いま、「あまりに酷い」と思ってる動物実験がある。論文タイトルは「Face perception in monkeys reared with no exposure to faces」。「生まれた直後から一切『顔』を見せずに育てたサルに、ヒトとサルの『顔写真』や顔以外の物体の写真を見せる」実験とのこと(日本語プレスリリースより)。JSTのCREST(戦略的創造研究推進事業チーム型研究)がお金を出しているんだけど、いまどきまだこんな実験をやっていたなんて、正直驚き。

これを時事通信が報道したことも驚いたんだけど(報道に値するとも思えなかった。批判的になら別だけど)、堂々とJSTがプレスリリースを出していたのもさらなる驚き!

サルの赤ちゃんは見る以前から「顔」の印象を知っている

http://www.jst.go.jp/pr/info/info456/index.html

でもこれ、よく見るとちょっと欺瞞が見える。

日本語プレスリリースで一般向けに公開されている写真はこちら:

http://www.jst.go.jp/pr/info/info456/zu2.html

論文全文はこちら(写真にご注目):

http://www.pnas.org/cgi/reprint/0706079105v1

論文の写真は、やっぱりサルの赤ちゃんに酷いことをしている印象を与えてしまう。だから、プレスリリースでは、顔を隠した人間の部分は、カットしたんだと思う。

これで動物実験の事実が公開されているなんて言えるんだろうか?

それに、なぜこんな実験が必要なのかもよくわからない。人間の発達過程で、まったく顔というものを見ずに成長するなんてことは、視力があればありえないし、どういう人に対してこの実験結果が役立つって言うんだろう…。視力が生まれつきなくて後から獲得するということがもしあるなら、その子どものため? 顔だけを認識できない子どもがいる? でもだったら、そういった子どものケースを集めてほかの子どもと比較する研究をすればそれで済むはず。

人間にとってサルのイメージって、深層心理では「子ども」を意味するって聞いたことがあるけれど、ならばこういう実験を思いつく研究者の生い立ちや深層心理と、実験の内容との関係を研究してみたほうがよいのではないかとすら思う。