ちょっとしたきっかけがありまして、リチャード・アダムズの疫病犬と呼ばれて (上・下)(評論社)をちゃんと読み直しました。
私が中学くらいの頃は、どこの図書館でも並んでいた本でしたが、今はもう絶版のようですね。実は中学時代、同じ著者の『ウォーターシップダウンのウサギたち』にかなり夢中になった口なのですが、こちらの本は「なんだか暗そう・・・」と思って、借りてもやっぱりちゃんと読んでいなかったみたいです。
改めてきちんと読んで思うのは、もし、動物文学ならぬ「実験動物文学」なんていうジャンルが成立するとしたら、この作品がやはり最高峰だろうということです。
イギリス湖沼地方を舞台に、国立の研究所から逃げ出した2匹の実験犬の行く末を描いた作品なのですが、2匹の心理描写もすばらしくて心乱されるし、事件を取り巻く人間社会の描写も「ありそー!」な感じがとてもリアルです。ちんぷな表現だけど、力作!の一言。
原作が書かれたのは1977年ですから、今は実験施設もこんなにおおざっぱじゃないとは思いますが、でも、かなり動物実験に関しても、正面から切り込んでいる作品です。つまり…著者が動物実験に対してかなり批判的な気持ちを持っていることは間違いない作品だという意味ですが。
物語は大どんでん返しで終幕を迎え、涙ドバドバですが、訳者あとがきを読んで、実はもう一つの大どんでん返しがありました。
それは、著者のリチャード・アダムズがもともとは官僚、イギリス環境省で最後は次官補だったということです。今の今まで知りませんでした…。(だいたい、『ウォーターシップダウン~』が書かれた頃に日本なんかまだ環境庁すら生まれてないし!?) しかし、『ウォーターシップダウン~』はまだしも、この作品なんてかなりの体制批判作品なんですよ。それも、含・動物実験批判ですよ!! 日本だったらやっぱりありえない気がします。省庁辞めても動物実験体制死守のために働くのが日本の役人…としか思えないし(´д`)?
嗚呼イギリス底力です~ 
しかもこんな、ある意味暗い作品をアニメ化までする国って~(ありえなーい! けど見たい!!)
でも、日本も翻訳が出たのがちょうど30年前の1979年。動物実験のこういう雰囲気、伝わっていたんですね、日本にも。
中学生にはちょっと難しいところあったかもしれないけど、あのときちゃんと読み込めば私の目覚めももう少し早かったかな~? もしかしたら時代のせいもあっていくつかの「不適切用語」のせいで絶版なのかもしれないけど、復刊してほしい本がまた増えました。