動物保護関係の人たちが好んで引用するガンジーの言葉があります。

「国の偉大さと道徳的発展は、その国における動物のあつかい方でわかる」
“The greatness of a nation and its moral progress can be judged by the way its animals are treated.”

しかし、この言葉、出典が書かれているものは見たことがありません。ガンジーは、本当にこの言葉述べたのでしょうか。

実は、同じ疑問を持った人がおり、インド政府発行の全集98巻をすべて調べたそうなのですが、残念ながら、この言葉は載っていなかったそうです。

全集には、スピーチ、手紙、電報の写し、新聞・雑誌の記事、他の作家の作品に書いた序文などが含まれていますがそのどこにも存在していません。

この人が疑念を持った理由の一つは、より時間をさかのぼると、別のバージョンが存在するからだそうです。

“The moral progress of a nation and its greatness should be judged by the way it treats its animals.”
“国の道徳的進歩と偉大さは、動物を扱う方法によって判断されるべきだ”

また別のバージョンが「What is Hinduism?」という本に出てきます。

One can measure the greatness of a nation and its moral progress by the way it treats its animals. Cow protection to me is not mere protection of the cow. It means protection of all that lives and is helpless and weak in the world. The cow means the entire subhuman world.

国家の偉大さとその道徳的進歩をその動物を扱う方法で測ることができる。私の牛の保護は、単に牛の保護ではない。それは生きとしすべての命、世界で最も無力で弱いものの保護を意味する。牛は、人間ではない世界すべてを意味するのである。

全集には、肝心の「国家の偉大さとその道徳的進歩をその動物を扱う方法で測ることができる」という部分は存在せず、後半の「私の牛の保護は……人間ではない世界すべてを意味するのである」の部分は存在するのだそうです。

誰が、この引用を使い始めたのかはわかりませんが、1905年に南アフリカのポートエリザベスで建てられた馬の記念碑(Horse Memorial )に以下の碑文が刻まれているそうです。ボーア戦争で使われた数多くの馬たちの記念碑です。

THE GREATNESS OF A NATION
CONSISTS NOT SO MUCH UPON THE NUMBER OF ITS PEOPLE
OR THE EXTENT OF ITS TERRITORY
AS IN THE EXTENT AND JUSTICE OF ITS COMPASSION

国家の偉大さは
人の数や領土の広さによるのではなく
思いやりの幅広さや
わけ隔てのなさによるのである

ガンジーは若いころ南アフリカにおり、ボーア戦争にも従軍しました。ガンジーもこの碑を知っていたかもしれないと書いている人もいました。

参考:
https://animalsmattertogod.com/2013/09/13/mahatma-gandhi-hoax-quote-greatness-of-a-nation-and-its-moral-progress-can-be-judged-by-the-way-that-its-animals-are-treated/