『不思議の国のアリス』と生体解剖
ちょっと息抜きに『不思議の国のアリス』の著者、ルイス・キャロルの伝記でもご紹介しましょう…と思ったのですが、やっぱり出てくるんですよね、生体解剖批判の話題が^^; 昔、『不思議の国のアリス』を読んだだけでは、私はそれほどルイス・キャロルの生き物好きには思いいたらなかった記憶があるのですが、ルイス・キャロルというのは、子どもたちを思わず動物好きにさせるような人物だったようです。
生体解剖批判は、主に下巻の178ページあたりからです。その前に、ダーウィンの学説に興味を示しつつも、ダーウィンの「動物虐待は妥当だ」という意見を批判していた話が下巻120ページあたりにも出てきます。
ルイス・キャロルが生体解剖批判の手紙や論文を新聞や雑誌に掲載していたのは、1875年ころのようで、中にはとても辛らつだったので掲載してくれるところがなく、個人出版したものもあったそうです。生理学研究への研究助成金にも反対しましたが、敗北。今度は法律制定へ立ち上がったと書かれていました。
1875年、ソールズベリー卿にあてて書いた手紙には、「法律制定はぜひとも必要です。―拷問される哀れな動物たちの利害はさておき道徳的に退廃し獣化する医学生のために」と書かれていたとか。ルイス・キャロルは、人間/男性による動物への拷問は、ひいてはより弱い存在/女性や弱者の奴隷化・実験動物化につながると考えていたようです。(ある意味、慧眼?)
イギリスではその直後の1875年6月22日、生体解剖に関する王立委員会が創設され、翌1876年の動物虐待防止法による動物実験に対する初の規制につながりました。
なんとも130年以上前の話ですが、日本はこういうところはスルーで「科学」ばっかりせっせと輸入したということですね…。
ルイス・キャロルの死は、国民的人物の死として記されていましたし、キャロルの発言力というのは、当時のイギリスではなかなかのものだったのではないかと想像します。『不思議の国のアリス』は、生前にすでに広く読まれていたようですが、職業はオックスフォードの数学の先生です。