論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

  • 作者: 村松 秀
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 新書

 テレビをあまり見ないので、ベル研の論文捏造事件を扱ったNHKの番組自体を見ておらず残念なのですが、書籍化されたこの本の方を読みました(今ごろですが)。番組も数々の受賞をされているようですが、いや~、本もすばらしいと思います。シェーン本人が捏造について何か仔細を語っているわけではないので、事件の核心はまだベールの奥のような印象を残しつつですが、研究の不正についての論考などは、わかりやすくかつ考えさせられるものがあると思います。
この事件は、不正の規模が大きく、多くの人が追試を行うような分野だったからこそ捏造が発覚したわけですが、それでも時間がかかったとのこと。もし、誰も見向きもしないような分野の研究で小さな捏造を少ししただけだったら? ほんと、発覚しない可能性は高いし、意図的かどうかも判断つけづらいですよね・・・。
アメリカには研究不正について調査も行うORIという機関がありますが、バイオ系のみが対象とのことで(確かに、公衆衛生庁(PHS)から助成を受けている研究が対象ですもんね、忘れてた)、物理分野の研究であるこの事件は対象にはならないのだそうです。
捏造や不正の報道って、日本でもライフサイエンス系で突出して多いように思っていたのですが、やはり「そもそもバイオは他の分野に比べて、捏造や不正がきわめて多いのではないかということがかねてより指摘されていた」ということが書かれていました。
厳密な再現性を求められてきた物理学などに比べて、生物から得られるデータは、個体差などの理由もあってそもそもがアバウトであり、捏造が入り込みやすいというわけです。(ここ、動物実験はそもそもアバウトとも読めるかなぁ~?)
でも物理学系の実験も、「この施設でしか再現できない」的な時代になったことが、皆がこの捏造論文を信じた背景にはあったそうです。実際にはすごい機械なんて使われていなかったにもかかわらず・・・。
日本の旧石器捏造事件もひっくり返るほど驚いたけど、この事件も相当すごいですね・・・。