先日、日本学術会議の主催で開かれた「生命科学の進展に伴う新たなリスクと科学者の役割」という学術フォーラムを聞いてきました。
基調講演を聞くことができず、また関係なさそうな話題も混じっていたので主旨が明確にされていない印象を持ってしまいましたが、要するに、今年12月に生物兵器禁止条約の運用検討会議(5年に1度)が開催されるので、それに向けて国内でデュアル・ユース問題を議論する場を設けましたよ、という実績作りのためのイベントだったようです。
デュアル・ユースというのは、人類の福利・平和のためになされている研究(本人たちがそう思っている研究)であっても、そうではない目的に利用される可能性があることを指しています。平和利用と軍事利用の両面性をもつ科学技術はさまざまあるわけですが、特にライフサイエンスにおいては、マウスポックス・ウイルスの遺伝子組換え実験のように、本人の予想とはかけ離れた恐ろしい結果がいきなり出てくる可能性も高く、ふだんからこの問題について考えておく必要があるというわけです。想像もつかない甚大な被害が出る可能性もありますしね…。
また、ライフサイエンス研究というもの自体が、そもそもどちらの目的でなされているものかすら外目には検証できず、このデュアルユース問題をを生物兵器禁止条約でどう扱っていくか、議論が続いているようです。
これは、一部の「危なそうな」研究の問題ではなく、全ての研究にその可能性があるという意味で問題になっています。
それにしても生物兵器禁止条約は……生物多様性条約には入ってないあのアメリカが率先して主導してできた条約なんですね。生物兵器の開発のめどが立たないということで、むしろ条約によって他国の研究も禁止しようという魂胆だったそうです。うーん、ちょっと身勝手? でもこの条約の主旨はすばらしいので、思わぬ軍事転用などがなされぬよう、ぜひ議論を形にして行ってほしいと思います。
ただ、「あーこれもまた動物実験と同じだ」と目が点になってしまったのですが、東工大の「合成生物学」(!)の研究者が、自由な研究が阻害されるから「規制してほしくない」といきなり言っていました。
よく言えば、無邪気な少年のままというか……(絶句)
この問題に危機感を持っているように感じられたのは、むしろ外務省や防衛医大の人のほうでした。(防衛医大の人の話は結構面白かった)
外務省の人は「研究者の人は自分のやっている研究は悪いものだとは思っていない。だから認識してもらう必要性がある」とはっきり言っていて、少しほっとしました。
(規制ではなく教育でというのがこのシンポの主旨だったのでしょうか、よくわからないのですが)
それにしても、「合成生物学」には、生物兵器がどうこう以前の問題を感じてしまいますね(;´д`)。いくら大腸菌とはいえ、点滅させるとか何だとか、機械のように扱われる様は……もはやそこには生命への畏敬ののようなものはまったく感じられません。なぜ実際に合成してみる必要があるか、例を出しての話があったのですが、全く実際に作ってみる必要はない例えに感じられました。
今打っていて、このツイートを思い出します。
http://twitter.com/#!/hirakawah/status/113914548842528769
もうすでに、生きることを欲してない世界が来てます…
しかも東工大は、情報開示度については、今まで市民団体が開示請求した中でも最悪レベルであり、現在裁判係争中の大学です…。
その上に「規制してほしくない」では、何かあったときに社会的責任を果たすつもりがあるのか、疑問に感じます。
……と生物兵器の話題でしたが、以下は軍事目的の動物実験についての緊急署名です。
※追記:この実験は、中止が表明されました! 署名はサンキューメールの送信になっています。よろしくおねがいします。
アメリカ軍のサルの実験について、PCRMが署名を行っています。詳しくは下記のブログをご覧下さい。
至急。米軍の残酷な猿の動物実験と毒殺を止めさせるためにネット署名を送信してください。
http://blog.goo.ne.jp/grandemperor/e/4b6f8c8c321adaceafb87de30887d30b
映像です。サルが痙攣するというのは、こういうことなんですね…。

PETAの署名もありますがアメリカ国内のZip/Postal Codeが必要です。
https://secure.peta.org/site/Advocacy?cmd=display&page=UserAction&id=3813&autologin=true
軍事目的の動物実験についてはこちらもご参照ください。
http://www.all-creatures.org/ha/peacewalk.html