「水銀いらない」キャンペーン&水銀覚え書き
「水銀いらない」キャンペーンというサイトが立ち上がったそうです。署名のページもありますので、ぜひよろしくお願いします。
「水銀いらない」キャンペーン
http://suigin-iranai.jp/
以下、水銀関係でいつかブログに書こうと思っていたことの覚え書きです。
★1 日本は水銀規制が遅れている
去年、「国際的な水銀規制をどう進めていくのか」というシンポジウムを聞いてきました。網羅的でありながら、かつデータなども詳しく、とても勉強になりました。日本は、水俣病の経験がある国にもかかわらず、それ以外の話題があまり取りざたされておらず、規制が遅れているということを実感しました。
印象に残ったことなど、ざざっと箇条書きにしますと・・・
・近年、水銀の排出量は増大している。
化石燃料を燃やすことで大気へ水銀が放出されるのが主な原因。
一番大きい排出源は火力発電で、住宅用暖房(ストーブ)、セメント業、金精錬などが続く。
・水銀の大気への排出量は、アジアで急増している。
ここ20年で2倍。
産業革命前と現在の比較では、大気排出量3.6倍、大気残存量2.8倍
(UNEP報告書より計算)
・水銀を用いる金精錬法によって、アジア・アフリカでは労働者が水銀を直接暴露。
・EUは水銀輸出を禁止。アメリカでは、オバマが大統領になる前に水銀輸出禁止法を提出していて、当時は成立しなかったが、現在は禁止に至っている。
・日本はアジアで唯一の水銀輸出国。水銀の輸出禁止と永久保存が世界の流れだが、日本にはそういった規制へ向けた動きがなかった。(日本政府は、日本が輸出をやめることで、新たな水銀の採掘がなされることになるのではないかという懸念を持っている。永久保存場所については、北海道の水銀採掘跡地が一つの候補か?)
・水銀製品の規制も国際的な流れ。アメリカ11州で水銀体温計禁止法、フィリピン、インドは水銀を含む医療器具を段階的に廃止、などなど。
・大気中の水銀を最終的に吸収するのは、主に海洋。大気に排出される水銀が増えることによって、海洋生物の水銀汚染も進む。メチル水銀の制御は、水銀の総排出量の制御で行うというのが国際的に広まっている考え方。
・低濃度のメチル水銀の影響についてはまだよくわかっていない。
ただし、摂取許容量については年々厳しい提案がなされている。
などなどです。
★2 イルカ肉の水銀は?
イルカの水銀は無機水銀で安全だという主張は正しいのでしょうか? 日本政府の公式見解とも言える食品安全委員会の報告書には、はっきり「メチル水銀」(有機水銀)を比較的高濃度に含むと書かれています。(こちらを信じない根拠が何かはよく知らないのですが)
「魚介類はメチル水銀の優勢な曝露源であり、魚介類の総水銀の75~100%はメチル水銀であると推定されている」「高齢、大型の肉食性の種類の魚や歯クジラ類は、比較的高濃度のメチル水銀を含んでいる」
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/050812-1-04-1b.pdf
補足:
・イルカは歯クジラ類であり、魚をエサにしています。
・海などの中にいる微生物の働きによって、無機水銀(自然水銀)はメチル化し、有機水銀となります。
繰り返しになりますが、燃焼によって大気中に放出される水銀は増えており、その水銀を吸収するのは主に海洋であり、海の微生物の体内で無機水銀はメチル水銀になり、魚はそれを食べ、さらにその魚を食べるような生き物の体内に濃縮されていくメチル水銀を人間はどこまで摂って大丈夫なんでしょうね?というのが話の流れかと思います。