「日本版ファースト・イン・ヒューマン試験ガイドラインの徹底分析と動物愛護法改正の製薬業界へのインパクト」

※本稿は、NPO法人地球生物会議ALIVE会報「ALIVE」101号(2012冬号)に寄稿したものです。

※現在はALIVEには関わっておりませんし、活動も支持しておりません。

 

動物実験施設の届出制― 製薬業界には影響なし

 2011年11月9日に開催された、くすりネット、くすり勉強会共催の勉強会では、講師の海野隆氏が、動物愛護法改正についても触れるとのことで、参加してきました。

 結論から言うと、製薬業界については、届出制となっても問題はないだろうとのこと。おそらくきちんとしなければいけなくなってくるのはアカデミア(大学)のほうだろうというニュアンスです。しかし、すでに届出制が導入されている兵庫県の大学からも「まったく問題ない」という声を聞くそうです。立入りする人の教育は必要ですが、リタイア組を雇うなどすればよいというアイデアも出ていました。

 ほとんどの学会が非常に保守的で、法改正に反対する中、日本動物実験代替法学会だけは、進歩的な意見を表明していることで、ご紹介します。

代替法学会意見書要旨

1.3Rsの確実な実践を行うよう法を改訂する
2.3Rs実践のため、研究の目的を損ない限りなどの前提はすべて削除する
3.動物取扱業について、実験動物、畜産動物の例外規定を削除する
4.Refinementの担保に獣医学的な方法をとることを随所に追加する

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以上、誌面の都合上、寄稿は動物愛護法改正に関する部分についてしか書けませんでしたが、勉強会のメインは「ファースト・イン・ヒューマン試験」についてです。「ファースト・イン・ヒューマン試験」とは、開発段階の医薬品を人間に初めて投与する試験のことで、勉強会開催当時、日本でのガイドライン作成の作業が進行中でした(結果は下記参照)。ごく微量にしか投与しないマイクロドーズ試験をどう扱うべきかなどの議論がなされていました。

参考:
PDF 「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」について
PDF 「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンスに関する質疑応答集(Q&A)」について

イギリスで被験者に重篤な被害をもたらしたTGN1412事件についても、投与方法などに問題があったのであり、日本であればあそこまでひどい被害にはならなかったのではないかという話が出ました。ちなみに、TGN1412はあまりに症状が重篤であるため、サルに注射をしたらどうなるかという追試験は動物福祉上の観点から行うことができないとのことです。(既に医薬品として使うことはできないことは明白であり、そのような試験を行う経済的メリットもないもないと思います)

 
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