※旧・動管法の時代の質疑です。

 
第129回国会 衆議院予算委員会第一分科会 1号 平成06年06月07日

○山名分科員 公明党の山名でございます。
 質疑通告に基づきまして若干の質問をさせていただきます。

 まず最初に、動物保護に関する問題でございます。

 動物保護の問題につきましては大変長い歴史を持っておりまして、特に欧米諸国等では十九世紀の中ごろからこの問題の取り組みがあったようでございます。おくればせながら我が国も二十年前、一九七三年に動物の保護及び管理に関する法律というのが制定をされおるわけでございますが、この法律を見てみますと、動物の虐待の防止あるいは動物の適正な取り扱い、こういった動物の保護という事項を定めながら、かつ国民の間に動物を愛護する気風というものを養っていこう、さらに生命尊重、友愛あるいは平和、こういった情操の涵養に資していこう、極めて高邁な理念をうたっておるわけでございます。二条でも、何人も動物をみだりに殺したり傷つけたり、または苦しめることのないようにするのみではなく、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない、こういうふうにうたっております。

 その高邁な理念、非常に私は結構なことだと思うのですけれども、それにも増して最近いろいろな動物虐待の実例というものが出てきておるわけでございます。このいわゆる動物の保護及び管理に関する法律、この法律のもとにこういった今行われているような虐待等の課題が果たして解決できるだろうか。むしろ、この法律の後半部分も含めて一貫して流れるものは、そういった保護という理念は当然うたっておりますけれども、全体の流れの主流はむしろ管理法ではないか、こういう私は印象を受けておるところでございまして、したがってまず第一点目の質問として、この現行の法律についての御見解をお聞かせいただきたい、このように思っております。

○石和田政府委員 ただいま先生御指摘のように、動物の保護及び管理に関する法律というものは昭和四十八年に議員立法という形で成立した法律でございますが、当時、先生御指摘のとおり、国民の間に動物を愛護しようという機運が非常に高まってこういう法律が制定されたわけでございます。

 御指摘ございましたように、その一条には動物の保護とそれから管理という両面をうたってその目的を掲げているわけでございますが、確かに最近特にペットブームといいますか、動物を飼う人の数が非常に多くなったという反面、また動物を扱う扱い方が適切でないというような話が非常に多く聞かれるわけでございます。

 ただ、この法律の目的は、先生の方からも御指摘ございましたように、単に管理するという面からの法律ではございませんで、保護という面も非常に大きな一つの柱としておるわけでございまして、現に私ども総理府の方でも、一定の期間を動物愛護週間というような形で定めまして、その期間に重点的に動物に対する認識を改めていただくというような広報活動なども実施させていただいておるところでございます。

○山名分科員 この法律の第十二条に、総理府に動物保護審議会というものを置きまして「動物の保護及び管理に関する重要事項を調査審議する。」こういうふうにうたわれておりますが、この動物保護審議会、今までどのような形で審議をされ、どういった結果を生んでおりますか。

○石和田政府委員 この動物保護審議会は、御指摘のように動物の保護管理法で設置が義務づけられておるわけでございますが、今までこの法律にのっとって、主として都道府県においてこういう基準で動物の保護管理を進めてほしいというような基準、づくりをやってまいりました。

 この法律が対象としております動物は、当然のことながら人間が一定の目的で飼うというような動物を対象にしておりますので、例えば希少動物をどうするかというようなことではないわけですが、この審議会で今までつくってきた基準というのは、動物の飼われる目的に応じて、例えばペットとして飼われる動物であるとか、あるいは動物園とかサーカスのような場所で展示用に飼われて
いる動物、あるいは産業動物といいますか、毛皮や食肉を目的として飼われている動物、それから実験用に飼われている動物というような、それぞれの目的に応じて飼われている動物の扱い方についての基準を定めたり、あるいは、例えば実験動物でもその実験動物として飼っている間の飼い方をどうしたらいいかというような基準を定めたりということがこの審議会の主な活動でございます。

 また、そうした一定の諮問を受けて答申をするという活動のほかに、審議会として動物の扱い方について意見を内閣総理大臣に対して申し出るという仕組みがございまして、実はこれは一つの例だけでございますが、昭和五十年に沖縄で海洋博の開催期間中に闘牛をやろうというような動きがあったのに対して、まあ五十年という時代背景もあったと思いますが、適切ではないというような意見を申し出るというような活動もしてまいりました。

○山名分科員 ところで、先ほど申しましたように、最近特に動物の虐待の事象というのがふえておりまして、ことしに入ってからでもかなりいろいろな目を覆いたくなるような事例がございます。

 例えば、本年一月に明石市では動物小屋でウサギ二十二匹が鈍器で殴られ惨殺をされたとか、あるいは熊本では洋弓の矢によって顔などを貫通した猫二匹が見つかったとか、富山では雑種犬三匹が校庭の鉄棒に首つり状態で惨殺されていたとか、東京の板橋区でも鴨が背中から腹にかけて弓矢で射抜かれていたとか、愛知県では盲導犬四匹が針金で首を絞められて虐殺をされたとか、とにかく枚挙にいとまがないわけでございます。

 こういった捜査等は警察がやるわけですけれども、動物保護法、この違反で取り締まりといいますか捜査をするわけではないわけで、いわば小屋に入れば器物損壊罪、こういったたぐいになる。さらには、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律、これは洋弓等を使っているという、使用禁止のものを使ったということが取り締まりの、捜査の対象になっておるとともに、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金、こういう罰則が今で言う動物保護法よりも極めてきつい、強い、こういう観点で警察の捜査も入っておるわけでございます。

 そこで、こういった事象に対して動物保護管理に関する法律に基づいて今後どう対処できるのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。

○石和田政府委員 確かに、動物保護管理法では動物の虐待に対して一応の罰則規定があることはございますが、これが適用されたという例はないわけです。どうしても、ペットといいますか動物が身の回りに多くなればそれだけ、動物に接する接し方の中には、非常に適切さを欠いたり、あるいは残虐なものがあるということは避けられないとは思いますが、こういう罰則によってそうした虐待というものを取り締まるという方向、そういう考え方もあろうとは思いますが、私どもとしては、むしろ動物に対する思いやりとかあるいは動物の行動について十分な知識がないとか、そういった飼い方あるいは動物自身の性格、性質といいますか、そういったものに対する十分な理解がないために起こるケースが多いのではないかというふうに考えまして、総理府の方では、主として動物の飼い方あるいは訓練の仕方といったようなものを中心に啓蒙活動を進めていきたいというふうに考えております。

○山名分科員 基本的には私もそう思います。

 ただ、泥棒でも何でも人間がすべて善ならば法律は要らないわけでありまして、そういうものが犯され、そして秩序と混乱を防ぐために法が存在し、強制力を持たない法というのは法としての体はなさない、私は基本的にそう思っております。当然動物の嫌いな方、あるいはまた一方で、最近とみにふえている動物公害と言われる実態、これについても認識をしております。また、日本人の心というのは、本来やはり動物愛護の精神は十分備わっている、こういう認識を私は持っておるわけでございますが、そういった精神と極めて乖離したそういうのを見るにつけ、非常に心を痛めるものでございます。

 先に行きたいと思いますが、先ほど申されました動物の正しい飼い方なりそういう啓発の問題について、動物保護の立場からどういった取り組みをされているのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

○石和田政府委員 まず第一に、動物についての知識を十分に持ってもらうということが一番重要ではないかというふうに考えまして、いろいろな形でリーフレット、パンフレットのようなものをつくって、動物に応じて、動物愛護団体と言われるような団体がございますので、そうした団体を通じて普及活動に努めたり、あるいは先ほどもちょっと申し上げましたが、動物愛護週間というような時期をとらえて、私どもの方からも全国何カ所か出かけていって、動物の飼い方や動物に対する接し方などをイベントというような形で実施したりしております。

 それから、毎年、例えば動物は一たん飼ったら生涯飼い続けるというようなことを身につけてくださいというようなその年々のいろいろな標語をつくって訴えたりということを進めているところでございます。

○山名分科員 ところで、そういう虐待とともに、従来から問題にされ、むしろ諸外国から日本に対する批判として出ている問題の一つに、いわゆる動物実験の問題がございます。この動物実験については私もいろいろ調べてみましたけれども、何といいますか、一定の枠を超えた、まさに無造作な感じの動物実験が行われている。当然動物実験によって人類が受ける恩恵といいますか、動物実験によって得たいろいろな開発、研究が今日の世界の、また我が国の医療等の発展をもたらしたことは私は十分理解はできますし、認めるところでございまして、全面的に動物実験を廃止せよというような立場には立たないわけでございますけれども、この動物実験についての欧米諸国の動向、どの辺認識されておるのか。

 さらに、最近地方自治体が払い下げを受けた動物に対して、大学とか研究所に対する、その払い下げを拒否をし廃止をしていこう、こういう動きがふえておりますが、そういった払い下げ問題についてどれぐらいの地方自治体が取り組んでいるのか

 さらには、これは文部省の所管になるかと思いますが、特にこの動物実験を大量に行う大学において、施設の問題あるいは設備の問題、それから管理やチェックをする組織、機能の問題、こういった現状についてお聞かせをいただきたい。

○石和田政府委員 まず最初の動物実験について、欧米諸国でどういうふうなことになっているかということでございますが、実は私どもも必ずしも体系的に把握しているわけではございませんが、聞くところによりますと、例えばヨーロッパあたりでは動物実験を実施するような施設の設置について、あるいはそこで動物実験に当たる研究者についてはそれぞれ免許が必要だというような規制があったり、あるいはアメリカでは動物実験をするについては、その施設内で一種の倫理委員会のようなものを設けて、そこで実験の仕方を議論するというようなことがあるようでございます。我が国では、残念ながらそういう仕組みはないわけですが、ところによっては施設で自主的にそういう倫理委員会のようなものをつくって議論しているという例はあるようでございます。

 それから、動物を引き取ってその後実験動物用に払い下げるということをやめている都道府県が、先生御指摘のとおり、確かに幾つか最近出ているようでございます。私どもの承知している限りでは、ここ数年のうちに五つほどの県、市でそういう例があったようでございます。

 私どもは、この動物実験につきまして、この法律に、先生が最初お読みいただいたように、動物を苦しめてはいけないというような規定もございますので、そういう精神にのっとって、一定の基準で実験動物を使用してくださいという基準を示してはいるわけですが、一方で、動物実験というのはどうしても欠かせないということであれば、そういう県あるいは市で収容した動物を払い下げるということを一律に禁止するというようなやり方が一番適切かどうかというのはまたいろいろ議論があろうかと思いますので、その辺は先生の御趣旨を踏まえて、私どももこれから研究していきたいというふうに考えております。

○長谷川説明員 文部省といたしましては、大学におきます動物実験の精度の向上と飼育管理面の適正化を図りますとともに、実験動物の管理と研究者に対する研究支援や学生等に対する教育を行うこと、これらを目的といたしまして、医学部の附属教育研究施設として動物実験施設の新設、整備を行ってきているところでございます。

 平成五年度までに、医学部を置く国立大学四十二大学中四十大学に設置済みでございます。また、公私立大学につきましては、医学部を設置する三十七大学を含め、四十三大学に設置をされているところでございます。

 もとより、大学におきます動物実験に当たりましても、動物福祉の立場から十分な配慮が行われるべきことは当然でございまして、文部省といたしましては、大学における適正な動物実験の確保のために、昭和六十二年の学術国際局長通知によりまして、適切な実験計画の立案、適切な飼育管理、動物に無用な苦痛を与えないような配慮など、動物実験の実施に当たりまして留意すべき事項について各大学を指導いたしますとともに、各大学においてこれらの事項を盛り込んだ動物実験指針を定めること、そして、この指針の適正な運用を図るため、学内に動物実験委員会を設けることについて指導したところでございます。

 現在、動物実験指針につきましては、医学部を置く全国立大学及び大多数の公私立大学において制定されているところでございまして、今後とも、適正な動物実験の確保のため、この趣旨の徹底と実験施設設備の整備充実等に努めてまいりたいと考えているところでございます。

○山名分科員 時間が余りありませんので、この問題の最後の点として、私は、何点かの要望を含めてお願いをしたいと思うのです。

 特に、この動物実験については大変な批判も高まっているところから、やはり姿勢としては、いわゆる三R運動というのがありますが、代替法それから動物使用数の軽減、それから苦痛の軽減、この三点について、十分この基本姿勢というものをこの精神においてぜひ進めていただきたい。

 それから、現行の法律についての法改正、例えば動物虐待の罰則、三万円以下というこういった第十三条、あるいは代替試験法の問題からいいますと、ドレーズとかあるいはLD五〇とか、こういった動物実験が今現実に行われておるわけでございまして、こういう残酷な動物実験にかわる試験法の開発をぜひ政府としても急いでいただきたい。

 さらには地方自治体の取り組みとして、地方に動物保護審議会、こういったものを置きながら、この動物保護行政をさらに推進をしていただきたい。そのために政府として財政的あるいは技術的援助、例えば繁殖制限のための公費負担制度の創設だとか、こういったものをぜひ今後お考えいただきたい、こういうふうに思っている次第でございます。この点について簡単に一言だけ御見解をお示しください。

○石和田政府委員 私どもの方には、先ほど先生御指摘の動物保護審議会というものもございますので、先生のきょうのお話を踏まえながら、こういう審議会での議論なども踏まえて取り組んでまいりたいと思っております。

(以下略)

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