クローン家畜由来食品説明会傍聴
先日、厚生労働省・農林水産省が開いていたクローン家畜由来食品についての説明会に行ってきました。安全性について、食品安全委員会に諮問が出されたことを受けての説明会でした。
正直、動物福祉とか生命倫理とかの視点からどれだけの人が行くのだろう…と思っていたら、とんでもない! 質疑応答は、最初からそういったことをふくめた懸念調一色でした。うぉ~、日本の消費者団体もけっこうまだまだがんばっていたんだ!…って、スイマセン、普段あまり動物関係ではお目にかからないのでちょっとビックリしました。
要するに、口の中に入る動物だから、こんなに大勢の人が懸念を示してくれるのだとは思ったのですが。(これがただ動物を実験するだけだったら、これだけの人が異論を唱えるどうか?)
実は説明会部分は、ここのところの徹夜仕事がたたってほとんど寝てしまったのですが(スイマセン)、質疑応答は「別に私、いかなくてもよかったかしら」くらいに盛り上がっていたので目がさえました。
でも雰囲気はちょっと異様でした。壇上には、国側の役人さんがズラーッとならんで、印象としては「先に国策ありき」のような感じがヒシヒシとするわけです。そして、例によって研究者の人がお墨付のために同席。会場から意見が出るのはほとんど懸念を示す市民側だけど、暖簾に腕押しというか、もう決まっちゃっててそれを「説明」する会よねぇ~というのがありありで…。
とはいえ、終わる頃にはだいたい質問出揃ったかなみたいな感じがあったので手を上げなかったのだけど、やっぱりもうちょっと「そもそも論」で意見言いたかったかな~と思って、あとで「くやしー」とか思っていました。
というのも、だってそもそも、クローン家畜由来の食品の「安全性」というのは、要するに従来の肉などと「同等かどうか」ということだけが基準になっているわけで。
どー考えても、肉自体が体にいいものではないことを考えると、その「安全性」ってナニ?と思わざるを得ないわけです~。動物性食品の摂取が健康によくないことを示す人間のデータはいろいろあるわけで…クローン牛肉が仮に従来の牛肉と変わらなかったとしても、そのことは健康にとっての安全を保証するものではないと、はっきり書き込んでほしいんですよね~。
そして、その「偽りの」安全性に対して、果てしなく研究費(と動物の犠牲!)を払うのは、止めてほしい。もちろん、クローン家畜研究自体を止めてほしいという意味です。
アメリカが自粛を解禁したことで日本にクローン牛肉が入ってくる可能性が出てきたから諮問をしたと言われれば、たしかに「なるほどね」といわざるを得ないところもあり、やっぱり牛肉帝国アメリカが悪いんだろうなとは思いつつですが。(でもあの国の人たちのように太りたいわけじゃないでしょ(;;))
あとひとつ、「手を上げればよかった!」と思ったのは、クローン研究の倫理性についての質問に対して、「研究所の倫理規定に基づいて研究している」という回答があったことについてです(>_<)。(徹夜明けで仕事の打合もあったりする生活は、やっぱり頭がフル回転しなくてダメだー(><) ぐやじぃ。)
自分たちが作った倫理規定に基づいて、自分たちで承認して、自分たちで研究している、いわば身勝手ともいえるしくみの中で、倫理規定が免罪符として使われてしまっているのは、やっぱりとても問題だと思うんです。研究の方向性の意思決定過程に、市民の意見はまったくとり入れられてない。(むしろ「なんとかコミュニケーション」とか言っちゃって、政策寄りの考えを市民に浸透させることがさかんに行われているような気すらするし。)
ああいうことは、実験委員会の委員の半分を、消費者団体や動物福祉団体のメンバーにしてから言ってほしい。
質疑応答でおっしゃっていた方もいたと思いますが、べつに消費者が求めている技術ではないのに、どうしてここまでして導入しないといけないものなのか、本当に理解に苦しみます。
死産したり、生後すぐ死んだりしているクローン牛の数はやっぱり異常です。人間にとって安全かどうかに議論が行ってしまうと、「科学的根拠」にもとづく宣伝と戦わないといけないですが、苦しめられている動物たちのことを考えれば、当然必要ない技術だと結論できると思います。
食料増産をしなければいけないのだとしたら、それこそ牛肉から離れることが重要だと思うので、その点でも別に必要性は感じません。飼料輸入が食料自給率を大きく下げているような日本で、もう畜産に力入れなくていいよ~と思ってますし…。食料自給率を上げることも、いま国家的な目標になっているのかと思ったのですが、この日は農水の人もいっぱい座っていて、同じ省の中で政策に矛盾があるんじゃないの~とか思っちゃいました。
「体細胞クローン家畜由来食品に関する説明会」
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/johokan/080417.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/080417-1.html