※イギリスで、日本の動物の扱い方がひどいという世論がかなり盛り上がっていた頃の国会質疑を4件pick upしてみました。

いずれも昭和48年に制定された旧「動物の保護及び管理に関する法律」(いわゆる動管法)が成立する前の国会質疑です。40年前のことですから、確かに状況は今よりひどかったと感じるところもありますが、ただ、指摘されていることの本質的なところはかなり今にも通じるような気がします。

また、この頃はちょうど環境庁ができた頃で、「環境庁ができたら、政府提案で動物愛護の法律を作ったらどうか」と、当時指摘されていたことにも驚きました。実際には議員立法で成立、総理府所管の法律となり、ほとんど意味のある運用がされないまま30年近い月日が過ぎ、最初の改正にいたりました。最初から環境庁所管だったらもう少し違ったのでは?と思わざるをえませんが、40年前といえば日本が公害問題で揺れるさなかです。動物愛護の人って、常に時代の先を行き過ぎているのかも……とも思いました。

加藤シズエさんは、女性解放運動で知られる方ですが、このほかにも、渡り鳥保護などについても何度も国会でとりあげていたようです。

 

第61回国会 参議院外務委員会 10号 昭和44年05月08日

(略)

○加藤シヅエ君 私は、外務大臣がせんだって英国においでになりましたその時期と前後いたしまして、日本において動物、特に飼い犬がたいへん虐待されているということが、英国の六百二十万部も発行部数がある「ニューズ・オブ・ザ・ワールド」というのにだいぶ前に出て、さらに最近四月十三日付の「ザ・ピープル」という大衆新聞、日曜大衆紙に――これは五百五十三万部だそうでございますが、この新聞では、日本では犬が虐待されているから日本に英国の犬を輸出するなというようなことから始まって、たいへんなキャンペーンが始まっている。これに対しまして湯川英国大使のもとにその当時すでに五十通くらいのいろいろの英国人からの手紙が参っておったということが、外務省のほうに大使から報道されております。これに対して外務省は返事をお出しになっていらっしゃるようでございますが、非常に簡単な返事をなさっていらっしゃる。で、外務大臣はそのことを向こうにおいでになる前にお聞きになっていらっしゃったのでございましょうか。それから、向こうの新聞の報道によりますと、記者会見のときに、この話がある記者によって出てきたということも出ておりますが、外務大臣は向こうへおいでになる前に、そのことについてお聞きになっていらっしゃったかどうかという点と、それから、向こうの記者会見でどのような質問が出ましてどのようにお答えになったか、まず、それから承りたいと思います。

○国務大臣(愛知揆一君) 先般イギリスの定期協議に出席いたしますその前に、犬の虐待問題というものがイギリスで取り上げられているということは承知して参りました。

 それから、その次のお尋ねでございますが、お答えの前に関連して申し上げますが、この定期協議もずいぶん実のあるがっちりした日程で、ずいぶん多くの問題が取り上げられましたので、イギリス側からあるいはこの問題にも触れられるかなという心配を、率直に申しまして、持って臨みましたが、公式あるいは非公式の場におきましても、本件はイギリス政府側からは何もございませんでしたので、自然こちらも公式に発言することはございませんでした。

 それから、新聞記者会見は非常に大ぜいの人数でございまして、やっぱりいろいろの問題について質問ございましたが、この問題については私がクロスランド商相とやはり個別会談いたしまして、それに関連した質問として、輸出の問題の一つとして犬の問題をイギリスの商工大臣が何かあなたに発言はしませんでしたかと、こういう会見での質問がございましたから、それは事実何もなかったわけですから、何もありませんでしたと答えました。引き続いて、犬の日本における虐待問題が新聞で取り上げられているが、これに対してどういう感想をお持ちですかという趣旨の質問がございましたから、私は、日本人というのは、犬に限らず動物の愛護ということについては、国民感情として、決してよその国に劣らないと思っております。同時に、こういう問題が最も親善関係にあるイギリスにおいて取り上げられ報道されているということは非常に私は残念に思うので、事実をひとつはっきりこうこういう事情であるということを御説明をしたいと思っておりますと、それだけでこの応答は終わったわけでございます。

 それから、さらに私の意見を、それはイギリスでのあれではございませんけれども、つけ加えて申し上げますならば、この運動――運動といいますか――動きが起こりました背景や経過は二つの系統があるように思われるのであります。一つは、やはり犬のイギリスから日本への輸入、あるいは日本から他国に対する輸出、こういうことに関連する問題があるように思われます。それからもう一つは、きわめて、何といいますか、動物愛護という人道的というか、愛情のこもった純粋な気持ちからの運動と、両方あるように私には思われるのでありますが、いずれにいたしましても、私は相当の誤解もあるように思いますから、誤解を解いて実情をイギリスの愛犬家の人たちに知ってもらうということが非常に大事ではないかと思います。そこで、駐英大使館に対しましても、私から、投書などに対してはできるだけ丁寧に、とにかく日本における実情について説明をした返事を個別にまず出すことが必要である。これはすでにやっておりますということでありましたが、さらに努力を続けるように申してまいりました。それから、まだ詳しくこちらの事情は調べておりませんけれども、この誤解を解いたり、あるいは誤解でない面がかりにありとするならば、それに対する対策というものも考えるべきではなかろうかと思っております。

○加藤シヅエ君 外務大臣の記者会見では、非常にほかの問題も山積しておるし、たくさんの記者が来ておるので、特に日本における犬の虐待の質問が簡単に終わり、また新聞の報道によりますと、大臣は徳川時代の犬公方の話なんかなさったんで、非常に英国人はユーモアを好むので、そのお答えはたいへんおじょうずであったと思います。それでそれ以上追及されなかったのは大臣として非常におしあわせだったと思うんでございますが、実情をよく報告して誤解を解くというおことばがございましたが、その実情なるものは、これは日本ではたいへんなことなんでございます。その実情を、英国からはたびたび専門家が日本に来て、これを視察して、詳しくこれを報道しております。その報告は、単に犬をかわいがっている人たちであるということではなくて、これは人道主義的な立場から生命を大切にする国であるかどうかという観点から重視されるわけでございます。英国の動物愛護協会などは女王さまが総裁でいらっしゃって百二十年の歴史を持っておるというような国でございまして、その取り扱いなどについても十分専門的なありとあらゆる手を尽くしているわけでございます。そういうような協会の運動が英国にはいっぱいあるばかりでなく、オランダ、スイス、そのほかのヨーロッパの国にもいっぱいございます。またアメリカでもございまして、アメリカのある州などでは非常にきびしい法律を持っておりまして、犬を虐待するというようなことが起こりましたら、それこそ立ち入り検査をも許されているというようなことで、虐待した者は非常な厳罰を加えられるというような法律もできていて、そうしてそういう法律ができているということを一般の人は別にふしぎとも思わない。それはあたりまえのことだ、人間として命を大切にする、したがって、ほかの生きものの命をも大切にするのがこれが人道的な国家であるというふうに理解されているわけでございます。で、大臣の御認識はどの程度であるか私わかりませんけれども、お察しするところ、まあ、表面的にいい犬をかわいがっているというような意味で動物をかわいがっているというふうに御理解なさっているのかもしれません。英国から輸出して、日本でその犬を飼って、いま非常にそれがブームと言われるくらいはやっておりますが、そういうような犬は純粋な犬であり高価なものであって、その犬を飼っていらっしゃるような方はそれはかわいがるのはあたりまえでございますけれども、問題は、日本には動物に関する愛護のあるいは管理する法律がないために、野犬というようなものが非常に発生する。また、捨てネコというようなものも非常に多くて、その処置を規制する法律がないために、その扱い方が非常に残虐である。いまお手元に資料を差し上げてございますが、それが英文で書かれて写真入りで、ある大学でどんなふうに実験された犬が扱われているというその写真をごらんになっただけでも、これがわれわれ日本人の間にこういうことがあるかと思ってお驚きになるような全くひどい扱いでございます。これはもういまに始まったことでなくて、何回かそれが問題になっておりますが、大学の実験動物の場合にはどうしてこういうことをなさるか、やめてほしいというようなことが福祉協会あたりからしばしば行なわれておりますが、それに対してはいつでも予算がないということで片づけられておりまして、いまだにその残虐な姿が継続されているわけでございます。そういうことが全部そうやって向こうに報道されているのでございますから、大臣がもっと詳しく追及されたら、それはもうえらい目におあいになるところだったので、それ以上言われなくてたいへんよかったと、幸運だったと思うわけでございますが、私がさらに伺いたいのは、ちょっとその前に申し上げますが、日本の犬がこんなふうに扱われているということに対しての対処の方法は、動物愛護の法律を一日も早く成立させる以外に手はないわけでございます。それはまあ、いま日本の運動家の方々が一生懸命やって今国会にもぜひ超党派的な議員立法で出したいという運動が進められているわけでございますから、それをどうぞお心置きくださって、今後英国からそういうことを言われたときには、それはやはりお答えの中に入れていただかなければならないわけです。ただ、私が問題にいたしたいのは、英国で特にこういうようなふうにたびたびキャンペーンのような形でこういうことが報道される。英国の人々の犬やこういう生きもの、鳥でも、生きものの生命を大切にするという感情は徹底しておりまして、一部の人がかわいがっているだけでなくて、あらゆる場所で保護されている。こういうことが徹底しております。それを日本ではいたさないで、神戸の六甲山なんかに行ったらたいへんな捨て犬、野犬の状態がどうであるとか、それから、ことに七〇年の万国博覧会があるというやさきに、大阪それから神戸、西宮、こういうところの保健所、犬の抑留所で野犬をたくさん集めてきて、それを処理する方法がいかに野蛮であるかということは、これは現実の問題として、そこへ行けばだれでも事実を見るわけですから、これを何とも言いわけすることができないような状態で、博覧会に来た人がそういうことを知りましたら、一方で幾らうまい宣伝をしても、やはり心の中で日本人はずいぶん残虐だとか野蛮だとかいう印象が強く残るわけだと私は心配いたします。私が特に申し上げたいのは、戦後十年くらい、英国においては、戦争中の捕虜の扱い方が非常に残虐であったというので、日本人に対する憎しみ、日本人は残虐性が強いというようなことの憎しみが十年間ぐらいはどうも強く残っていたと思うのです。それが藤山さんが外務大臣のときなんか、あちらにその時期においでになりましてずいぶんえらい目におあいになったことも私承知いたしております。いまはそいうことは非常になくなって、日本の経済の発展に対して敬意を表しておる。ところが、いまはその次の時期に来て、日本は金だけうまくもうけるエコノミック・アニマルであるというようなところから、こういうような残虐性、動物に対する野蛮性というようなものが少しも直ってないじゃないかというようなことを通じて、日本に対する軽べつとか反感とか敵意とか、そういうようなものが一部の英国人の心の中に広がっていくのじゃないか。で、それは英国人だけでなくて、ほかのヨーロッパの国の中にも広がっていくのじゃないか。これは非常に私はおそるべきことだと思うのでございますが、外務大臣としてはそういうようなことをどんなふうに見ていらっしゃるか、知らしていただきたいと思います。

○国務大臣(愛知揆一君) 実はまだ帰りまして早早で、そこまで手が回らないのでありますけれども、実は厚生大臣も心配いたしまして、どういうことであったかという、何といいますか、照会もありまして、まだ厚生大臣とも実は相談する時間がございませんですが、今回のこういうことを機にいたしまして、私自身がそういう体験をはだに触れていたしましたので、ひとつ積極的に内閲の中にももちろんでございますが、ひとつ御協力いただきまして、近代国家らしき  私はやはり一種のシェイムであると思うのですね、率直に申しまして。善処いたしたいと思います。

○加藤シヅエ君 英国人の排日感情が起こる下地があるというような心配に対してはどんなふうにごらんになりましたか。

○国務大臣(愛知揆一君) これも率直に申しまして、こういうことが何かそういうことに関連して発展するおそれがあるかどうか、あるいはまたすでにそういう、何といいましょうか、アンダー・カレントがあるのでこういう動きがいつもあるのか、その辺のところも洞察していかなければなるまいと思いますけれども、私も藤山外相当時のこともよく心得ておるつもりでございますが、今回の印象といたしましては、政府筋も、あるいはそのほかの場所でも、いまの新聞記者会見のときのあれ以外には直接口に出されなかったけれども、これはまたイギリスらしいやり方ではなかったかと思いますので、私は公式にそういう苦情や抗議を聞かなかったけれども、それ以上に日本側としてはやはり心していかなければならない問題じゃなかろうかと存じます。いまのところ、日本人自身、人間としての日本人に対する排日、侮日的な動きはもう全部解消されたというか、非常に積極的な日本人に対する親善的気持ちというものが盛り上がってきているというふうに私は観察いたしました。これは政治的に言えば、労働党内閣ウィルソン総理以下の私どもに対する態度、あるいは保守党の方々の態度、それから、それ以外の王室の関係の方々、こういう方々の対日感情というものは非常によろしいので、九月の末にはブリティッシュ・ウイークが東京を中心に行なわれますが、これに非常なイギリス側としては期待をかけておるようでございますから、十分その好意にこたえなければならぬ、こう思っております。

○加藤シヅエ君 では、どうぞ外務大臣、この機会に日本がほんとうに人道主義的な立場に立つ文化国家であるという、そういう立場をさらにわかってもらえるように御努力くださることをお願いして質問を終わります。

(以下略)


第65回国会 参議院外務委員会 15号 昭和46年05月20日

(略)

○加藤シヅエ君 その次に、ペット・フードでございますが、先ほどの御答弁の中の国内生産の八千三百五十トンに対しまして、この関税が今度下がりますと、さらによけいの輸入が見られるということになるわけでございますか。

○説明員(吉岡裕君) 実は先ほど御質問のございました生産量について、私ちょっと数字を見間違えまして申しわけございませんですが、国内生産量は一万七千トンばかりございます。御訂正申し上げます。それで先ほど申し上げました数字がアメリカからのペット・フードの輸入量でございます。申しわけございませんでした。それから、ただいまの御質問、ちょっと私、聞きのがしまして失礼でございますが……。

○加藤シヅエ君 関税を引き下げることによってさらに輸入がふえるというお見通しでございますか。ペット・フードでございます。

○説明員(吉岡裕君) 現在ペット・フードのわが国の需要と申しますのが、所得の向上に伴いましてペットの飼育というのが非常に多くなっておりまして、しかも、最近はえさとして簡単にやれるということで、ペット・フード自体の需要が相当伸びてきております。したがいまして、この国内生産も並行的に伸びてきておりますが、輸入も、関税の引き下げということも一因にはなるかと思いますが、従来とも輸入のほうも伸びてきておるということでございますので、私どもは、国内生産も輸入も並行的に伸びていくだろう、こういうふうに考えております。

○加藤シヅエ君 ペットと申しますと、具体的にどういう動物でございますか。

○説明員(吉岡裕君) 犬またはネコということでございまして、大体そういうものだろうと思いますが、現在のところ、ペット・フードということで使われております商品の九割は一応犬用ということになっております。

○加藤シヅエ君 いま英国あるいはオーストラリアからだいぶ犬を輸入いたしておりまして、それがたいへんに問題になっていることは御承知だろうと思うのでございますけれども、この際、またこのペット・フードをよけい輸入をして、ペットを管理もしないまま非常にいろいろな問題を起こしている、そのペット・フードをさらにたくさん入れるというようなことは、これは非常に考えものだと思うのでございますけれども、現在その犬の輸入ということはどういうようになっているのですか。

○説明員(吉岡裕君) 犬の輸入につきましては、私、いま数字を持ち合わせておりませんが、聞き及びますところでは、輸入もかなりふえつつあるというように聞いております。

○加藤シヅエ君 それは自由なんでございますか。金額とか何か制限があるのですか。幾ら輸入してもかまわないのですか。

○説明員(吉岡裕君) 現在、犬につきましては、輸入割り当て制度等はとっておりませんで、自由に輸入できるということになっておりますので、その貿易上の制限はございません。ただ、御承知のように、狂犬病その他の病疫の問題がございますので、農林省の動物検疫所におきまして検疫をして、そのような心配のないものについて輸入を認める、こういう体制になっております。

○加藤シヅエ君 あまり心配ないこともないと思うのでございますが、いろいろ心配が今後も起こると思うのでございます。それで私は、この犬の輸入が国際問題として非常にいま問題を起こしつつございます。そしていま愛知外務大臣が陛下にお供して、この問題について非常にやかましいことを言う国々においでになるわけなんです。で、その場合、日本でペット・フードをさらにたくさん輸入して、またいろいろ問題を起こす犬をさらにたくさん輸入するというような、そうした放任したやり方をやっているということは、外務大臣としても、片一方で表面どういうようなことをおっしゃっても、片一方、日本に来てから、非常に適切でない取り扱いを受けている輸入犬を業者の輸入にまかせておくというようなやり方というのは、これは非常に私、考えなければいけないことだと思うのです。これに対しては、やはり法律というものが、特にこのペットの飼育についての管理の法律が必要であるにもかかわらず、その法律が今日までできていないために、これをどういうところで取り締まったらいいかということがどうもはっきりしないで問題があるわけでございますけれども、これは外務当局としても、これからが国際問題なんです。日本人が動物の扱い方に対しては非常に人道的でない、これを低開発国よりももっとひどいのじゃないかという問題でして、世界一の大都市の東京で犬にかまれて子供が死んだり、たくさんの人が咬傷――かみつかれてたいへんな被害を受けている。それに対して何も適切な管理がなされていない。あとからあとから追いかけてはおりますけれども、少しばかり犬を追いかけたところで、ふえるのが多いという状態。そこに持ってきて、なおどんどん輸入して、またペット・フードのほうも、税金が下がったから、またこれを入れるというようなことは、これはいま社会問題が起こっているその問題に逆行するものだと私は考えるわけでございます。これに対しまして、やはりただ農林省の問題ではなくて、外務当局の問題としてもこれはお考えになる必要があると、私はこう思いますので、外務大臣からどうぞひとつ御答弁をお願いいたします。

○国務大臣(愛知揆一君) 犬の問題については、先年私もイギリスでたいへん苦い経験をいたしまして、自来、ただいまもお話しのように、一つの国際的な問題として何とか根本的な対策を講ずべきであると考えでおりますが、率直に申しまして、そういうような前向きな意見が、なかなか現実のものとして通っておりません。幸いにして議員立法も非常に熱心な動きがございますので、私どもも大いに期待をいたしておるような次第でございますので、なお一そうそういう点について外務省といたしましても尽力いたしたいと思います。実はペット・フードのこの関税の譲許がその問題にまで関連して御指摘を受けるとは、うかつにも私、思いませんでした。たいへんどうも恐縮をいたします。御指摘をいただきまして、まことにありがとうございました。

(以下略)


第65回国会 参議院 内閣委員会、公害対策特別委員会連合審査会 1号 昭和46年05月21日

(略) ※注:環境庁設置法案についての質疑の最後の部分です。

○加藤シヅエ君 この法律案の中に、「環境庁の所管行政に関し職員等の養成及び訓練」ということが含まれているように拝見いたしました。これは非常に必要なことで、やはり日本ではたいへんおくれております。いまの鳥獣の保護にいたしましても、特に動物の保護というようなことは、単なる愛玩用の犬やネコの頭をなでるというようなそんな簡単なことではなくて、人間と一緒にこうした動物が住んでいくためには、専門的な知識を持った人が適正に管理するということが、これがちゃんと法律でもってきめられていないことにはたいへんなそこに被害が起こって、現に起こりつつあるわけでございます。御承知のように、昨日発表されましたけれども、東京都におけるこの一カ月に二百二十四人の人が犬にかまれた被害者である。これが、文化都市東京においてこういうことがあるということ、そして、たった五千五百二十一頭の犬が捕獲された。しかも、その七五%は飼い犬である。野犬ではなくて飼い犬である。飼い犬にしてこういうような事故を起こすということは、いかに人間と一緒に住んでいる動物の管理というものに対する適切な管理が行なわれていないか、知識の普及が足りないか、このためにたいへんな被害が起こっている。これはどうしてもこれに対する特別の立法がなされなければほんとうの管理はできません。そして、あちらこちらで――千葉県で小学校の五年生がこの間、五月の十三日に野犬にかみ殺されているんです。そういうような殺されたということまで起こっていても、どういうことをやっているかといえば、一カ月間――野犬何とか週間、掃討週間、東京都でもこの一カ月やっぱり犬に対する対策の週間とか、月間とか、一カ月たったらもうおしまいなんです。何にもそれから先の施策というものがなされていない。こんな状態でこれが文化都市であるかということを、だれしも気がついていることでございますので、私はこの環境庁が職員の養成及び訓練、特に動物を扱ったり鳥や何かの問題に対しての専門知識を持った職員を養成して、その身分をちゃんと保障して、これをテクニシャンとして各地に配属してこれを使わなければ、あとからあとから追っかけたり、その易しのぎの対策をやっているんではとうていできることではない。こういうことをするのは、幸い環境庁がこういうことも含めていらっしゃいますけれども、特に飼育している動物の適正な管理、家庭で密接に飼育している動物の適切な管理に関する法律というものが必要であるというふうに長官はお考えにならないか。また、これは議員立法として、もうここ十数年にわたってその動きが有志の議員たちによって進められているのでございますけれども、議員立法というたてまえから内容も充実しておりませんし、なかなかこれが審議されるという過程まで持ってくることができないような状態で、いまだにできないでたくさんの被害者がこんなふうに堂々めぐりをしているという状態でございます。幸い環境庁ができましたら、むしろ政府案としてこういうような法律をつくるべきではないか。長官はどういうふうにお考えになりますか。

○国務大臣(山中貞則君) そのとおりに存じます。

(以下略)


第67回国会 参議院 沖縄返還協定特別委員会 7号 昭和46年12月16日

(略)

○加藤シヅエ君 時間が経過いたしましたけれども、もうちょっと、もう一つだけ言わしていただきます。

 それは、国際的に日本人でさらによく理解してもらうためには、その残虐行為に結びつきまして、日本が動物に対しても非常に残虐であるというようなことが絶えず言われまして、愛知外務大臣なんかも、ロンドンに行かれたとたんにプレス・コンファレンスでそれを言われて、ひどい目におあいになったということを伺っております。必ずしも全部の人が日本で動物に対して残虐なことをやっているわけでは決してございません。けれども、日本には、動物を、ほかの国が持っているように、やはり人道的立場から情けをかけて、これを適切な管理をするという法律がいまだにできてないということは、これは国内で野犬の問題が処理できなかったりして困るだけではなくて、外国に対してもたいへんなこれはショッキングな感じを与えるのでございます。それで、これは外務大臣の御所管ではございませんで大石環鏡庁長官の御所管でございますから伺うのでございますが、最近山形の動物園のあのりっぱなライオンやなんかの動物が、えさ代が百万円できないというのであれを撃ち殺したというような写真が新聞に出る、あれは日本の子供たちにどんなむごい感じを与えたでございましょうか。そして、あれは外国へも、日本はたった百万円のえさをつくることもしないでこれを撃ち殺す、そういう残虐行為をする民族でいまだにあるか、こういうふうなたいへんなこれは対外的にも悪い印象を与えたと思います。

 そこで、私はかねがね議員立法でいろいろと奔走いたしておりますが、いまだに微力であるためにこれはできないので、幸い今度は環鏡庁に鳥獣保護課というものができておりまして、こういうことはやっぱり政府提案としてはっきりした、日本はちゃんと動物に対しても適正に扱っているんだ、人道的な日本人であるというその立場を示すために、これは政府提案の法律をお出しになる時期がきているんじゃないか、私はこういうふうに信じまして環境庁長官にお伺いいたします。

○国務大臣(大石武一君) いろいろと日本人が動物愛護に対する精神の欠けているような御批判もあるようでございますが、残念でございます。私は、日本人は大体人情の豊かな、愛情の豊かな民族だと思います。ただ、動物の扱い方、その飼い方あるいは表現のしかたがへたなために、あるいは訓練がないためにいろいろな混乱が起こると思います。そういうことでございますので、われわれは、このわれわれ日本人の愛情豊かな人間性というものをもっともっと正しく動物愛護の上にも、これをやり方がうまくいけるように、そのように考えたいと思いまして、できますならば御希望に沿うような動物愛護の法律もつくってまいりたいと考えておる次第でございます。

(以下略)

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