども、その辺についての農水省のお考えはどうでしょうか。

○政府参考人(本川一善君)
 御指摘のように、英国におきましては、EUの中でも非常にアニマルウエルフェアに関して進んだ意識を持っておられるところでございまして、昨年秋に、家畜のみならず、人間に飼育、管理されているすべての脊椎動物を対象とする動物福祉実行戦略が公表されております。それから、二〇〇六年には、今御指摘ありましたように、家畜やペットあるいは競技用動物までを対象としたいろいろな動物福祉に関する法律があったわけでありますが、これを一元化して規定内容の見直しを行った動物福祉法が定められているところでございます。

 そのような動きはございますけれども、私ども、先ほど申し上げたように、アメリカの取組であるとかあるいはOIEのその検討状況、こういうのを踏まえましてアニマルウエルフェアに関する基本的な考え方を定めております。その中では、風土や気候あるいは食文化等の違いを踏まえてやはり我が国独自のアニマルウエルフェアを構築していく必要があるんではないかということでございます。

 それからもう一つは、家畜の快適性を追求しながら生産性の向上が図られるような方向でやはり検討していくべきではないかといったような考え方をまとめているところでございまして、そのような基本的考え方にのっとって私どもとしては各畜種別の更に具体的な基準作りに取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

○加藤修一君 先ほど答弁の中に子牛をつないではならないとか、これはオランダの関係に入っておりますけれども、家畜福祉品質ラベルの開発ということで、自然光、空調、湿度、温度の適切な調整、清潔な床、子牛に傷が付かない畜舎の建材と構造でなければならないとかですね、我々人間にとってこの辺がまだまだ確立していない部分もあったりする中でという言い方をするとちょっと誤解を与えるような話になってしまいますけれども、何て表現したらいいかあれなんですけれども、かなり先進的な考え方だなというふうに、最初目にしたときにはそう思いました。ただやはり、先ほども申し上げましたように、サプライ・チェーン・マネジメントの関係含めてやはりしっかりとした対応が大事じゃないかなと思います。

 イギリスの法律には、飼養、飼い養う、飼養下にある動物のニーズに見合うものを提供しない場合これを違法とすると、法律違反だというんですね。あるいはさらに、動物の所有者、飼養者が自らの責任を理解し、動物のニーズに見合ったものを提供するのに必要なすべての合理的な手段を取る義務があることを、これ法律で定めていると。こういう、かなり強いなという、規制としては強いなという感じがするわけですけれども、これはこれで相当歴史の経験の中で積み重ねられてきた結果だとも思いますけれども、これについてはどういうふうに考えておりますか。どう今後取り組むことを議論しようとしておりますか。

○政府参考人(本川一善君) 確かに、EUの場合には相当そういう意識がかねてからございまして、EUの指令も出されておりますし、国によってはそういう義務付けをするような法律も定められているというふうに承知をいたしております。

 ただ、先ほども申し上げましたように、一方で、多数の家畜をやはり管理、飼養しておりますアメリカにおきましては、なかなかそういう法律による強制というのはなじまないんではないかということを基に、生産者団体によるガイドラインというものでアニマルウエルフェアを実現しようとするという動きがあることも事実であります。それから、OIEにおいてもこれからそのような具体的な議論が進められていくというふうに私ども承知しておりまして、我々といたしましては、先ほど申し上げた勉強会で考え方を整理したところでございますけれども、やはりそういう諸外国の例は例として、我が国の気候、風土に合った、あるいは食文化に合ったような形で独自のものを構築をしていきたいというふうに考えておるところでございまして、今基本的にはそういうガイドラインのような形で基準を策定できないかという方向で検討を進めているところでございます。

○加藤修一君 十分な審議を尽くして、しっかりとした対応ができるガイドラインの策定をお願いしたいと思います。

 それでは次に、環境省、環境大臣にお願いでありますけれども、我が国では日本ペット栄養学会がペットフードの安全に関する知識を教えるペット栄養管理士を養成しているわけでありまして、六百名を超えるというふうに言われております。

 人には無害でも犬、猫に有毒である、健康上支障が出る、犬、猫にタマネギを食べさせてはいけないとかチョコレートを食べさせると駄目だと。チョコレートは好きな人はたくさんおりますけれども、ついでに犬、猫にやってはいけないということに当然なるわけなんですけれども、これは、種の多様性という言い方もできなくはないと思います、人間という種と犬と猫の種とでは違うと。ですから、人間にとって健康な食べ物であるかもしれないけれども、ほかの犬、猫にとっては害になる、有害になると。

 しかし、我々こういうことは余り分かんない、我々というより私は分かんないんですけれども、初めて今回タマネギが、あるいはチョコレートが犬に害になるという、簡単に食べさせるというわけにはいかないんだなと、何でもですね。我々が食べているからいいんだというふうにはならない。ですから、これはやはり調査研究をして、犬、猫にはこういうものを食べさせてはいけないと。昔よく、するめを猫に食べさせると腰が抜けたような状態になってしまうということも経験的にありました。だから、猫にするめを食べさせてはいけないんだなと私も分かっておりますけれども、そういう、ペットが二千五百万を超えるぐらいの数になっているわけでありますので、やはりペットを飼う方にもそういう情報がしっかりと伝わるように、あるいはまだ分かんないケースもたくさんあると思いますので、そういったことについてしっかりと調査研究をして、最終的には啓発、周知徹底ができるようにしたらどうかなと、こんなふうに思いますけれども、大臣のお考えをお示ししていただきたいと思います。

○国務大臣(鴨下一郎君) 今委員が御指摘の例えばタマネギだとかチョコレート、どういうような言わば病態生理で犬、猫にどんな影響を及ぼすのかという話、少し調べさせたんですけれども、なかなかそれがはっきりと因果関係といいますか、まだ解明されてないようであります。ですから、タマネギなんか与えると貧血になるとか血栓を起こしやすくなるとか、こういうようなことをおっしゃっている人もいるようでありますけれども、具体的に、じゃそれがどういうふうになるのかというのは分かっているようで分かってない部分もあるようでありますので、しっかりと調べたいというふうに思います。

 また、それ以外にも、今御指摘の、じゃ、するめが本当に猫の腰が抜けるのかという話については科学的な根拠があるのかないのか、こういうようなことも含めて、今のように本当にある意味でペットにいやされている方々も大勢いるわけでありますから、そういう人たちが善意で愛しているペットに与えたものが結果的にペットの安全を損ねてしまうと、こういうようなことになってはいけないわけでありますから、そういう観点から申し上げますと、これから、環境省だけでは進められない部分もありますので、農水省とも連携をしまして、具体的にどういうふうに問題が起こるのか、そして何がいけないのかと、こういうようなことをできるだけ明確にして飼い主の皆さんに知っていただくような、こういうようなことを努力をしたいというふうに思っております。

○加藤修一君 私が手元に持っている資料によれば、メチルキサンチンというのが、化学物質でありますけれども、チョコレートに含まれていると。人間が少量摂取すると、それは気分が高揚するという話でありますけれども、犬が大量に摂取すると、筋肉の震えが生じ、けいれん、発作を引き起こす場合もある、だから犬にはコーヒーを飲ませるのもいけないと、こういうふうに断言的に書いてございます。比較的少量でも吐き気や下痢につながると、こんなふうに書いておりまして、意外なことが、まあ因果関係は明確に分かっているわけじゃないかもしれませんが、そういうふうに言われていることを考えますと、ペットを飼っているときによほど注意しないといけないんだなという思いをいたしました。

 そういった意味では、農水省と連携してという話でございますけれども、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、並木大臣政務官にお願いしたいわけでありますけれども、ペット動物の安全・健康保持に関するガイドライン、これを作成するというふうに聞いているわけですけれども、人と動物が共生する社会の実現にそういった意味では寄与するとしておりますが、これ、先ほども申し上げましたように、全国で二千五百万匹に及ぶペットがいるということで、それに対してどういうふうに周知徹底するかと。長寿医療制度は周知徹底がうまくいかなかった部分も非常に大きいと思いますが、やはりこういった面についても、ペットだからという話じゃなくて、しっかりと周知徹底すべきだと思いますけれども、どういうふうにお考えでしょうか。

○大臣政務官(並木正芳君) 二千五百万匹飼われているということは、それだけ飼っている方が当然多いということでございますから、環境省として二十年度内にガイドラインを作成していくわけですけれども、先生の御趣旨を踏まえて、これはできるだけ分かりやすい内容にしなきゃいけないなというふうに心掛けてこれから作業を進めていきたいというふうに思っています。
 また、普及についても、環境省だけでは予算効率とかそういう面、大変、二千五百万匹のその飼い主に周知徹底するというのは大変な予算も掛かると思いますので、農林水産省とも協力しまして、ペットフード工業会、こうした事業者、またペットショップあるいは愛護団体、また都道府県が愛護行政をつかさどっておりますので、そうしたところと協力して、できるだけ多くの人に伝わっていくように順次今年度から始めていきたいと、そういうふうに思っております。

○加藤修一君 よろしくお願いいたします。

 我が国では、ペットフード公正取引協議会が不当景品及び不当表示防止法に基づいてペットフードの表示に関する公正競争規約を策定しているわけでありますけれども、安全保障検定がなされたという形でペットフードに対して表示ができないものかと。そういう表示があればより安心して購入できそうに思っておりますけれども、この辺についてどのようにお考えですか。

○政府参考人(櫻井康好君) 安全保障検定の件でございますけれども、委員御指摘のとおり、多くのペットフード製造業者、さらには輸入業者が加盟しておりますペットフード公正取引協議会が、公正な競争を確保することを目的といたしましてペットフードの表示に関する公正競争規約というものを策定しておりまして、表示の基準として相当程度普及をしているということだろうと思います。

 一方、本法案におきましては、ペットフードにつきまして必要な安全性を確保するということを目的としておりますので、法律に基づく基準を満たさないペットフード、つまりは愛がん動物の健康を害するようなペットフードの製造、輸入、販売というものは禁止されることになります。したがいまして、本法案が施行された後におきましては、対象となるペットフードはすべて国が定める安全基準に適合するはずでございます。あえて基準を満たして安全であるという表示を政府が制度化するということは不要ではないかと考えておるところでございます。

 政府といたしましては、専門家の意見を聴きながらペットへのリスクに関する科学的な知見を収集して、必要かつ適切な基準、規格を設定してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○加藤修一君 公正取引協議会に入っていないアウトサイダーもいることでありますから、法律ができれば法律を破る者がそれは処罰されるのは当然のことでありますけれども、そういったところにも周知徹底できるように是非頑張っていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問でありますけれども、アメリカでは連邦食品医薬品化粧品法に基づいてペットフードを含む飼料について法規制が行われているわけでありますけれども、我が国におきましても、食品衛生法に基づくいわゆるより強い法規制を考える必要があるんではないかなと、そんなふうに考えますけれども、この辺についてはどうお考えでしょうか。

○政府参考人(櫻井康好君) 御指摘のように、アメリカの連邦法におきましては食品医薬品化粧品法というのがございまして、汚染された食料とか飼料、あるいはラベルに不備のある食品や飼料というものの流通を規制するなどの規制をしているというふうに承知をしておるところでございます。

 一方、我が国では、食品、医薬品あるいは飼料、それぞれその規制を行う目的、あるいはこれに応じて必要とされております規制事項の内容が異なるということから、別の法律で規制を行っているところでございます。この法律案は、規制目的がペットの健康の保護ということで、国民の健康の保護を目的とする食品衛生法とはそういった目的が異なることから、別の体系で新たな法律の制定を提案をさせていただいているところでございます。

 もちろん本法案の運用に当たりましては、専門家あるいは関係者の意見を踏まえることとして、ペットフードに十分な安全性の確保を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

○加藤修一君 これが最後になりますけれども。

 法案の中で、愛がん動物用飼料の基準又は規格を定めると、こういうふうに書いてありますけれども、ペットフード工業会の自主規制との違い、これはどういう違いになるのか。あるいは、飼養動物の安全・健康保持推進事業におけるガイドラインとの違いはどういうことであるのか。これはどういうふうな具体的な考えがありますか。

○政府参考人(櫻井康好君) この法案に基づきます基準あるいは規格は、国内外の科学的な知見とか諸外国の規制状況、あるいはペットフード工業会の自主基準、御指摘の自主基準なども参考にしながら、審議会の意見を聴いた上で省令で定めるという予定にしております。

 この基準、規格は法律に基づく基準、規格でございますので、当然、これに適合しないペットフードの製造、輸入、販売は禁止されると。違反した場合にはこの自主基準、工業会の自主基準とは異なって強制力を有する、つまり罰則を伴うということになるものでございます。

 一方、委員御指摘の飼養動物の安全・健康保持推進事業のガイドラインにつきましては、これはあくまで飼い主を対象として普及啓発を図るというものでございまして、本法案はペットフードの製造業者、輸入業者及び販売業者を規制の対象とするということで、本法案とそのガイドラインとでは対象が異なっているところでございます。

 以上でございます。

○加藤修一君 終わります。

(以下略)

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