ツイッターでもつぶやいたんですが、動物実験における出版バイアス(パブリケーション・バイアス)についての論文が最近話題になっています。
Publication Bias in Reports of Animal Stroke Studies Leads to Major Overstatement of Efficacy
脳卒中の動物実験の論文には出版バイアスがかかっており、有効性が大きく誇張されている

http://www.plosbiology.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pbio.1000344
失敗した動物実験の結果は表に出てこないとはよく言われていることですが、出版バイアスというのは、まさにそのことに深く関係する問題です。動物実験に限らずですが、いい結果が得られなかった研究というのは論文として世に出ることがないので、世に出た論文だけで判断すると正しく判断できない、(過大評価の方向へ)バイアスがかかってしまっている、ということなんですね。Wikipediaにも項目がありました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E7%89%88%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B9
また、上記の研究については、「ネイチャー」のニュース欄などでも紹介されています。
Animal studies paint misleading picture
動物実験がまぎらわしい図を描く

http://www.nature.com/news/2010/100330/full/news.2010.158.html
失敗した動物実験の結果が公表されていないために、治療法の効果は3割ほど過大評価されているとのこと。この研究をしたマルコム・マクラウドさんは、動物実験を否定しているわけではないのですが、このように述べています。
「否定的な結果が出た動物実験の報告をしないのは、非倫理的である。動物の浪費や、早まった臨床試験につながるからだ。研究を公表しないということは、病気についての人類の知識に貢献しないということだ。」
同じ方の、もうひとつの論文。
Can Animal Models of Disease Reliably Inform Human Studies?
疾患モデル動物は、ヒト研究へ信頼できる情報を渡しているか

http://www.plosmedicine.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pmed.1000245
まったく読みきれていない私ですが^^;、ヒト臨床研究での治療法の効果を予測するのに、動物実験の価値についてはいまだ議論があると書かれています。