2009年、EU域内での化粧品成分の動物実験禁止がになったEU。日本に対してどのような要望を持ってきたのでしょうか。日・EU規制改革対話のEU側対日要望項目から化粧品の部分を抜粋してみました。

外務省:日・EU規制改革対話のページ
駐日欧州連合代表部:規制改革対話のページ

現在の日・EU経済・通商・投資関係 (2013年1月現在の駐日欧州連合代表部サイトの記載)

化粧品

欧州の化粧品は日本市場において高い評価を得ている。同時に、日本とEU政府は市場の状況を改善するために、以下に示す分野における協議を行っている。

a) EUは、化粧品基準の国際調和を図るために、化粧品の調和と国際協力(CHIC)のための非公式な多国間協議の再開を提案している。

b) EUは、「医薬部外品」に分類される化粧品の明確化と(動物試験に対する)代替試験の利用の受け入れが必要と考える。医薬部外品には、脱臭剤、染毛剤、育毛剤の一部、脱毛剤、薬品入り歯磨きの一部などが含まれている。

2010年 日EU規制改革対話東京会合(概要)

(7)医療・化粧品
(ニ)化粧品(EUで採用されている動物実験代替方法の受入れ)

日本の規制改革に関するEU 提案(仮和訳)2009 年10 月2 日版

6.4 化粧品

ハイライト:
2009 年3 月11 日からEU では動物実験が禁止されている。EU は日本が代替試験法を規制の枠組みの中で受け入れる明確なコミットメントを示すよう要請する。

経緯: 繰り返し提起されてきた案件。2008 年の規制改革対話で議論される。2008 年12 月にEU に提出された日本政府のICATM 作業を日本が支持しているとの回答は、EU 側の懸念を取り除くものではない。

背景
動物実験―化粧品貿易
2009 年3 月11 日より代替試験法の有無を問わず、成分もしくは複合成分に関する動物実験が禁止されている。動物実験が適用された人を対象とする化粧品もしくは化粧品成分の販売は3 つの試験のエンドポイントを除き、EU 域内で事実上禁止されている。これらのエンドポイントについては、2013 年3 月が期限となっており、欧州委員会は2011 年に見直しを行う。販売の禁止は輸入品も対象となっている。

動物に代わる代替試験法は極めて重要である。EU は、日本が主要な役割を果たしている代替試験法の国際ハーモナイゼーションへの協力が進んでいることを歓迎する。この点で、ICCR(化粧品規制協力国際会議)の下でICATM(代替実験に関する国際協力)5の枠組みを構築することを提唱する2009 年4 月27 日の「協力に関する覚書」は重要な一歩である。

EU は、「ICATM」における国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター(JaCVAN)の積極的な参加と日本政府のJaCVAN の活動に関する支持を歓迎する。

2009 年9 月に東京で開催されたICCR-3 の会合はこの分野での協力をさらに推進させた。EUとJaCVAN は双方の規制制度の中で代替試験法の受け入れを継続していくことへのコミットメントを示した。この点に関し、参加者はICCR の各管轄分野での規制受け入れ手続きに関する白書をまとめることを合意した。

EU は、ローマで開催された最近の自然科学における代替試験法と動物の使用に関するする第7回国際会議でも実証されたように、代替法の研究への日本の積極的な関与を歓迎する。

以上の点からEU は、ICCR の場において、また二者間で日本との協力が進んでいるのは極めて重要なことであると考える。一貫した有効性確認作業はこの段階での見解の相違を排除し、首尾一貫した規則の導入を可能にする。

こういった意味で、EU は日本政府にEU の産業界からの具体的要望があった際、EU で受け入れられている代替試験法を承認するよう要請する。

機密保持協定

厚生労働省と欧州委員会の企業・産業総局は化粧品規制の分野では特に健康と安全を保護するために、さらに化粧品の規制の分野での協力の強化をしなければならない。これはICCR の枠組みにおいてすでに達成されている重要な協力体制を補完することになろう。

交換文書の形態をとる機密保持協定案が提出されたが、欧州委員会は日本側より現在の作業状況と署名へ向けての日程に関する説明を求める。

改革提案

EU は、日本政府が以下の提案を考慮するよう要請する。

a) 化粧品の動物実験に代わる代替試験法の規制制度上の受け入れに向けての具体案を実施すること。
b) 産業界からの具体的要望があった場合、EU で受け入れられている代替試験法を承認すること。その際、懸念があればEU に報告すること。
c) ICCR-3 で合意されたようにICATM の枠組みの中での有効性確認作業に積極的に協力し、ICCR の各管轄分野での規制受け入れ手続きに関する白書の編纂に協力すること。
d) 機密保持協定に関して、日本の現在の作業状況と署名へ向けての日程を明らかにすること。

日本の厚生労働省がこの協定に一刻も早く署名することが肝要である。

その他の関連対話: 現在準備中の欧州委員会の関係総局と日本の厚生労働省間の機密保持協定

5 ICTAM に関する覚書は非・縮小動物毒性試験法の科学的検証における国際協力と調整を促進する。欧州代替試験研究センター(ECVAM)と日本の安全性生物試験研究センター(JaCVAN)を含む4 つの国際機関の代表がこの覚書に調印。

ちなみに2009年域内動物実験禁止の前のものも一部抜粋します。

2004年11月・平成16年度規制改革対話 EU側対日要望項目 日本語版より抜粋
(強調は引用者)

3.1.4. 化粧品

日本の化粧品市場は、世界で第3 位の規模であり、EU 企業は日本市場でブランドを確立している。EUは、2001 年の化粧品に関する法令の改正を、これにより大部分の製品分類において製品安全性にかかわる責任の所在が製造者に移されたという点で、歓迎している。よって、現行の規制の枠組みは、部分的にEUの規則ともなっている規定、すなわち、ネガティブリスト、限定されたポジティブリスト、成分の完全表示の活用を含んでいる。

既に先般の議論の中で指摘されたように、日本のポジティブリストは依然として欧州で採用されているものと大きく異なっており、現在においても調和を進めるメカニズムは確立されていない。いくつかの保存剤や太陽フィルター、またはコールやタールを使用して作られる顔料はEU のポジティブリストに掲載されているが、日本では禁止されている。日本では、成分リストの改定には煩雑な要件があり、時間もかかるため、新しい成分のポジティブリストへの掲載は非常に遅いペースでしか行われない。これらの要件は、EUで何年にもわたって大量に安全に使用されていることが証明されている製品であるにもかかわらず、しばしばEUで済ませた広範な検査に重ねて、再度の検査を求める。市場に出るのが遅れるほか、このような慣行によって、日本市場での製品の再編成が大規模で費用のかかるものになってしまうという点もある。特にこれは、双方の試験結果および関連データーの受け入れの促進を規定している日・EU 投資促進協力のための枠組みの中で取り組まれた問題である。従って、化粧品の問題は、投資協力活動の実施にあたって重要な課題である。

EU は、化粧品の分野での規制および要件の国際的調和を目的とした諸外国との協議をさらに進める、とする日本政府の意向を歓迎する。

日本における「医薬部外品」の分類について、EU 企業は未だ懸念を抱いている。

脱臭剤、染髪料、育毛剤、脱毛剤、薬用化粧品(主に美白剤)、薬用ハミガキから生理用ナプキン、店頭販売される健康飲料まで多岐にわたる品目が医薬部外品として分類されているが、このうち多くのものは外国においては「普通」の化粧品として分類されている。改定により同分類の対象となる製品の範囲が縮小はされたものの、依然として問題は残っている。「医薬部外品」の分類基準は明確でなく、(すでに「普通の」化粧品に混入される際に承認されている成分も含め)医薬部外品に混入される新しい成分の承認は、ほとんど打ち勝ちがたい障害に直面しているため、この分類の抜本的改革が必要と思われる。日本の製品分類を、既に確立されている国際基準へ調和させることが、1999年3 月に発表された規制緩和促進計画の完全実施の第一歩となるであろう。

動物試験を科学的根拠によって裏付けられた代替試験へ移行する努力が続けられているなか、日本政府がOECD ガイドラインに準じた非動物代替試験から得られた安全性データを承認すると正式に確認したことをEU は歓迎する。試験方法の相互承認は、国際調和にとって大きな利益であると考える。しかし現時点でEUは、日本が方針を変更し、動物実験に基づいたデータに固執する姿勢を改めたことを確認していない。

優先提案:

a. EU は、脱臭剤、染髪料、パーマ製品、脱毛剤など一般的な製品が化粧品として規制されることを要請する。そして、「医薬部外品」ですでに承認されている活性成分について完全な透明性を確保するよう日本政府に要請する(染髪料、パーマ製品においては既に発表済み)。専門名称リスト、仕様書、服用量の公表が新医薬部外品登録簡便化の第一歩となるだろう。

b. EU は日本政府がポジティブリストとネガティブリストの国際調和を図り、またこうした品目リストに新成分を追加する場合の試験および承認基準の相互承認を目指し、EUの規制当局と協議を進めることを改めて奨励する。

c. 化粧品について非動物代替試験データの受け入れ条件(その具体的根拠も含む)に関する情報の提供を要望する。

 

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