東京理科大学で実験動物の不適切な取扱い
2007.8.17最終更新
東京理科大学で起きていた実験動物の不適切な取扱いについて、2004年から2005年にかけて各種報道がありました。表に出てきたものは、カルタヘナ法(遺伝子組換え生物規制法)違反についてのものが目立ち、文部科学省から厳重注意を受けたのも同法違反についてですが、実際にはそれは、日々の実験動物の取扱いが不適切であるところから派生した問題だったのではないかと感じています。
詳細は、谷博之参議院議員による2度にわたる国会質問に詳しいですが、実験動物の逸走、過密飼育、術後の不適切な処置など、本来であれば実験動物福祉上の問題からもなんらかの行政的な対応がとられるべき点が、日本の法制度では手が出せない(し、国も自治体もやる気がない)という実態に非常に驚かされました。
この一連の問題については、2005年の動物愛護法改正のために開かれていた民主党ワーキングチームの中間報告にも取り上げられ、動物実験施設への具体的な規制がいよいよ日本でも実現するのかも! と一時は思いました。
けれども、実験施設の届出制や立ち入り検査といった具体的な施策は法律に盛り込まれず、くやしい結果に。
東京理科大学の動物実験施設に入ってた実験動物管理業者による勇気ある告発がきっかけとなり、研究者の意識の低さと、実験動物管理に関する無知がさられだされた一件でしたが、問題点を指摘した業者は東京理科大との契約を打ち切られ、同大がホームページに掲載していた謝罪文も早々にサイトから消え、まるで何事もなかったかのように動物実験の世界も続いています。
この問題の裏には、実際のところ、研究者(個人)による業者いじめの問題があるのではないかと思います。研究の世界では(特に医学研究の世界にその傾向が強いのではないかと想像するのですが)、教授が絶大な権力をにぎり、他がさからうということができない世界ができあがっているように感じられます。そのピラミッド構造の中で、実際に実験動物の世話をしている技術者の人たちが、機関のやり方に疑問を持っても意見を言うことができないというのでは、いつまでたっても状況は変わりません。
実験動物たちは、そのピラミッドのもっと下、一番底辺にいるのです。勇気ある告発が生かされる社会になることを願いつつ、まとめページを作りました。
参考リンク:
- 過密飼育、共食い、乱繁殖など。
そのほかにも、留学する研究者が動物を施設に放置していったり、本来は研究者自身か獣医師が行うべき安楽殺を技術者に押し付けていたりという話を伺いました。
報道などから再構成した一連の流れ:
1997年1月~ 2001年3月 |
東京理科大学の免疫実験で、遺伝子組換えマウス約30匹を拡散防止措置のない普通の研究室で飼育。 (内規違反) |
1999年9月~ 2000年2月 |
東京理科大学のアレルギーの研究で、遺伝子組換えマウス約15匹を普通の研究室に持ち出して飼育。 (内規違反) |
2003年9月 | 「実験用マウスが逃げている」との匿名電話→保健所の調査へ |
2004年2月16日 | 野田市環境審議会で「理科大において行われている実験動物の在り方の問題点」に関して質問 |
2004年2月19日 | カルタヘナ法施行 |
2004年 〃 | 東京理科大学、生命科学研究所実験動物飼育管理等に係る特別調査委員会を設置 |
2004年2月~4月 | 東京理科大学薬学部教授が他大学の共同研究者から預かった組換えマウス15匹を学内安全委員会に実験計画書を申請しないまま飼育。法令で義務づけられている表示をせず飼育。 |
2004年4月30日 | 東京理科大特別調査委員会が中間報告書 |
2004年5月18日 | 共同通信が記事を配信、19日-20日各紙新聞報道・NHKニュース東京理科大で遺伝子組換えマウスの取扱いで内規違反が判明、2名処分との内容 |
2004年5月11日 | 谷博之参議院議員が文部科学省に国会質問 |
2004年5月13日 | 谷博之参議院議員が厚生労働省に国会質問 |
2004年5月20日 | 東京理科大学が謝罪文 |
2004年5月25日 | 野田市へ大学が調査結果報告 環境審議会でギョウチュウ汚染の話題 |
2004年6月29日 | 野田市議会定例会にて越智邦子議員が質問 |
2004年9月14日 | 野田市議会定例会にて大橋広志議員が質問 |
2004年12月1日 | 民主党 動物愛護・外来種対策ワーキングチーム(WT)中間報告にもこの一連の件について記載 |
2005年1月11日 | 東京理科大学が文部科学省に調査結果の報告 |
2005年1月18日 | 東京理科大学が謝罪文公表、 各紙が記事 13人処分との内容 |
2005年1月20日 | 文部科学省が東京理科大へ、法令に基づく立入検査 |
2005年2月22日 | 東京理科大学が実験施設の設計費不払い訴訟を起こされる |
2005年3月9日 | 実験施設の設計費不払い訴訟第1回口頭弁論 |
2005年3月10日 | 文部科学省が東京理科大へ、法令に基づく立入検査(2回目) |
2005年4月8日 | 東京理科大、補足的な調査の結果を取りまとめた報告書を文部科学省へ提出 |
2005年5月26日 | 文部科学省が東京理科大学等に対し厳重注意と公表 |
2005年8月1日 | 財団法人実験動物中央研究所のカルタヘナ法違反に関連して文部科学省から2度目の厳重注意 |
※あらためて一連の流れを表にしてみて驚いたのは、カルタヘナ法が施行されたまさにその日に東京理科大が特別調査委員会を設置していたこと、そして同法施行後、同大は2回も文部科学省から厳重注意を受けているということです。
思えば、法律に定められている手続きではない「厳重注意」とは一体何なのでしょうか…。
厳重注意を受けたのは東京理科大学という法人で、組織が責任を問われたほうがよい側面もあるとは思うのですが、一方で、研究者個人に措置命令もしくは罰則が出たほうが、他の研究者に対して気持ちの引き締め効果はあるのかも…と思ったりもしました。
いずれにしても、カルタヘナ法すら厳しい運用がされていない中、実験動物福祉を問題にして、動物虐待罪として告発するべく戦うのは非常に難しいことだと思います。警察に対しても、環境省の動物愛護管理室に対しても、自治体に対しても、メディアに対しても、もっともっと関心を持つ人たちが声をあげていかなければならないと思います。
関連資料:
組み換えマウスずさん管理 東京理科大、内規に違反
共同通信 2004年5月18日夜ネットにup
19日、千葉日報、京都新聞、岩手日報、日経新聞などがこの配信記事を掲載
[要旨]
・
東京理科大生命科学研究所で、1997~2001年、遺伝子組み換えマウスを逃走防止設備がない通常の研究室で飼育するなどのずさんな管理をしていたことが18日に判明。同大特別調査委員会の調査で。こうしたマウスは45匹程度。
・大学コメント
「危険な実験はしていなかったが、内規に反しており、反省すべきだ」
・業者が“告発文”を、国会議員らに提出。今年2月から大学が独自に調査。
・問題のマウスはアレルギーを起こすよう遺伝子を組み換えたり、免疫に必要な遺伝子を除いたもの。
・専用室で実験する必要があったが、同研究所の2教授の研究室では、専用室ではないのに最長3カ月間にわたりこれらのマウスを使った実験したり、一晩から1週間置いたりしていた。
・昨年9月には「実験用マウスが逃げている」との匿名電話。地元保健所が飼育施設などを調査。同大の調査ではそうした事例は確認できなかった。
【NHKニュース報道】
東京理科大 遺伝子組み換えマウスを逃走防止設備のない研究室で
2004年5月19日
[要旨]
・東京理科大学の研究施設で、遺伝子を組み換えた実験用のマウスを内部の規定に反して、逃走防止の設備のない普通の研究室で五年間、飼育していた。
・大学の内部規定では、遺伝子を組み換えマウスは、二重の扉でロック出来る設備や部屋を無菌状態にする装置のある特別な実験動物施設で飼育すること
になっているが、当時、二人は内部規定に違反していた。
・本人コメント「違反なのは知っていたが飼育施設が無菌状態でと実験の条件に合わない
ため、やむを得ず研究室に持ち出した」
・逃亡したり持ち出されたりしていないため、周辺の人や環境に影響を与える恐れはないと大学側。
・東京理科大学幡野純常務理事の陳謝「内部規定に違反した反省すべきミスだった」
【新聞報道】
マウスの免疫研究、専用設備外で実験
-東京理科大、ずさん管理を陳謝/千葉
2004年5月20日 毎日新聞
[要旨]
・東京理科大学生命科学研究所が、遺伝子組換えマウスを使った免疫研究で、外部と遮断した専用設備を使うよう定めた内規に違反。97~01年に十数回にわたり、計約45匹について通常の実験設備を使っていた。
・
同大はずさんな管理だったと認め、幡野純常務理事が陳謝。
・岡村弘之学長は、生命科学研究所の東隆親所長を厳重注意。内規の徹底と設備の改善を指示。
・免疫をつかさどる遺伝子を組み換えたマウスを使った実験。専用設備の中に検査装置がなかったため、専用設備のない研究室で実験。アレルギーの原因を調べる実験は、無菌の専用設備内では出来ないため、専用設備の外で実験。
・これらのマウスは、免疫力が弱いため自然界では長生きできず、通常のマウスと交配してもすぐに死んでしまうという。
・同大は学内の調査結果を、今月中に文部科学省に報告する。
【新聞報道】
東京理科大ずさん管理 遺伝子組み換えマウス
東京新聞 2004年5月20日
[要旨]
・東京理科大は、生命科学研究所で、内規に反して遺伝子組み換えマウスを決められた施設外に移動し、実験を行っていたと発表。告発を受けて設置された特別調査委員会が結果をまとめ、今月中に文部科学省と市環境審議会に報告。
・記者会見したのは同大常務理事の幡野純教授ら。ずさんな管理があったのは1997-2001年。同研究所の教授と助教授がアレルギー発症と免疫学の研究で使用したマウスのうち計45匹ほど。
・同大は東所長らを厳重注意処分。
【新聞報道】
東京理科大 実験用マウス、ずさん管理
産経新聞千葉版 2004年5月20日
[要旨]
・東京理科大生命科学研究所で、遺伝子組み換えマウスを通常の研究室で飼育するなど、不適切な管理があった。
・アレルギーを発症させるために遺伝子を組み替えたマウス約15匹を平成11年9月から12年2月まで化学実験用設備から普通の研究室に持ち出して飼育。免疫実験するためのマウス約30匹を平成9年1月から13年3月まで研究室で飼育。
・逃走防止設備内で飼育するという内規に違反。実験の責任教授ら二人と東所長を厳重注意処分。
・「マウスが逃げたり、環境に問題があったわけではないが、内規違反なので処分した」(幡野純常務理事)。同大は今月末、野田市と文部科学省に報告書を出す。
本学生命科学研究所における実験動物の飼育管理問題について
今般、一部の報道機関から東京理科大学生命科学研究所における実験動物の飼育管理問題についての報道があり、皆様にご心配をお掛けしましたことを、深くお詫び申し上げます。
本学では、予てより実験動物の飼育管理については細心の注意を払ってきているところであり、近隣住民の皆様をはじめ、学内の学生および教職員並びに関係の皆様に対して、些かの不安を与えることがあってはならないとの観点から、関係法令の遵守、安全な施設設備の整備、安全管理体制の確保に努めて参りました。
しかしながら、本年2月16日千葉県野田市の市環境審議会において、本学が関連業務を委託している会社が発したものと思われる「理科大において行われている実験動物の在り方の問題点」に関して質問が行われたとの情報に接しました。これを受けて、本学は2月19日付けで学長の下に「生命科学研究所実験動物飼育管理等に係る特別調査委員会」を設置し、事実関係の調査を進めて参りました。この委員会には、学内の教員7名の他、学外の有識者2名に加わっていただき、厳正な調査結果が得られるよう配慮いたしました。
調査委員会からは4月30日に中間報告書が提出されました。それによりますと、過去の一時期において、マウスの逃亡を防止する設備のない研究室で、通常のマウス若しくは遺伝子組換えマウスを飼育していたこと,そして、このうち遺伝子組換えマウスを飼育していた例が2例あることが判明しました。
しかし、平成13年4月以降においては、遺伝子組換えマウスは勿論のこと、通常のマウスについても、安全な設備の施された研究室で実験および飼育が行われていることを確認しています。
本学としては、これらの事実を厳粛に受け止め深く反省して、関係者には厳重に注意することとし、調査委員会の最終報告書を踏まえ、再びこのような事態が生じないよう、安全管理体制の強化を図ると共に、研究者および学生に対して関係法令等の遵守と安全意識の高揚を不断に働きかけて参ります。
今後とも、近隣住民の皆様や関係の皆様に不安感をもたらさないよう、全力で努めて参ります。
平成16年5月20日
東京理科大学
東京理科大学における実験動物の飼育管理等に関する調査結果と改善措置・今後の対応について
平成16年2月と5月に、「本学野田キャンパスの生命科学研究所と薬学部における実験動 物飼育管理に関して問題があるのではないか」との外部情報を合わせて3回受け、本学は学外の専門家を含む特別調査委員会を即時に設置し、事実関係を慎重に徹底調査してまいりました。その結果、平成16年2月に施行された「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」の一部に抵触する恐れのある行為者1名があったこと、実験計画申請書の内容と実際の内容が一部異なる実験が行われたこと、DNA実験の一部が大学に申請していなかった実験室で一時的に行われたことなどが新たな事実として判明いたしました。これらは、本学野田キャンパス近隣の方々へ直接的なご迷惑をお掛けするものではありませんが、本学に不手際があったことは事実であり大変遺憾に思っております。ここに深くお詫び申し上げます。
一方、特別調査委員会の調査と併行して、理事会は実験動物飼育施設等の実地調査を実施いたしました。その結果、老朽化した実験動物飼育施設の閉鎖等の改善策を早急に施しました。
本学は、特別調査委員会によって明らかにされた事実を真摯に受け止め、既に執ってきた改善措置に加えて、今後の執るべき改善措置・対応を検討してまいりました。そして、特別調査委員会と理事会による一連の調査結果と改善措置・対応を報告書としてまとめ、平成17年1月11日に文部科学省に報告いたしました。
今後、改善措置・対応を早急に実施し、このようなことが二度と起きないよう万全を期し、大学の信頼回復に全力を注いでまいりますので、本学の教育研究活動に対して倍旧のご理解とご協力をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
平成17年1月18日
東京理科大学長
遺伝子組み換え実験で違反 東京理科大、新たに13人
共同通信 2005年1月18日
[要旨]
・
東京理科大(岡村弘之学長)は17日、新たに13人が遺伝子組み換えマウスの実験で定められた表示を怠るなど、省令や学内規則に違反していたと発表。
・既に文部科学省に報告、同省が調査中。違反があったのは、薬学部や生命科学研究所の動物実験施設など。
・薬学部の教授は昨年、実験室入り口に「組み換え動物飼育中」など文科省令などが定める注意喚起の表示をせず、組み換えマウスで実験。共同実験をしていた大学にマウスを渡す際も、遺伝子組み換え動物と知らせなかった。遺伝子組み換え生物使用規制法違反の疑いもある。同大は「貸与されたものを返しただけ」としている。
・他の12人は、学内委員会に申請していない場所で組み換え動植物を用いた実験をしたり、組み換えマウスを無申請で使ったりしていた。
【新聞報道】
遺伝子組み換えマウスずさん管理問題で東京理科大が教授ら13人に厳重注意処分(千葉)
読売新聞 2005年1月18日
[要旨]
・
東京理科大は十七日、薬学部や同研究所の教授、助教授、講師計十三人を厳重注意処分としたことを明らかに。
・特別調査委員会の調査によると、薬学部の教授(52)は昨年二月から四月にかけて、学習記憶能力などに関する研究で、他大学の共同研究者から預かった組み換えマウス十五匹を学内安全委員会に実験計画書を申請しないまま飼育。法令で義務づけられている「組み換え動物飼育中」の表示をせず飼育。
・ほかの教授、助教授、講師計十二人も、実験計画書に未記載の研究者を研究に従事させるなどの学内規則に違反する研究行為を行っていた。
・
会見した岡村弘之学長は「キャンパス近隣の住民に直接的なご迷惑をかけるものではなかったが、不手際があったことは事実」と謝罪。
東京理科大
薬学部動物実験施設の“設計費不払い”を理由に訴えられる
http://biotech.nikkeibp.co.jp/news/detail.jsp?newsid=SPC2005012530992
2005年2月22日
[要旨]東京理科大学は、薬学部動物実験施設の建設にかかわ
った業者から、設計料などの未払いを理由に5250万円の支払いを求める民事訴訟を起こされた。
理科大薬学部の設計費未納訴訟、
第1回口頭弁論が開かれるも、理科大側の姿なし
http://biotech.nikkeibp.co.jp/news/detail.jsp?newsid=SPC2005030831556
2005年3月9日
[要旨]
設計費未納訴訟では、2005年3月8日、東京地方裁判所で第1回口頭弁論が開かれた。理科大側からの
出席者はなく、始まってからわずか5分足らずで終了。
【文部科学省】
遺伝子組換え生物の不適切な使用についての厳重注意について
平成17年5月26日
文部科学省
1. 文部科学省においては、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換え生物の使用等を行っていた以下の機関について、現地調査を行うとともに、その経緯等について報告を求めてきたところ、別添のとおり原因と再発防止策が取りまとめられた。
(1) 学校法人東京理科大学
(2)日本エスエルシー株式会社
(3)厚生労働省国立感染症研究所
(4)厚生労働省国立国際医療センター
2. 各機関からの報告によれば、いずれも法に基づく適切な措置を執らずに遺伝子組換え生物を使用していたが、担当者等の法令に関する知識が不十分であったことが原因であり、実際には遺伝子組換え生物に対する拡散防止措置が執られており、遺伝子組換え生物の拡散には至っていない。
3.
文部科学省では、報告を受け、これらの機関に対し、再発防止のための措置を徹底するよう文書で厳重に注意した。
4.
また、文部科学省としては、担当者等が法令の理解が不十分であったのは法令の趣旨の周知が十分ではなかったことも挙げられると考えており、法令の理解及び遵守について改めて周知徹底を図ってまいりたい。
別添
各機関における遺伝子組換え生物の使用についての概要 から抜粋
機関名
東京理科大学(薬学部)千葉県野田市
経緯
平成16年2月、当省に対し、東京理科大が遺伝子組換えマウスを十分な拡散防止措置を執らずに使用している等の情報提供があった。これを受けて、当省より事実関係等について調査を行うよう指示した。
東京理科大では、調査委員会を設置して調査を行い、調査結果を取りまとめ、本年1月11日に報告書を提出するとともに、4月8日に補足的な調査の結果を取りまとめた報告書を提出した。
当省の対応
平成17年1月20日及び3月10日に法令に基づく立入検査を行い、以下の点を確認。
・ 遺伝子組換えマウスの使用にあたり、法令に基づく拡散防止措置のうち執られていないものがあった。(マウスの逃亡防止についての措置は執られており、使用期間中に逃亡はなかった。)
・ 遺伝子組換えマウスを提供するにあたり、法令に基づく適正使用情報等の提供を行っていなかった(提供先はもともと当該マウスを取り扱ってきた者であったため、結果的には適正使用情報が不明にはなっていない)
原因
1 遺伝子組換え生物等の使用等について、東京理科大による研究者等に対する情報伝達及び教育訓練が十分でなかった。
2 安全委員会において承認を受けた実験の実施段階におけるチェック機能が実効性を有していなかった。
3 分散しているチェック機能の連携が図られていなかった。
再発防止策
1 学内規則の改定及びマニュアルの策定
2 実験従事者に対する法令及び学内規則の周知徹底のための講習会等の実施
3 安全主任者の責任と権限の明確化と支援体制の整備
4 全学的な実験動物委員会の設置と安全委員会との連携等
※丸数字は環境によって文字化けするので、カッコつきの数字に直しました。
遺伝子組換え生物等の不適切な情報提供等についての厳重注意について
平成17年8月1日
文部科学省
1. 本年4月に当省が所管する財団法人実験動物中央研究所(以下「実中研」という。)が「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(以下「法」という。)に基づく農林水産大臣の確認を受けないで、ポリオワクチン検定用の遺伝子組換えマウスの産業上の使用等を行ったことについて、農林水産省から厳重に注意を受けたところ。
文部科学省においては、当初、実中研において、研究開発に係る遺伝子組換えマウスの使用等が、適切に行われていない可能性があったことから、実中研に対して現地調査を行ったところ、法に基づく遺伝子組換え生物等に関する適切な情報の提供を行っていなかった大学・機関等がある可能性があることが判明し、調査を行った。
2.
その結果、実中研を含む44の大学・機関等が、法に基づく遺伝子組換え生物等に関する適切な情報の提供を行っていなかったことを確認した。
(1) 国立大学法人及び大学共同利用機関法人 16大学及び1法人
(2) 公私立大学 7大学
(3) 試験研究機関及び独立行政法人等 9機関
(4) 民間企業等 11社・法人
計 44大学・機関等
また、この調査の過程において、独立行政法人農業生物資源研究所が6月末に報道発表した遺伝子組換え豚については、法に基づく文部科学大臣の確認を受けないで使用等を行ったことが判明した。
このため、実中研を含む44の大学・機関等について、その経緯等について報告を求めてきたところ、原因と再発防止策が取りまとめられた。
3.
実中研を含む44の大学・機関等からの報告によれば、いずれも法令で定められた事項についての情報の提供を行っていなかったが、担当者等の法令に関する知識が不十分であったこと等が原因であるとしている。
結果的には、実中研を含む44の大学・機関等においては法令上必要な拡散防止措置が執られており、遺伝子組換え生物等の拡散には至っていない。
4.
文部科学省では、報告を受け、実中研を含む44の大学・機関等(別紙-1)に対し、再発防止のための措置を徹底するよう文書で厳重に注意した。
5.
また、文部科学省としては、担当者等が法令の理解が不十分であったのは、法令の周知が十分ではなかったことも一因として考えており、
1 各大学、研究機関及び事業者等に対しての周知徹底の通知、
2 大学、研究機関及び事業者等を対象とした法令等に関する説明会の開催(8月下旬~9月上旬、東京・京都で開催予定(別紙-2))、
3 各機関等で開催される研修会への職員の講師派遣を行うなど、法令の理解及び遵守について周知徹底を図っていくこととしている。
厳重注意を行った大学・機関名
1 国立大学法人等
国立大学法人北海道大学
国立大学法人山形大学
国立大学法人東北大学
国立大学法人筑波大学
国立大学法人群馬大学
国立大学法人東京大学
国立大学法人東京医科歯科大学
国立大学法人浜松医科大学
国立大学法人名古屋大学
国立大学法人三重大学
国立大学法人京都大学
国立大学法人神戸大学
国立大学法人徳島大学
国立大学法人広島大学
国立大学法人九州大学
国立大学法人長崎大学
(小計:16国立大学法人)
大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(小計:1大学共同利用機関法人)
2 公私立大学
福島県立医科大学
横浜市立大学
北里大学
慶應義塾大学
順天堂大学
東京理科大学
東海大学
(小計:7大学)
3 試験研究機関、独立行政法人等
国立医薬品食品衛生研究所
国立成育医療センター
国立がんセンター
国立精神・神経センター
国立長寿医療センター
独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター)
独立行政法人農業生物資源研究所
東京都医学研究機構
大阪府立母子保健総合医療センター
(小計:9機関)
4 民間企業等
萬有製薬株式会社
オリエンタル酵母工業株式会社
株式会社ケー・エー・シー
大正製薬株式会社
株式会社ナルク
三協ラボサービス株式会社
株式会社日本医科学動物資材研究所
有限会社ラボプロダクツ
財団法人大阪バイオサイエンス研究所
財団法人ひろしま産業振興機構
財団法人実験動物中央研究所
(小計:11社・法人)
合計:44大学・機関等
※丸数字は環境によって文字化けするので、カッコつきの数字に直しました。
民主党 動物愛護・外来種対策ワーキングチーム(WT)中間報告
2004年12月1日(水)
【動物愛護法】
(中略)
(6)動物実験施設については許認可制のある先進国が多いが、我が国では届出制の適用 除外で、自主管理となっている。しかし東京理科大でのマウスのずさんな管理など問題が発生しており、科学研究の特性を踏まえつつも、動物の福祉や周辺住民の健康被害不安等 に応えることのできるしくみを導入するべきである。また実験における3R原則(代替、削減、苦痛の軽減)を明文化するべきである。