ドクター・ラット (ストレンジ・フィクション)

ドクター・ラット (ストレンジ・フィクション)

  • 作者: ウィリアム・コッツウィンクル
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/03/16
  • メディア: 単行本

日本がこんな状況のときに、小説の紹介ですか? と思われそうですが、読んでみたら、今読むのがぴったりすぎのカタストロフ小説でした。orz これじゃあ臨場感ありすぎさ!? (注:原発は出てきませぬ)
この本、何年も前に英語版を買った話を日記に書いたような気もするのですが、実は途中で読むのを止めてしまっていました。このたびめでたく邦訳が出たということで早速購入してみたところ……どこで読むのを止めちゃったかも思い出しましたよ。
だってさ、残酷な話のオンパレードなんだもん! これじゃ、読んでられないよ!という人もいるかもしれません…。
といっても、動物が人間にされていることについては全部が現実なのがまたすごいところでして。確かアニマルライツの団体のサイトでも誉めていた記憶がありますが、さもありなんという内容です。
特に動物実験については、これでもか、これでもかですから! (あ、今ドン引きされたよーな気もするけど…読んでー) 
書かれたのは1970年代で、話自体は単純な話と言ってしまえばそうなのかもしれないですが、なかなかの迫力です。世界幻想文学大賞を受賞していたんですね。知らなかった。こういう小説に賞を出すなんて、懐深すぎます。
日本で長らく翻訳が出なかった理由も、なんとなくかんぐってしまいますねえ…。まあ、ウケなさそうっていうのもあったんだろうけど。
こういう、現実を突きつけてくる小説も、日本でウケるようになるといいなあ。
科学技術が巨大地震にもろくも敗北した時期、しかも被災や計画停電で動物実験が止まっている研究施設もあるこの時期に解禁が重なったことに、何やらめぐり合わせを感じてしまいます。
追記:この本の中にはいろいろな論文の出典と思われるものが記されているのですが、中に一つだけ日本発のものがあり、そこに書かれている発行者は、おそらく「日本学術会議」の誤訳であろうと思われます。
その出典の出版年として書かれている年に、日本学術会議から関連するテーマのレポートが出ているのは確かなようなので、もしかしてこの本に出てくる出典ぽい記述は、すべて現実の論文なのかな~と思いました。(少しひねって書かれている可能性があります)