日本薬理学会雑誌の9月号の特集が動物実験代替法だよと教えてもらったので(via @helpanimalsAR)、入手してみました。国会図書館も入ってないみたいだし?? まあ1000円は安いです。ありがたや。
到着しましたら、表紙には『くすりとからだ』という柔らかめのタイトルがありました。そして、特集は『アジアにおける動物実験代替法の展開』でした。
特集といっても、寄稿は3つだけなのですが……最初は、「薬理学における動物実験代替法研究の重要性」。薬理学会でどんな動物を使った発表がされているかの調査結果も載っていました。動物不使用は17.91%でした。
(それにしても、「動物を使用しているが動物種が不明なもの」っていうのは一体何なのでしょうか。そんな発表ありえるの??? 「どんな動物実験だったかは論文などで公表している」というのが、研究者の主張でしょう?? まあ、いずれにしても私たちが知りたいことはたいてい論文には書いていないですが…それでも種くらいはねぇ。)
また、平成19年、薬学系大学で動物愛護法について教えているのは80.80%。一見多そうに思えますが、3Rについて教えているのは69.20%。うーん、これはかなり低いような気がします。
そして、どの程度深く教えているのかは不明ですが、代替法については57.70%。うーん、この程度なのでしょうか? 「教育は必ずしも十分では無かった」と、やはり書かれています。現在は改善されていることを望むともありましたが…実際のところどうなのでしょうか。
次が「動物実験代替法における国際協調」で、ICATM(代替試験法国際協力会議)の動向、JaCVAM(日本の代替法評価センターです)の活動状況などなど。
動物福祉ありきで立法化していく欧州と違って、日本ではその必要性が認知されておらず、国際社会に歩調を合わせるにとどまっているといったことも書かれていました。方針としては、
1)すぐれた試験法を国際社会に送り出す、
2)3Rの中でも、削減に関する試験法の開発を進める
(うーん、これは代替ではなくて、動物は使うけれども数の少ない試験法を開発するという意味ですね…)
3)既存試験法の再点検を行う、
の3つが挙げられていました。
最後が「アジアにおける動物実験代替法の現状」。
アジア各国においても動物実験代替法への関心が高まっているとのことで、「それをうけた国際的整合性を持った法整備に我が国も注目しなければならない」とありました。(思わず強調)
また、欧州等をふくめた最近の国際情勢に、アジアも影響を受けざるをえないことなども書かれていました。
日本はあいかわらず、「国際的整合性を持った法整備」に対して科学界が抵抗を示しまくる旧態依然の状況ですから、アジアに追い抜いていかれるのではないかと、やはり少々不安になります。
国内の身内同士では「法律なんてなくても」のファジーな状態がぬるま湯でいやすいのかもしれないですが、法律がないことは必ず、動物実験を経た最終産品(たとえば薬)のイメージダウンにつながっていくと思います。
ちなみに、低廉な労働力を求めて、中国にCRO(医薬品開発業務受託機関)が多数つくられているそうです…。