5年前、NEDOが「高機能簡易型有害性評価手法の開発」という事業を始めるにあたり公募前のワークショップが開催され、それを聞きに行ったことをブログに書いたのですが、昨日はなんともう、その事業の事後評価分科会でした。5年間のプロジェクトだったので、時間が経つのは早い~と思いつつ、聞いてきました。
実は行く前は、「聞いてもわかるかなぁ?」とか「資料が重いだけかも…」と少し悩んでいたのですが、いやー聞きに行ってよかったです。(といっても丸1日は無理だから、午後だけ^^;)
この事業、予想以上にいいところまで行った感じで、次の予算にもつなげたいという話になったそうです。
特に、「培養細胞を用いた有害性評価手法の開発」については、実用化の見通し等については、概略こんな感じでした。
・発がん性の予知としてのBhas 42細胞の形質転換試験
=すでに実用化されている。OECDのテストガイドラインとして申請済。
・免疫毒性の予知として、特に感作性試験の代替法の可能性
=有望性高い。平成23年度、バリデーションが予算化されている。
2色または3色発光によるレポーターアッセイ系は、LLNAやh-CLAT法に比べて短時間処理で簡便に精度よく検出できる、極めて有望な系、とのこと。
・発生毒性の予知としてのES細胞を用いる方法
=有望性高い。バリデーションは平成24年度。
心筋関連遺伝子・神経関連遺伝子の発現を簡便に評価するレポータージーンアッセイ用ES細胞を開発、とのこと。
特にOECDへ申請済みとなっている試験法は、予定より1年早く申請できたそうです。他にも「特許取得済」といった話などもちらほら出て、急に経済産業省が今後の課題の中に「動物使用削減の推進」を入れたりしているのも、この成果があってのことだったのかな?と思いました。
(事業仕分けの影響で、化学物質についてはNEDOから経産省直轄に変わったとのこと。)
ちなみに、代替法といっても、動物が全く犠牲にならないわけではないのですが、例えば、培養に使うラットの血清の量を減らす(=犠牲にするラットの数を減らす)などの研究成果なども発表されていました。
評価する側の委員の発言で気になったのは、「EUは化粧品についてはもう国策としてやっているので、日本から新規試験法を出しても遅れさせられたりする」という苦労話…。(そーなん、EU? ひどいじゃん) OECDガイドライン化へ向けて、ぜひ慎重に成功へ持って行ってほしいと思いました。
最後の講評では、「動物実験の代替になるようにということだが、代替までは無理で、動物実験と両方を活用するということになるのではないか」といったちょっとガッカリな発言もありましたが、でもいいんです。何といってもこの事業、始まったときは、動物の犠牲も減ることについては一言も触れられないという、不思議なスルー状態で始まってたんですから…。(代替法以外の何物でもないのに)
それが今では、ヒトの代謝系を組み込むには?とか、ヒトのvivoとつないでいくには?といった前向きなやりとりまであって、今後にも大きく期待するところです。
ただ、もう一つ、「28日間反復投与試験結果と相関する遺伝子発現データセットの開発」というテーマがあったのですが、そちらの方は…なんと当初の「予測手法の開発」という目標は中止になっていて、事業内容を変えて再登場だったようです(TT)。(たしかに、いきなりちょっと高い目標だなとは思っていたんだけど…そうだったのですか)
ただ、発表自体は、かなり「えー、すごいじゃん!?」と私は思ってしまいました。ヒトではなくラットのデータだというところが(わたし的にはかなり)欠点ですが^^;、でも、今までの動物実験って、動物を無駄に犠牲にするだけで、大したデータをとってないんじゃない?と思わず思ってしまうような内容でした。
(内容は……んー、図を見ながら聞いたら「ほー?」と思うけど、言葉で説明するのは難しい。と思ったら、ご本人も「書籍化するのが難しい」と言っていた^^;)
こちらのプロジェクトは、「培養細胞を用いた有害性評価手法の開発」に比べると、実用化等への道のりの点で講評は少し厳しめ?ではありましたが、でも何となく委員の皆さん、押し黙ってしまったような…。気のせいでしょうか?
ちなみに、ラットには日周リズムがあるので、臓器を取り出した時間が1日のうちの何時かによって、遺伝子発現の状況は違うのだそうですよ! それって知られた事実なのでしょうか? 今までの動物実験のデータベースには、臓器をとった時間までは書いていないと言っていて、そりゃぁそうでしょぅねぇ~と思ってしまいました。
この研究のために使えるデータベースが1つだけしかなかった話もあり、当然ながら最後の講評では、動物実験自体のリファインメント(改善)も必要だという話が出ていました。
この研究には、1ベンチャー企業が(事業をストップさせて)取組んだそうですが、特許取得も行わずデータは全て公開、解析のノウハウも公開すると言っていました。公的資金なので当然といえば当然ですが、でもなかなかすばらしい話です。ラットたちからとったサンプルは、まだ保存してあるそうなので、継続のプロジェクトでも無駄にされないことを祈ります。
長くなってしまいましたが、これだけでも話足りてない感じです。
参考までに、これまでの関連するブログエントリです。(こんなに書いてたのか、私ゃ)
第1回「高機能簡易型有害性評価手法の開発」(中間評価)分科会資料&議事録
https://nezumi.info/archives/2009-01-10
NEDOの代替法開発 経過
https://nezumi.info/archives/2008-11-06
NEDOで追加公募
https://nezumi.info/archives/2007-10-23
高機能簡易型有害性評価手法開発ワークショップ
https://nezumi.info/archives/2006-02-10-4