(AVA-net会報 2005/7-8 113号掲載)

 

2005年5月18日~20日 タワーホール船堀
※現在AVA-netは存在しません。吸収合併した団体についても活動を支持していません。

 
■動物実験産業

まず、抄録集は布製のカバンに入ったものを手渡しされ、たくさんのスポンサーがついていることを痛感しました。各社の展示などをまわっている際に、理化学研究所のバイオリソース・プロジェクトのたいへん分厚い冊子を手渡され、「お金あるんだなぁ~」と実感。動物実験がいかに産業的に巨大なものに支えられているか、こういった学会で行われている展示会なども行ってみることをオススメします。マウス用ケージの見本にかわいいぬいぐるみが入れてあって、理解に苦しんだりします。

■動物をあらゆる病気に

当然ですが、実験学会の主流はこれです。新しいモデル動物、新しいデータ、数多くの実験の結果が発表されています。動物福祉やエンリッチメントなどの話題はけっして中心ではなく、最後につけたしのようにちょこっとだけなのです。

■動物実験と森林破壊

動物福祉の観点から金網の床をやめ、木材チップに切り替えた場合、ひとつ気になるのは、その大量の木材はどこから来るのか?ということです。繰り返し洗って使う布製の床敷の展示と発表があり、エンリッチメントとしても気になりました。(ラットもマウスも、布の中に入り込むのが好きなんです)

■健康食品などに対しても

すでに人間が摂取しているようなもの、特に代替療法的なものに関しても、動物を使って試験をすることが理解できません。なぜか一般市民向け公開フォーラムも大豆・和食礼賛的な内容だったようで、「動物実験は健康のために必要だ」ということを広めたいのだなぁ~と受け止めました。

■動物実験の問題点

時間の関係上参加することはできなかったのですが、実験施設の改善などをテーマにしたシンポジウムや、感染症、実験動物の性差をテーマにしたシンポジウムなどもありました。比較ゲノム学の発表でも、げっ歯類の染色体が意外にヒトとは離れている話などもでており、実際には動物実験の至らぬ点は、実験をしている人たちみずからが知っているのではないかと感じました。


Pick up!

ポスター発表:
「動物の輸入届出制度」の国立大学法人等における動物実験への影響


今年9月1日より「動物の輸入届出制度」が始まりますが、これに関連したポスター発表を今回の学会で目にしました。国立大学法人動物実験施設協議会バイオセーフティー委員会が、会員大学に対し、過去2年間の動物輸入実績をアンケート調査した結果をまとめたものです。

■実験動物も除外されない

「動物の輸入届出制度」は、厚生労働省が人と動物の共通感染症対策として打ち出したもので、いわゆる感染症法および同法施行規則により実施されるものです。

現在検疫対象となっている動物と輸入禁止の動物を除き、げっ歯目、ウサギ目、その他の陸生ほ乳類、生きた鳥類、げっ歯目・ウサギ目の死体、以上すべてが輸入時に届出対象となるのですが、ここでのポイントは、決して実験用動物も適用除外とはならないということです。

■正確に取れない実験動物の統計

当たり前のことなのですが、実験動物に関する統計が法律上定められているEUなどとは違い、日本では正確な実験動物の統計というものは存在していません。今回発表されていた輸入動物数も、決して回答率100%ではないアンケート調査にもとづくものでした。

さらに驚いたのは、「施設等において把握できる範囲内のみ」として回答していた施設が圧倒的に多かったことです。つまり、実験動物の入手先について、その施設自身も正確なデータを持ち合わせていないようなのです。

■結果と研究者の意識

アンケートに答えた39施設において、2003年に動物を輸入した件数は209、頭数は2634、2004年は件数226、頭数3174だったそうです。輸入先としては、最も多いのはアメリカで、ほとんどがアメリカから来ていると言ってもいい数字でした。動物は、マウス、ラット、ハムスター、サルで、マウスの3分の1~2分の1は遺伝子組み換えマウスです。

また、制度の影響としては、実験計画の遅延をあげているところが最も多く、結論として、円滑な輸入が可能となる措置を講じてほしいといった要望事項を掲げています。

しかし実際には、基準に適合している輸出国指定の繁殖施設からであれば、輸入は十分可能なのであり、ことさらに実験動物だけを特例にしたいという研究者たちの意識には改めて問題を感じました。

※後に厚生労働省は実験用について多少の便宜を図ってしまいました。

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