「日・EUビジネス・ラウンドテーブル(BRT)提言に対する日本政府よりのレポート(平成27年4月)」より、動物実験に関係する部分を抜粋。

注:本レポートの記載内容は、原則として平成26年12月31日時点での状況を踏まえ、作成されている。


(3)化粧品

BRTの提言
BRTが要請するのは、薬用化粧品、いわゆる医薬部外品(認可原材料の開示、標準的な申請期間)の承認に関する共通規則、効能表現や広告に関する共通規則、化粧品への使用が認められる原材料の共通ポジティブリスト、そして動物実験の代替案に関する共同基準の確立である。

<直近の進捗状況>
これまでの進展はわずかである。

<背景>
EUの化粧品メーカーは日本での事業拡大を常に困難に感じている。これは、日本とEU間での原材料基準や認められる効能の違い、そして、いわゆる「医薬部外品」に関する日本特有の製品認証手続きに起因する。

現在までの取り組み
医薬部外品である薬用化粧品に関しては、有効成分リスト、添加物リストを作成し公表してきた。2014年7月30 日付けで、審査機関である医薬品医療機器総合機構にて薬用化粧品等医薬部外品に配合されている添加物についてとりまとめた規格集を公表した。
医薬部外品の承認審査の迅速化等の方策については、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構及び業界と定期的な意見交換会を行っており、承認審査の迅速化の一環として、2014年5月2日付けで薬用化粧品(シャンプー、リンス)の承認審査に係る留意事項、承認申請書作成上の留意点を公表した。また、2014年6月13日付けで化粧品基準及び医薬部外品の製造販売承認申請に関するQ&Aを公表した。
動物実験代替法については、OECD により採用されている代替法のみならず、ICATM(International Cooperation on Alternative Test Methods)の枠組みによる欧州、米国、カナダ、韓国の各評価機関との協力の下、JaCVAM(Japanese Center for the Validation of Alternative Methods)が検証した試験法を受け入れている。

今後の見通し
薬用化粧品については、承認審査の透明化、迅速化等を目的として、引き続き、定期的に意見交換会を実施していく。
また、OECD により採用されていない動物実験代替法について、適切なデータを付した具体的な要望がある場合には、JaCVAM の活動等を通じ、日本として評価、対応を検討したいと考えている。


(6)動物用医薬品

BRTの提言
EUで既に認可されている動物用医薬品が日本で認可されるには、さらに厳しい規制と不必要な試験が求められる。その結果コストが上がり、遅れが生じている。こうした現状を踏まえて、BRTは以下を提言する。
a) 日本政府は、動物用医薬品の承認手続きを迅速化し、国内の規制と国際基準を完全に調和させるため、可能な限りのあらゆる手段を講じなければならない。
b) 日本は、動物用医薬品が日本とEUの市場で相互に承認されるよう努力する必要がある。これにはまず、動物用医薬品の「製造および品質管理に関する基準(GMP)」の相互承認の実現が求められる。さらに動物用ワクチンに関する規制の整合化、統一GMP体制下での製品適合性の確保に向けた取り組みが求められる。
c) 日本では申請時に、英文の申請資料に日本語の概要添付が求められているが、英文資料の受理の促進を要請する。

<進捗状況>
これまでの進捗は限られている。2012年12月3日、農林水産省(MAFF)は、日本動物用医薬品協会に10項目の改革アクション・アイテムリストを提出した。これらの項目を産業界は歓迎しているが、上に記した調和の定義からはまだかけ離れている。上記10項目のうち4項目については改革が実行されているが、残る6項目の実行スケジュールはまだ作成されていない。

<背景>
日本は、動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力会議(VICH)に参加しているが、国際的な整合化された基準の実行が遅々として進まないことが多く、日本特有の要素が加味されている。農林水産省は英文資料の使用をある程度促進させているものの、それと同時に、上記のように日本語の概要添付を要求している。

現在までの取り組み
農林水産省は、日本動物用医薬品協会および製造販売承認取得者と頻繁に意見交換を行いながら、動物用医薬品の承認審査の迅速化に精力的に取り組んできた。
(別添1を参照。2013~2014年の間、意見交換会を計9回開催。)提案書のWP-A/#06は、10項目の改革アクションプラン・アイテムリストのうち、6項目の実行スケジュールは作成されていないと述べているが、この指摘は事実誤認であり、甚だ遺憾である。農林水産省は、10項目のうち、7項目を既に実行し、残り3項目のうち1つは今年度中に実行する予定であり、2つについても積極的に検討している。(別添2を参照。10項目を含む承認審査の迅速化に関する20の取組及び実行スケジュール。)
さらに、農林水産省は、改革アクションプランの進捗に関する英文資料を作成し、外資系メーカーの日本支社に対して提供するとともに、各社から本社へ報告するよう促した。農林水産省は、積極的に関連情報を提供してきているが、EUの産業界が、日本からの情報を活用していないことは、非常に残念である。
農林水産省は、VICHに積極的に参加し、その活動に大きく貢献している。そして、VICHで作成した基準を国内の承認審査に確実に反映し、海外から導入される動物用医薬品の承認審査の迅速化を促進してきた。例えば、2013年10月に、農林水産省は、生物学的製剤、並びにフルオロキノロン系合成抗菌剤及び第三第四世代のセフェム系抗生物質等の人の医療上極めて重要視される抗菌性物質を有効成分とする製剤といった例外を除き、VICHガイドライン(VICHに参加しているEU、米国及び豪州のGood Clinical Practice (GCP))に準拠した海外での臨床試験のみでも日本での承認申請を認めることを決定した。我々が知る限りこれは、VICH参加国である日、米、EU、豪のうち日本だけで実施されており、承認審査の迅速化で非常に大きな効果が期待される。このように、日本はVICHを通じたハーモナイゼーションを積極的に進めており、提案書の背景における指摘は事実誤認である。
農林水産省は、承認審査の迅速化に取り組み、実質的に大きな成果をあげてきたことを確信している。農林水産省は、今後も真摯に改善に取り組んでいく。また、日本の実情を十分に研究した上での合理的かつ具体的な提案であれば真摯に検討する。
日本は、承認申請資料の大層を占める試験資料について、英文によることを認めている。しかしながら、日本語の概要の添付は、承認審査を迅速に進めるために必要である。VICHにおいても、試験資料作成に使用する言語は決められておらず、承認を受ける国の言語の資料を求めることに、なんら非合理性はない。
なお、理解しやすい承認申請資料の概要書を申請者が作成するためのガイドラインを発出し、申請者が効率的に概要書を作成できるようにしている。
日本で承認され、販売される動物用医薬品は、その用途に適した品質管理及び製造管理を確保するため、日本のGMPに適合することが必要であるが、その要求事項は、EUの動物薬のGMPに比べ過重なものではなく、GMPの相互承認の制度がないことが、EUで承認された動物薬が日本で承認される上での障壁になっているとは考えられない。
したがって、「これにはまず、動物用医薬品の「製造および品質管理に関する基準(GMP)」の相互承認の実現が求められる。」との指摘は、妥当ではない

今後の見通し
VICHの活動に関しては、現在も約20件のガイドラインの作成作業が進んでおり、日本はVICHの調和のルールに従い、VICHガイドラインを国内で施行していく。農林水産省が日本動物用医薬品協会に2012年12月に提出した10項目の改革アクション・アイテムリストの未実施の残り3項目に積極的に取り組んでいるところである。
我々は、EUを含む主要国間で、医薬品及び動物用医薬品の相互承認をしている国々はないと理解している。試験データについては相互に受け入れることは可能であるが、各国で病原微生物の生物学的性状、薬剤感受性の状況、家畜の飼養状況等が異なることがあり、試験データの評価を統一することは現実的ではない。もし、合理的、かつ、実現可能な審査資料の評価を統一する方法があれば、具体的に提案されたい。


9.アニマルヘルス製品に係る承認規制要件の調和と合理化の促進(WP-B / # 12* / E to J)

BRTの提言
食用動物用医薬品の承認プロセスは、農林水産省(MAFF)による一連の審査の後、食品安全委員会(FSC)及びMHLWによる審査が続き、特に煩雑である。決定基準や審査プロセスのその後の段階については提供されず、結果的に審査期間が遅延し、さらに他国の監督官庁と異なる結論が出される事案もある。
日EUBRTメンバーは、動物医薬品等の承認規制要件に関する一層の調和及び合理化を提案する。MAFFは、先に提言した「1-1-1コンセプト」への一つの道筋として、関係諸国との承認規制要件の調和を開始すべきである。
日本の農林水産省は、2013年10月3日の薬事法改正に関する最初の説明会において、農林水産省、食品安全委員会及び厚生労働省が家畜用製品(例・審査機関間での並行協議の導入等)の審査期間短縮に関する協議を開始したことについて紹介したが、本件に関する行程については示さなかった。
臨床試験については少なくとも2箇所で実施され、かつそのうちの一つは日本での実施がなされるべきである。

<直近の進捗状況>
一定の進捗が見られた。日本の農林水産省は通知において、データの信頼性を担保するために、それら臨床試験が海外のGCPに沿って行われていることを条件に、諸外国の少なくとも2箇所において実施された臨床試験データを以て販売承認を与えることを明らかにした。しかしながら、すでに第一選択薬となっている生物学的製剤やニューキノロン系薬剤に関する臨床試験の実施は非効率的であり、今回の新たな通知を有益なものたらしめることはない。

<背景>
世界的な新動物医薬品の承認に先立ち、欧州やアメリカ合衆国では厳格な審査プロセスでの審査が既に行われている一方で、日本では薬事法下において、承認前に多くの追加試験が必要とされている。アジュバントワクチン等のバイオテクノロジーに基づく革新的な動物医薬品の規制要件は、日本で特に厳しい。規制要件の調和を進展させることで、動物や動物飼育者による、EUで承認されている革新的なアニマルヘルス製品へのアクセスは、確実に改善するだろう。
もう一つの重要な側面は、動物愛護へのマイナス影響である。規制要件が十分に調和されていないために、医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP)や動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力会議(VICH)のような厳格な枠組みを完全に順守した上で行われている全く同一の試験結果が、すでに利用可能であるにもかかわらず、日本では、当該企業がいくつかの動物試験を繰り返し実施することが求められている。動物用医薬品の分野において、動物福祉に関する認知度は十分であるとは言えない。日本はより多くの海外データや代替手法の受け入れによって実験動物の最小化も進めるべきである。

現在までの取り組み
最初に、「臨床試験については少なくとも2箇所で実施され、かつそのうちの一つは日本での実施がなされるべきである。」というコメントの意味を明確にされたい。
農林水産省は、海外臨床試験の受入が、承認審査の迅速化に非常に効果的であると考え、2013年10月に、生物学的製剤、並びにフルオロキノロン系合成抗菌剤及び第三第四世代のセフェム系抗生物質等の人の医療上極めて重要視される抗菌性物質を有効成分とする製剤といった例外を除き、VICHガイドライン(VICHに参加しているEU、米国及び豪州のGood Clinical Practice (GCP))に準拠した海外での臨床試験のみでの承認申請を認めることを決定した。
しかしながら、「臨床試験については少なくとも2箇所で実施され、かつそのうちの一つは日本での実施がなされるべきである。」というコメントを文字通りに解釈すると、こうした努力を否定しているように見える。
さらに、EUは海外で実施された臨床試験のみでの承認申請の受入を認めているのか確認したい。
なお、日本と海外で、病原微生物の生物学的性状や薬剤耐性菌の出現状況が異なる場合があるため、生物学的製剤並びにフルオロキノロン系合成抗菌剤及び第三第四世代のセフェム系抗生物質等の人の医療上極めて重要視される抗菌性物質を有効成分とする製剤については、臨床試験において有効性を十分に評価するため、日本国内の1施設で実施された臨床試験を求めることとしている。

今後の見通し
現時点では、BRTの主張における妥当性が確認できず、明確な回答が困難である。なお、承認審査の迅速化に関する農林水産省の基本的な考え方については、WP-A / # 06 / E to Jの現在までの取り組みを参照されたい。