先日、生物多様性条約締約国会議1年前プレシンポジウムに行ってきました。そこで紹介されていた本です。

「食」をめぐる現在のシステムの諸問題についてはもちろんですが、それを解決しようとする2つの考え方の潮流について分析されていたのが興味深かったです。

その2つの潮流とは、一つは、遺伝子組換え作物に代表されるような「ライフサイエンス・パラダイム」によるもの。資金力を誇る企業や、その資金力の影響を受ける政府などは、すでにこちらのほうへ流れていますね。そしてもう一つは、オーガニック食品に行きつくような「エコロジカル・パラダイム」によるもの。

エコロジカル・パラダイムはしばしば、ライフサイエンス・パラダイム側の食品企業の科学者などによって、非科学的であるとか単なる自然信仰であるとか中傷を受けるわけですが、実際には、生態学を重視するエコロジカル・パラダイムもまた、生物科学に基づいた立場だとはっきり書かれているのは、痛快でした。

循環や生態系、持続可能性などについてまで考えを広げるなら、多少ローテクに見えても、こちらの道しか本当は残っていないのではないかと思うのですけどね。

この2つの立場の違いは、日々痛感するところですが、こうやってネーミングされると、とても理解しやすくなる感じがします。

この本が紹介されていたシンポジウムでも、まさにこの2つの考え方の違いが背景にあるのでは?と思われる質疑応答がありました。

データなどが多岐に渡っていて、薄い割には読むのが大変な本に感じましたが、人間だけが生き残ればよいというシステムは、いつか必ず破綻するな~と思わされる一冊でした。