第126回国会 参議院文教委員会 2号 平成05年02月23日

○橋本敦君 (中略)

 次の問題は、大学の研究施設に関する問題でありますが、昨年の暮れから今年にかけまして京都大学の実験用飼育ラットが、新聞にも大きく報道されましたが、腎症候性出血熱、HFRSというようでありますが、これに感染したという問題が発生をいたしまして、京都大学で実験のために飼育されておりました二千匹余りのラットを焼却処分せざるを得ないという事態が発生いたしました。これはもう研究にとっても大変なやはり貴重な試料の損失にもなるし、研究発展の阻害にもなりますし、職員の健康安全という点からも問題ですし、非常に重要なことでございましたので、早速京都大学に駆けつけまして、私どもも調査団をつくって調査をしてまいったわけでございます。

 そのときに文部省にも問題を指摘したんですが、一つはこの感染の起こった原因は一体どこにあったかを徹底的に調査してもらいたい。もう一つの問題は、京都大学だけではなくて、実験用ラットは全国の大学研究機関がいろいろたくさん飼育しておりますから、同じような汚染の心配があっては大変なので、そういった問題についても文部省としてよく検討してもらいたいということを申し入れてまいったんですが、昨今の新聞によりますと、京都大学以外にもやはりこの抗体陽性ラットが見つかったという報道が出ておりましたので、いよいよこれは全国的に大事だなということを痛感しておりますが、文部省は現状をどのように把握されておりますか。

○政府委員(長谷川善一君) 先生御指摘の京都大学のHFRS感染ラットの問題でございますけれども、京都大学でこの感染ラットが発見され焼却処分が行われた後でございますが、文部省から国立大学動物実験施設協議会、それから公私立大学の実験動物施設協議会双方に対しまして実験動物の適切な管理、それから実験従事者の安全等について万全を期すように注意喚起をいたしまして、関係大学にこのことは周知徹底されたわけでございます。

 大学ではこれらの注意喚起を受けた後に、順次検査を行う施設を持っております大阪大学の微生物病研究所あるいは実験動物中央研究所、札幌医科大学等々に検査の依頼を行っているわけでございますが、検査の結果、現在までに大阪大学の微生物病研究所の検査分の中で数大学で抗体価の比較的高いラット、陽性と断定しているわけではございませんが、疑陽性のラットが発見されたものと承知いたしております。これにつきましては、二月の十四日に報告を受けております。

 文部省の方といたしましては、既に一月中に専門家の意見の聴取を終えまして、今後とも引き続きまして動物実験施設協議会と連絡を図りながらそれぞれの施設の飼育管理状況の確認、安全確認等々を行うという姿勢でございます。十八日、先週でございますけれども、実はこういう症例といいますのは昭和五十六年ごろ各地において起こりまして死者まで出たという例がございますので、昭和五十六年に流行性出血熱予防指針というのを定めて各大学に配っておるわけでございます。この中に注意事項はすべて喚起されておるわけでございまして、この予防指針のさらなる徹底を図るという趣旨のもとで通知を行っておるわけでございます。

 当初、感染経路のお話がございましたけれども、現在の状況では感染経路の特定がまだできていない状況でございます。

○橋本敦君 今おっしゃるように、感染経路の特定ができてないというところが非常に将来的にもまだ心配が残ってくる問題があるんですよね。京都大学でも実験施設を見学させていただきましたが、京都大学の動物実験施設は規模の面でも約二千匹のラットを入れられるということで全国大学の中でも一、二の施設ですが、それでも医学部の各部門の研究のためには数が足りませんで、中央実験施設以外のそれぞれの研究部門でも、その施設以外でもラットを飼っている。ところが、そのラットを飼っている場所が中央実験施設のように完璧に管理されるかというと、なかなかそうはいかないという施設上の問題もありまして、野ネズミが入ってくるという心配が一切ないかというと、そうとも言い切れないというようなこともありまして、そういう意味では施設の安全性確保が非常に一つは大事だと。

 それからもう一つは、定員削減等によってこの問題での職員の充実体制というのが非常に難しくて、このラットの管理、飼育について正規の職員じゃなくてアルバイト職員に頼っているという状況も一部あるということも伺いました。しかし、そういう意味では安全管理という点が大学の責任でなかなかやりにくい。

 そこで、私は文部省にお願いしたいのは、感染経路を突きとめるための実態調査をこれからも厳しくやっていただくことが一つ。それからもう一つは、こういう実験施設の設備の安全充実にそれなりの資金を必要としますから援助していただくということが一つ。それから、動物実験の管理に当たる専門的技官あるいは専門的職員の増員を図っていただく必要があるということが三つ目。それから、先ほどおっしゃったように、職員で亡くなった方も出た昔の経験もあるというお話もそのとおりでありますから、職員の安全を確保するために安全点検として研究従事者にこの抗体検査を定期的に実施することを制度化していく、こういった面で総合的に、研究の振興は大事でありますから一層安心した研究が体制的にできるようにこの際思い切った施策を進めていただきたい、このことを要望したいんですが、いかがですか。

○政府委員(長谷川善一君) 先生御指摘の点でございますけれども、現在文部省では動物実験施設、集中的に幾つかの動物をまとめて管理いたしまして、よい環境のもとにそれを飼育するというような施設を逐次置いてきておるわけでございます。

 今回のラットの感染につきましては、残念ながら京都大学の方は動物実験施設そのものが汚染をされておったという状況でございますけれども、そのほかの機関で出ております例もほとんどは古い大学などでは特にこういう動物実験でそれぞれの教室の中で動物飼育を行っているというケースがございまして、そういうものがかなりこういった何といいますか発症を起こしておるところでございます。

 現在、動物実験施設を逐次充実していこうという方針でございまして、医学部を持っております国立大学四十二大学ございますけれども、三十九の大学にこのような施設を設けております。平成五年度にも琉球大学につくりますので、四十の大学になるわけでございます。できるだけ動物実験施設を充実させまして安全な管理体制をつくる。

 それから、御指摘の定員等の配置でございますが、逐次、定員状況が非常に厳しい中でやってまいっておるわけでございますけれども、今後ともなお一層努力していこうと考えておる次第でございます。

 それから、職員の定期健康診断あるいはこういった感染に関する検査等でございますけれども、これにつきましては、それぞれ附属病院あるいは保健管理センターというようなところを持っておる大学でございますので定期的にやるようにということで予防指針でも示しておりまして、その励行を図るように指導してまいりたいと思っています。

○橋本敦君 大臣、お聞きのように、この問題は全国的に非常に医学の進歩と発展の上からも職員の安全からも大事な問題になってまいっておりますので、文部省としても鋭意この改善と今後の安全な研究の発展のために大臣としてもお力添えいただきますようにお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。

○国務大臣(森山眞弓君) 御指摘のとおり、各大学における実験動物についていろいろな問題があるということを今よくわからせていただきました。

 それだけではなくて、大学における研究施設、その管理状況というものにはいろいろな問題がございます。これがようやく最近世間の関心を集めておりまして問題意識も非常に高まっておりますので、文部省といたしましてはこの実験動物の問題も含め、研究施設、その管理状況等の改善のために努力してまいりたいと存じます。

○橋本敦君 終わります。

(以下略)

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