まー、ずっと頭にきていてブログに書きそびれてきた件があるのですが、タイトルに書きましたとおり、内閣府のパブリックコメントの結果発表がかなり作為的と思われる件です。政権交代前の話です。
問題のパブリックコメントは、2700億円という莫大なお金を先端的科学研究に投入しようという、しかも、一人の研究者に90億円ずつ30人に投下しようという、ばかばかしいほど巨大で偏ったプロジェクトについてのものでした。政権交代直前に駆け込みで研究費支給先が公表になったところでも「何かおかしい」と思いましたが、話題の補正予算で組まれているもので、今は全件不採択が決定しています。700億円減額して支給対象者数も増やすと報道されています。
→これはその後、1500億円まで減らすと報道されています。
こんな不景気なときに2700億円も血税から研究費を追加するなんて話は、動物実験を抜きにしても「エーッ?」でしたが、それでも、実際に研究を採択する前に国民の意見を聞く試みは、非常によいと思っていました。ブログにも書いた、『先端的研究を推進して実現してほしいこと』のパブコメです。
でも、ふたを開けたら、なんだか変でしたね。内閣府に都合の良い意見しか公開されていない印象です。(PDFはこちら
ちょっと計算してみたのですが、
医療・健康・介護 (315 件)
 内訳
  癌治療の確立や普及(55 件)
  再生医療の実用化(47 件)
  痴呆症やアルツハイマーの治療の確立と普及(24 件)
  うつ病等精神疾患の治療の確立と普及(23 件)
  パーキンソン症候群の治療の確立と普及(17 件)
 これらの合計=166件
 すなわち、「医療・健康・介護」の項目で149件分の意見が非公開
環境・エネルギー(261 件)
 内訳
  資源対策や地球温暖化対策のための新エネルギーへの転換(132 件)
  安全な原子力発電の技術の確立や核融合による発電の実用化(27 件)
 これらの合計=159件
 すなわち、「環境・エネルギー」の項目で102件分の意見が非公開
交通・通信(98 件)
 内訳
  交通事故防止や交通事故ゼロにする自動車等の開発(26 件)
  インターネット充実や技術向上(11 件)
  多言語対応型の高性能翻訳機の普及やそれを利用した通信システムの整備(7 件)
  これらの合計=44件
 すなわち、「交通・通信」の項目で54件分の意見が非公開
食・食品(61 件)
 内訳
  食料の増産技術の推進(22 件)
  食品の安全性を高める技術の向上(14 件)
 これらの合計=36件
 すなわち、「食・食品」の項目で25件分の意見が非公開
安全・安心(55 件)
 
 地震予知の実現や耐震化の進展等、地震対策・防災技術の飛躍的向上 (16 件)
 防犯カメラ性能向上等による防犯や犯罪抑止のための技術の向上(6 件)
 これらの合計=22件
 すなわち、「安全・安心」の項目で33件分の意見が非公開
豊かな暮らし(24 件)
 内訳
  立体テレビ等ディスプレイ技術向上(7 件)
  家事等日常生活でロボットを利用 (3 件)
 これらの合計=10件
 すなわち、「安全・安心」の項目で14件分の意見が非公開
その他(97 件)
 内訳
  有人宇宙ロケット開発や宇宙エレベーターの建設、宇宙の解明等、宇宙に関すること(31 件)
  軽量化や省エネにつながる金属等の新素材等の開発(13 件)
  常時閲覧可能な図書館の電子情報化(5 件)
  これらの合計=49件
 すなわち、「その他」の項目で48件分の意見が非公開
結論:総計911 件のうち、425件の意見が抹殺されてます。
ほぼ半数じゃないですか。しかも、抹殺されたうちの一つは、動物実験代替法ですね(笑)。私も送ったし、私のまわりにも送ってくれた人、何人かいるのに。2700億を出そうというプロジェクトに、このお粗末な集計結果ですか。
採択されていた案件の中には、代替法にも関係しそうな技術はあったわけですが、望んでいる目的が違うのだから、パブコメの結果くらい勝手に取捨選択しないで公開してほしいですよね。もちろん、パブコメで意見があっても、研究している人から応募がなければ採択もありえないわけではあるんですが、こういうやり方は納得いきません。
しかも、公開された意見の半分以上は、いったん採択された30件のいずれかの研究に関係していると思います。「やらせで意見を送らせたんだろう」とまでは言いませんが、採択する予定の30人の研究にすり合わせた結果の発表だったのではないかと、やはり疑ってしまいます。もしくは、採択する予定のテーマが、意見のうちのごく一部に限られてしまうように見えるから、ある程度公表する意見数を絞ったか。
(憶測で申し上げて大変申し訳ないですが、隠されている部分が何だったのかわらないから勝手な憶測を呼ぶわけなんで、きちんと公開していれば、こういうことは言われずに済むはずです。)
それにしても、公開されている部分だけを見ても、パブリックコメントの意見は割と生活密着型の表現ですけど、いったん採択されて不採択になった30件の研究の内容を見ると、なんだか大風呂敷というか、そういうものを国民は本当に望んでいるんだろうか?と疑わざるを得ないものも中にはあります。
率直に言って、90億円かけてする価値がある研究なのか、と。(動物実験がどうこうは関係なくです)
数千万くらいの規模ならともかく…ぽしゃったら、こういうのは責任はどうなるんですかね。
ライフサイエンスの部分に関しては、そもそも、確か内閣府のライフサイエンスPTで私、「ライフサイエンスの研究にはそれほどお金はかからないんだ」といった内容の発言を聞いたことがあります。
つまり、ライフサイエンスは意外と、100億円を超えるようなプロジェクトにはならないんだ、と。100億を超えるようなものは、物理科学で巨大な施設が必要なものであるとか、ハード面などにお金のかかる研究等に限られるという主旨の内容の話だったと思います。
だから、90億円を配るのならライフサイエンスはあんまり入ってこないだろうなと思っていたのですが(実際そういう報道もあったし)、でも意外と入ってましたね。どういう力学で決まってたんですかね・・・
もう不採択になっているし、もっと細かくして配分するそうなので、もっと現実的な結果になってほしいと思っていますが。
ちなみに、不採択理由を見ているとけっこう面白いです。前代未聞?のPDFはこちら。(なんだか、理由さえつければ、採択も不採択も役所の自由自在に思えますね。でも、すごく当たってる感のある不採択理由が並んでいるのが圧巻です(笑))
それにしてもパブコメは・・・マジメに細かく公表している動物愛護関係のパブコメに慣れているせいかもしれませんが、本当に、ほとんど作為的とも思える結果に思えましたね・・・。
水産庁なんかも、私の周囲で「送った」と言った人数より明らかに少ない人数で結果公表していたので、電話で聞いたら「同じ意見は一人で換算します」などと平然と言っていたことがあったし(いくらなんでも、それは絶句モノでしょ)、そもそも役所ごとにやり方が違うのが問題なのだとは思いますが。
参考:
最先端研究開発支援プログラム
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/index.html
IgEの発見者が語る、最先端研究開発支援プログラムの問題点
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009090767581
続報、政権交代、バイオプロジェクトにも既に影響、2700億円プロジェクトの
選考発表がずれ込む、有力議員落選も影響か
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009083167417
民主党鈴木議員、「90億円×30人は国会で審議していない」
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?id=20064816
2700億円プログラムの最終段階で落選した30件の不採択理由が公開に
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009091667801
<先端研究費>700億円減額 支給対象者数は大幅に増
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091007-00000022-mai-pol
最先端研究開発支援プログラムは菅大臣の専管事項に、30人に2700億円を配分する実務の検討は延期中
http://biotech.nikkeibp.co.jp/bionewsn/detail.jsp?newsid=SPC2009092567960