「薬について聞くことは、なぜほとんど間違っているのか」という下記の記事に、「この2カ月間で、予防医学の2本の柱が陥落した」という部分があり、スタチンというコレステロール降下剤に、心臓病の既往症がない人に対する予防効果はないというレビューが公表されたことが書かれていました。
Why Almost Everything You Hear About Medicine Is Wrong
http://www.newsweek.com/2011/01/23/why-almost-everything-you-hear-about-medicine-is-wrong.html
そんな大事なこと、報道されないのかな?と思ったら、海外ではいろいろ報道されていたんですね。こちらのブログに、各種報道や、そのコクランレビューの概要などが紹介されていました。
http://www.watarase.ne.jp/aponet/blog/110116.html
スタチンというのは、いわゆるコレステロール降下剤です。
なぜこの薬の話に反応してしまうかというと、動物実験代替法学会でも、一般市民向けに「動物実験を経て登場したすばらしい薬」として紹介されたことがあったからです。
でも実際には、すばらしいのはマーケティング戦略と売上げで、その必要性についてはかなり議論があるところだったんですよね。
例えば、こんなの。
コレステロール低下薬で大論争
「効果は薄い」と製薬会社を非難する声上がる

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080125/145406/?rt=nocnt
開発物語もドラマチック(?)で、ラットやマウスでは特に効果が認められなかったのに、高齢のニワトリで実験したらコレステロール低下効果が出た!というスタートなんです。
しかも、それをやったのが日本人なので、「すばらしい薬」の例にとりあげられやすいのだと思うのですが、一方で、コレステロール降下剤を飲ませる基準値の方を下げさせて、薬の収益を上げたというマーケティングストーリーの方も有名です。
疫学情報としては、コレステロール値は言われているより少し高めの方が健康というデータがあるそうで、ベジタリアンとしては「どーなんだろ、それ?」と思って、紹介していなかったのですが^^;(←おい)、こんな本もあります。

コレステロールに薬はいらない! (角川oneテーマ21)

コレステロールに薬はいらない! (角川oneテーマ21)

  • 作者: 浜 六郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 新書

コレステロール値については、医学会同士でもバトルしているようだし、素人が何か結論めいたことを言うつもりはないのですが、一言言いたくなってしまうのは、使うべきかどうかここまで議論になっている薬を、何も知らない人たちに「動物実験で登場したすばらしい薬」として紹介するのは、科学者としていかがなものなの?ということです。
といっても、げっ歯類では効果が出なかった薬ってところは、すごーく興味深いんですけどね┐(´ー`)┌
(ちなみに、「コレステロール値は高い方がいい」に対するベジタリアン側の反論は、ガンになってもコレステロール値は下がるので、コレステロール値の低い群の中には、すでにガンになっている人が含まれていたのではないか?そういう人たちを除けば、コレステロール値は低めの方が健康なはず、といったものがあるようです。この辺、きちんと調べたことはないので、あまり突っ込まないでほしいのですが^^;
個人的にベジタリアン(Vegan)になる段階で、コレステロール値について感じたことですが、単に肉を食べるのを止めただけでは、コレステロール値がそれほど下がった印象がないんです。中性脂肪は、がたんと下がるんですけど。不思議だな、なんでコレステロールはそんなに下がらないんだろ?と思っていたのですが、別に下がらなくていいんだ~とこの本を読んで少しほっとしました。
といっても、さすがに乳卵を本格的に止めたときには下がった記憶がありますが、それでもこの本に書いてあるような危険な値まで下がったことはないので、どうしたらそんなことになっちゃうのか、すごく驚きました。
最近は検査してないから、えらそうなことは何もいえませんが^^;)
ちなみに、陥落したもう一本の柱の方は、ビタミンDのために血液検査を受けることは無意味、だそうです。