第159回国会 参議院厚生労働委員会 16号 平成16年05月13日

(前略)

○谷博之君 (中略)

 東京理科大学における実験動物の取扱いについてお伺いしたいと思っております。これはまた一昨日の文教科学委員会でもいろいろ細かく質問させていただいたわけでありますが、これは御案内のとおり、東京理科大学が昨年、千葉県の野田に薬学部を移転をいたしました。そして、生命科学研究所、それからこの薬学部、両方そうなんですが、いわゆる非臨床試験としてのこうした実験動物を飼育をして、そして当然それを医学、薬学の面で活用しているわけであります。

 ただ、この大学の実験動物の扱い方というのは、例えば、本来決められたところで飼育すべきところが施設の外のそういう建物で管理をされたり、あるいはまたその動物を簡単に持ち運びをして、結果、途中でその動物が逃げ出したり、あるいはまた繁殖記録等が全然取られていない、こういうふうなことがある。例えば、その実験動物を限られたスペースに飼育をする。そのときに、何十倍もの量の動物を本当に狭いかごに入れて飼育をするというふうなことで、結果的に食料、水も与えないということ、食料というかえさを与えないというようなことで飼育動物同士が共食いをするという、そんなような実態がこの薬学部の現場で行われていると、こんなようなことがその施設の委託管理業者から内部告発という形で今年二月に文科省に提出されております。

 この辺の内容については一昨日、私は文科委員会で聞いたわけですけれども、こういう内容を受けてお伺いをしたいと思っておりますが、こういう実態になった理由というのは、そもそも我が国に現在この動物実験に関する法制度が整備されていない。その結果、その適切な扱いは基本的に実験者の自主的規制、努力にゆだねられていると。そしてその結果として、現実にはこの点が不備のために、私たちは日本じゅうのどこでどんな動物実験が行われているのか全く知ることができないという状況に今あるわけですね。

 つまり、全国にこれだけの大学の薬学部があります。この薬学部はほとんどそういう実験動物をしています。そういうふうな実験動物の行っている大学の建物のすぐわきに住んでいる方々が、例えばいわゆる感染症の疑いのおそれのあるそういうふうな動物が逃げ出す、そういうことについてもそれはなかなか分からないと、こんなようなことで大変不安に思っている人たちもいるというふうに言われています。

 したがって、このような実態について厚生労働省としてはどのように把握をされておられるか、まずお伺いしたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 具体的な数字等、また事務局からも補足させますけれども。

 昨年の十月でございますか、この感染症法を改正をいたしまして、そして動物を疫学調査の対象として明記をするといったことを昨年したところでございまして、また、動物を媒介いたします四つの、四類の感染症につきましても、消毒薬とか動物の駆除等の必要な対処措置といったものを行えるようにすると、こういうことにしたわけでございます。

 御指摘のとおり、動物と人間と共通の病原体と申しますか、共通の病気もあるわけでございまして、やはり動物を飼育いたしまして、そしてそうしたことを研究をするということになりますと、その動物の管理というのが非常に大事になってくることは御指摘のとおりと私も思います。

 これは、薬学部だけではなくて各医学部でありますとか他の研究所にも共通する問題でございますが、多くの病院はこの動物の、実験動物の管理というものに非常に気を遣っておりますし、中には実験動物担当教授というのを作ったりというようなところもありまして、その遺伝的なものから、あるいはまた飼育の問題から、あるいは感染症の問題から非常に気を遣っているところがございますが、やはり実験の基礎になる問題でもございますしいたしますから、そうした意味からも非常に大事でございますし、今御指摘をいただきましたように周辺の住民との、皆さん方の間との問題というのも確かにこれは存在するというふうに思っております。そうした管理というものが、やはり行き届いた管理が行われなければならないことは間違いがございません。そうしたことにつきまして、我々も十分に今後注意していきたいというふうに思います。

○谷博之君 重ねてお伺いをいたしますが、この東京理科大学の問題については、その後、地元の千葉県の野田保健所が立入検査に入ったり、あるいはまた、今年二月以降、文部科学省も大学側からその辺の事情について聴取をしているということ、それらを受けて、この大学では五月に大学内部にそういう調査検討の真相究明委員会を作って、今その調査しておりまして、それを発表したいと、こういうところまで話は来ております。

 我々は、そういう中で、今年の二月に遺伝子組換え生物規制法という法律が施行されまして、この三十一条にはこういう疑いのおそれのある施設についての立入検査ができるという、そういうことが法律で裏付けられるようになりました。したがって、五月ごろということですが、大学側からそういう真相の内容が発表されると。その場合に、もし実験動物を飼育施設以外で飼育をしたり、逃亡の事実が過去にあったり、こういうようなことが現実に報告として出されたときには、今申し上げたような法律の三十一条を使って改めてこの大学に立入りをする考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(石川明君) 東京理科大学の動物飼育の関係のお尋ねでございます。

 ただいま先生からお話がありましたようなことにつきましては、現在、東京理科大学の調査委員会で調査が進められておりまして、これによって事実関係が明らかにされるものと考えておりますけれども、私どもの方でも東京理科大学から既に様々な形で事情を聞いております。

 それによりますと、過去において遺伝子組み換え動物が逃亡防止設備を備えていない実験室で飼育されていたというような事実があったということでございますけれども、現時点では改善をされておると。また、動物の逃亡があったことを示す事実というものは確認をされておらないと。それから、遺伝子組換え生物等規制法に基づいた措置、これは適切に現在取られておるというような報告を受けているところでございます。

 このため文部科学省といたしましては、法律に基づく立入検査を実施するというような必要性は今のところはないというふうに考えておるところでございますけれども、このような問題が再発しないように、同大学におきまして体制整備など適切に対応するということがまずもって重要であると思っておりますし、文部科学省といたしましてもこの点につきまして今後とも十分に注意を払っていきたいと考えております。

 なお、もし東京理科大学の調査委員会の報告書等におきまして、新たな問題が明らかになるような、そんなような場合におきましては、その内容に応じてこれまた適切に対応してまいりたい、このように考えております。

○谷博之君 この問題は、冒頭申し上げましたように、この大学のこうした実験動物の飼育の管理を委託された委託管理業者が、もう過去十数年にわたって具体的に学内であったことについて細かく事実を羅列をして文部科学省の方にそのことを内部告発しているわけですね。そういう非常に重大な私は問題であると思っていますが、文部科学省の側はかなり慎重にそれを対応していると思うんです。

 これは、私は国立大学の場合はそういうことはないと思いますね。私立大学であるがゆえになかなか腰が引けているというふうなこともあるのではないかというふうな気もするんですね。少なくとも動物にも一つの、人間の人権じゃありませんけれども、一つの権利があるんですよね。いわゆる人間の福祉もそうですが、動物にも福祉があります。そういうふうな貴重な実験動物をたくさん使ってたくさん殺せばいいんだということではないと思うんですね。そういう中で、やっぱりいかに人間の薬や生命を維持するためにその薬を作って、そういうふうな実験動物が犠牲になりつつ一つの薬ができてくるわけです。そういうことを考えたときに、現実にこういうふうな実験動物が、そういう事実はないとおっしゃっていますけれども、もしあったとしたら、これは私は非常に問題があると思うんですね。ですから、この五月の、あるいはそのころに出ると言われているこの大学側からの報告書、これをしっかりやっぱり私は見ていただいて対応していただかなくちゃ困るというふうに思っています。

 それから、大臣にもひとつやっぱりお話ししておきますが、先ほど、感染症予防法の改正、これ昨年のSARSを契機になされたと。それによっても感染する可能性のある動物が確認されなかった場合には対応ができないというふうなことになるわけですけれども、しかし近隣住民の皆さん方はこういう事実がだんだん明らかになってくると非常に不安が募っていくわけです。そういう不安が募った方々はどこへ行くかというと、一番手っ取り早いのは保健所へ行くんですよ。

 保健所はそれを受けて、昨年九月に野田保健所行きました。行ったときの立ち入った根拠は何かというと、動愛法なんですよ。動物愛護管理法という環境省の扱っている法律のそれを一つのてこといいますか、盾にして実際の現場に立ち入りしたと。しかし、それは残念ながら動愛法に違反するような事実はなかったということなんですけれども、しかし、そういう一つの法律の限界、仕組みの限界というのはありますけれども、いずれにしても近隣住民がそういう不安を感じて保健所に相談に行く。そうしたときに、いや、そういう相談は建前上対応できませんからと言うわけにいかないんですね。そこら辺のことも含めて総合的にこうした問題について今後どうしていこうとしているか、この点についてお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(坂口力君) 地域の保健所がそうした役割をやはり担わなければいけないだろうというふうに思いますし、今回の場合にもその保健所に御相談をいただいたようでございますから、これからもそうしたことがあるだろうというふうに、そうしたことに対応できるようにやはりしていかなければいけないというふうに思っております。

 で、地域住民の皆さんが、それによって何らかの感染症が起こったと、あるいは起こる可能性があるという御心配になりましたときには、やはりこの感染症の感染経路でありますとか症状、治療等の確実な情報提供をやはり行う。そこでどういう検査をしているのかということの情報も併せてそれは情報提供を行うということだろうと思うんです。全く感染する可能性のないことをやっているのか、それとも感染する可能性のある実験をその中で行っているのかというようなことを、やはり保健所はそうしたところともよく話をして、そして国民の皆さん方にそこが十分理解されるように報告をするという義務があるというふうに思います。

 それからもう一つは、この感染症が蔓延するおそれのありますときには、動物実験等の立入調査というようなこともこれはできるわけでありますから、そうしたことも念頭に置いて、そこでどういう実験が行われているかというようなことも十分に聞いた上でそうした調査も判断をするということになるだろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、これは地域住民の皆さん方の健康と大きなかかわりのある話でございますから、我々の方といたしましても、十分にそうした対応ができるよう保健所に対しましても、我々は、これはもうそこだけでなく全国の保健所に対しましてもそうしたことを、体制を整えるようにしたいというふうに思っております。

○谷博之君 ありがとうございました。時間が来ましたので、以上で終わります。

(以下略)

戻る