産総研・カルタヘナ法と税金のムダ
産業技術総合研究所(産総研)で遺伝子組換えマウスの不適切な取扱いと実験施設の設計不具合で35億円のムダがあった件についてのまとめページです。
2008.08.17最終更新
2015.10.14 リンクを修正
流れ:
2006年5月 | 文部科学省へ、産業技術総合研究所が遺伝子組換えマウスを適切な拡散防止措置を執らずに使用等を行っているとの情報提供あり |
2006年6月14日 | 谷博之参議院議員が質問主意書提出 産総研のSPF施設が施工不具合によってまったく使われていなかったムダ問題も指摘。 |
2006年6月16日 | Biotechnology Japan 記事 |
2006年7月5日 | 文部科学省が産総研を現地調査 |
2006年7月27日 | 文部科学省が産総研を現地調査 |
2006年7月27日 | Biotechnology Japan 記事 |
2006年8月23日 | 産業技術総合研究所が原因及び再発防止策を取りまとめ、文部科学省に提出 |
2006年9月8日 | 文部科学省から「遺伝子組換え生物等の不適切な使用等についての厳重注意について」公表 共同通信が報道 産総研も文書公表 |
2006年9月22日 |
「週刊金曜日」に記事「内部告発 産業技術総合研究所(つくば市) ずさんな動物実験と35億円のムダ遣い」(太田宏人) |
2006年11月7日 |
産総研が調査報告書を公表 |
2006年11月8日 | 朝日新聞が調査報告書について報道 |
2007年1月1日 | 「週刊金曜日」の記事を書いた太田宏人さんがサイトに取材メモup 「人間性を持たない研究開発が、人間に益することはない」~産総研35億円事件の取材メモ~ |
関連資料:
産総研、新築したSPF動物飼育施設の3年間未使用が発覚、
民主党・谷議員が責任追及の質問書提出
2006年6月16日
続報、産総研SPF動物飼育施設の未使用の理由~その1
「国交省が選んだ設計事務所に不信感生じた」
2006年7月27日
続報、産総研SPF動物飼育施設の未使用の理由~その2
「専門家不在の設計作業、国交省への訴訟も考えた」
2006年7月27日
【文部科学省】 2006年9月8日
遺伝子組換え生物等の不適切な使用等についての厳重注意について(リンク切れ)
この度、独立行政法人産業技術総合研究所及び国立大学法人琉球大学において遺伝子組換え生物等の不適切な使用等があり、文部科学省として両法人に対し厳重に注意しましたので、お知らせします。
1.
文部科学省においては、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換え生物等の使用等を行っていた、独立行政法人産業技術総合研究所及び国立大学法人琉球大学について、現地調査を行うとともに、その経緯等について報告を求めてきたところ、別添1及び別添2のとおり原因と再発防止策が取りまとめられました。
2.
報告によれば、いずれの機関においても、法に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換え生物等を使用していましたが、担当者等の法令に関する知識が不十分であったことが原因であり、実際には遺伝子組換え生物等に対する拡散防止措置が執られており、遺伝子組換え生物等の拡散には至っていません。
3.
文部科学省では、報告を受け、独立行政法人産業技術総合研究所及び国立大学法人琉球大学に対し、再発防止のための措置を徹底するよう文書で厳重に注意しました。
4.
また、文部科学省としては、担当者等の法令に関する知識が不十分であったことは、法令の趣旨の周知が十分でなかったことも原因の一つであると考えており、法令の理解及び遵守について改めて周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
独立行政法人産業技術総合研究所における不適切な遺伝子組換え生物の使用についての概要
1. 経緯
平成18年5月、当省に対し、産業技術総合研究所が遺伝子組換えマウスを適切な拡散防止措置を執らずに使用等を行っているとの情報提供があった。これを受けて、当省より産業技術総合研究所に対し、事実関係について調査を行うよう指示した。
その結果、産業技術総合研究所の一部の施設において法令に基づく適切な措置が執られていないことが明らかとなった。
これらを受け、産業技術総合研究所において原因及び再発防止策を取りまとめ、当省に対し本年8月23日に提出された。
2.
当省の対応
平成18年7月5日及び7月27日に現地調査を行い、以下の点を確認。
1 一部の施設において、遺伝子組換え動物の飼育等を行っている旨の表示を実験室の入口に行っていなかった。
2 一部の施設において、遺伝子組換え動物と一般の動物の識別が実験従事者間のみで可能な手法により行われており、掃除等を行う管理業者が識別することが可能な手法を用いていなかった。
3 一部の施設において、遺伝子組換え動物の逃亡防止のための設備を設置していなかった(ただし、遺伝子組換え動物の逃亡は起きていなかった。)。
4 該当する不適切な措置の是正を全て行い、7月5日の調査時点において、法令に基づく適切な措置を講じていた。
3.
原因
1 微生物を用いたP1レベルの遺伝子組換え実験では、表示を行うことが求められていないため、動物を用いたP1Aレベルの遺伝子組換え実験でも同様に表示の必要がないと誤解していた。
2 掃除等を行う管理業者が遺伝子組換え生物等の使用者であるという認識がなかった。
3 実験動物が動物飼育施設から外部に逃亡するための逃亡防止措置が、別途執られていたため、省令で求める拡散防止措置が必ずしも必要ではないと認識していた。
4.
再発防止策
1 遺伝子組換え実験関係者全てを対象とした教育訓練を定期的に開催する。
2 産業技術総合研究所内の安全管理部局(環境安全管理部)が中心となり、各事業所に設置された安全委員会、組織全体の安全委員会の連携を強化することで、法令遵守に係る体制の強化を図る。
3 安全管理部局が組織内を定期的に調査する巡視活動を行い、違反事例が生じないよう指導監督する。
組み換え生物を違法使用
文科省が2機関を厳重注意
共同通信 2006年9月8日
[概略]
文部科学省が厳重注意をした件の報道。
「産総研では、生物機能工学研究部門などが第6事業所で、必要な表示をせずに
遺伝子組み換えマウスを9つの部屋で飼育。うち一部屋の入り口には、マウスが
逃げるのを防止する板を設置していなかった」
【産総研プレスリリース】
遺伝子組換え生物等の使用等についての文部科学省からの厳重注意について(リンク切れ)
平成18年9月8日
本日、当研究所は、遺伝子組換え生物等の使用等についての厳重注意を文部科学省研究振興局長からいただきました。
これは、当研究所が「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換え生物等の使用等を行ったことに対するものです。この原因は、担当者等の法令に関する知識が不十分であったことによるものですが、実際には遺伝子組換え生物等に対する拡散防止措置が執られており、遺伝子組換え生物等の拡散には至っていないことが文部科学省によって確認されています。
今後、当研究所は、この厳重注意を真摯に受け止め、再発防止対策のために講じる措置を徹底し、遺伝子組換え生物等の使用等を行う場合には、再びこのような問題を引き起こさないよう以下のような再発防止策を策定して、取り組んでまいります。
<再発防止策の概要>
1. 環境安全管理部を中心に、産総研動物実験委員会、事業所動物実験委員会および組換えDNA実験安全委員会の連携を整理・強化し、法令遵守の体制を強化・整備します。
2. 遺伝子組換え実験に関与する者、および関係する管理関連部門の担当者の全てを対象とした教育訓練を定期的に実施します。
3. 環境安全管理部を中心とした所内の巡視・点検活動を整備し、定期的に関係実験室の巡視を行い、法令遵守状況の把握を行い違反事例が出ないよう指導監督を行います。
(別添)本件の概要 [ PDF:55KB ] (文部科学省プレス発表資料)(リンク切れ)
遺伝子組換え生物等を使用する実験等に係る調査結果及び対応に関する報告について(リンク切れ)
2006年11月7日 発表
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は、産総研における遺伝子組換え生物等を使用する実験等に関する調査を行い、その結果をとりまとめた。
産総研における遺伝子組換え生物等を使用する実験等に関しては、産総研つくば中央第六事業所において平成17年度まで実験動物の飼育管理業務に従事していた動物飼育管理業者等により、産総研における不適切な動物飼育等に関する問題の指摘が平成18年2月から5月にかけて行われた。
産総研は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(以下「カルタヘナ法」という。)に定める拡散防止措置の実施状況について、6月1日から7月7日にかけて実地調査を実施した。
7
月5日及び27日には文部科学省による現地確認が行われ、産総研においてカルタヘナ法に定める拡散防止措置の一部が講じられていなかったことが確認されたため、同省から8月15日付け文書にて産総研に対し、経緯、原因及び再発防止対策について報告するよう求められた。これに対し、産総研から8月23日付けで原因、再発防止対策等について報告したところ、9月8日付け文書により文部科学省から産総研に対し厳重注意が行われた(同日、文部科学省からプレス公表済み)。
以上の経緯を踏まえ、産総研は、カルタヘナ法等の遵守の徹底を図るとともに、説明責任を果たす観点から、本報告書をとりまとめた。
別添資料1
遺伝子組換え生物等を使用する実験等に係る調査結果及び対応に関する報告書(概要)
(1)報告書の目的
本報告書は、産総研における組換え生物等を使用した実験等に関して、関係法令の遵守の徹底を図ることを目的にしたものであり、実地調査結果に基づいて拡散防止措置が不十分であった原因を分析し再発防止策を検討したものである。
なお、本報告書の調査結果と再発防止策の多くは、研究に関するカルタヘナ法の所管官庁である文部科学省に8月23日付けで報告済みであり、報告をうけた文部科学省は、現地確認を実施して拡散防止措置が不十分だったことが確認された事項について、9月8日に産総研に対して厳重注意を行った。(文部科学省よりプレス公表済み)。
(2)実地調査結果の概要
遺伝子組換え生物等の使用において、カルタヘナ法で規定された拡散防止措置が不十分な主な事例が以下のとおりあった。
1.
以下の実験実施場所で実験室への入室制限を示す表示や組換え生物等の保管場所を示す表示がなかった。
・北海道センター(北海道札幌市)
・つくばセンター 中央第二・第四・第五・第六・西事業所(茨城県つくば市)
・臨海副都心センター(東京都江東区)
・関西センター(大阪府池田市)
・四国センター(香川県高松市)
・東京本部八王子サイト(東京都八王子市)
2. 一部の組換え生物等を使用した実験室等の入り口における「組換え動物等飼育中」等の表示がなされていなかった。<つくばセンター>
3. 組換え動物(マウス)を使用した一部の実験室にねずみ返しが設置されていなかった時期があった。また、組換え生物(微生物)を使用する実験室において、実験中に扉が開放されていた事例があった、<つくばセンター>
なお、拡散防止措置が不十分な事例があったが、今回の調査の結果、組換え生物等が施設外に逃亡した事実等はなかった。
(3)拡散防止措置の実施が不十分であった原因
カルタヘナ法等を遵守するための内部規程、体制を整備していたものの、教育・訓練が体系的に実施されていなかったことから関係者の知識が不足していたこと、法令遵守についての点検体制が不十分であったこと、関係部署の相互連携が不十分であったこと等から、結果として拡散防止措置が不十分であったと考えられる。
(4)主な再発防止策
* 教育・訓練を体系的に実施し、関係者の知識を十分にするため、産総研全体を対象とした教育訓練・講習会の実施(実験計画書等の申請審査時に講習会等の受講の有無の確認など)、管理部門における法令等の情報収集とその所内への周知徹底などを図ること等。
*
法令遵守について点検確認を十分に行うため、組換えDNA実験等に関する実地調査、管理部門における相互連携を緊密にし、それぞれ関連する事項の相互監視体制の構築などを図ること等。
遺伝子組換え生物等を使用する実験等に係る調査結果及び対応に関する報告書 [ PDF:360KB ]
プレスリリース修正情報
表示義務違反実験実施場所の訂正(2006年11月7日 17:00)
【修正前】 ・つくばセンター 中央第二・第四・第五・第六・西事業所(茨城県つくば市)
【修正後】 ・つくばセンター 中央第二・第四・第六・西事業所(茨城県つくば市)
遺伝子組み換え生物実験、拡散不防止事例を報告 産総研
朝日新聞 2006年11月8日
[概略]
産総研が調査報告書をまとめ、ネット上にも公開した件の報道。
つくばセンターの組み換えマウスを使う実験室で、ねずみ返しが設置されていなかった例があった。逃微生物実験中に扉が開いていた実験室もあった、など。