科学技術ガバナンス (未来を拓く人文・社会科学シリーズ)

科学技術ガバナンス (未来を拓く人文・社会科学シリーズ)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東信堂
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 単行本

事業仕分けの話題などもあり、科学予算に注目が集まっているようで・・・この本を読んでみました。
「研究の自由」というのは、しばしば使われる言い回しですが、実際には科学技術研究には、強調され気味な恩恵とは裏腹に、既知・未知のリスクは存在するわけですよね。社会の側がサイエンスをどのようにマネジメントしていけばいいのかということを軸に書かれた本です。
そういう関心から手にとった本だったのですが、しかし偶然にも(いや、偶然ではなく?)動物実験規制の話も盛り込まれていました。これはかなりウレシイ。科学と倫理とか、科学と社会といった話が出るときに、動物実験というのは置き去り気味な話題のような気がしていたので。この話題が、広く科学技術分野に関心のある人の目にとまるというのは嬉しい。
その章を書いているのは、『動物実験の生命倫理』の大上泰弘さんで、ここでも興味深い話を書かれています。イギリスで受けた動物実験実施者の資格取得のための講習が、人類の思想史を教えるところから始まっていて、問題の本質は何かを考えさせるものだった、とか。
あとは、こんな話も。
多くの先進国のように、人間の科学的行為である動物実験を厳密に規定し、その活動を規制する法律はないのである。筆者が海外で動物実験の規制について聞き取り調査をするなかで、海外から日本の動物実験規制の状況を見ると、日本には動物実験を詳細に規定した法律がないので、適正に実施できているかどうかわからないと指摘されたこともある。
(このあとに、学術会議の詳細指針が今はあるという話をされているのですが、でも、あれもあくまで「自主的」なものでしかなく、守られているかどうかはまったくうかがいしれないものでしかないと思います・・・)