過去のイベントレポートを順次アップ中です。

イベントレポート


その中で、去年の実験動物学会のレポートに、Cell誌の論文へのリンクを追加しました。
Environmental and Genetic Activation of a B rain-Adipocyte BDNF/Leptin A xis Causes Cancer Remission a nd Inhibition
Cell 142,. 52–64, July 9, 2010
http://www.cell.com/abstract/S0092-8674(10)00565-9
要するに動物実験ではあるのですが、マウスにたっぷりエンリッチメントを行った環境で腫瘍を植えつけると、通常の環境のマウスに比べて明らかに腫瘍の成長の速度が遅いという研究です。(どのような環境だったのかは、ビデオの中に出てきます。)
普通に読めば、「ガンにならないためには、脳みそを使う環境が必要なんだな?うんうん」となりそうですが、この実験、動物実験というものそのものへの疑問も投げかけたということで話題になったそうです。環境を変えただけで、実験結果が大幅に変わったわけですから……。
それに、普通の実験環境のマウスは乏しい環境下で育っているわけで、通常の人間の生活環境はあらわしていないとも考えられます。(腫瘍の成長が早いという意味では、実験には都合がいいのかもしれないですが!)
先行する論文には例えばこんなのとかがあったそうです。
Enriched environments, experience-dependent plasticity and disorders of the nervous system
Nature Reviews Neuroscience 7, 697-709 (September 2006)
http://www.nature.com/nrn/journal/v7/n9/abs/nrn1970.html
こういう結果は、「エンリッチメントを行うと、過去のデータとの比較ができなくなるから、行うべきではない」という主張に使われそうにも思いますが、その考えにしたがっている限り、いつまでも動物実験は「嘘っこデータ」を吐き出し続けることになるのではないかと思います。
例えば、「六畳の部屋に一生閉じ込められた人間」などを想像してみれば、それが標準的なモデルになるのかどうか、わかりそうなものだと思うのですが。
環境をよくすると、実験動物の病気が治ってしまう話は、下記のイベントでも出てきました。心臓疾患モデルでも同じような話があるそうです。
動物で精神疾患を忠実に再現できるのか?
日本実験動物学会第3回疾患モデルシンポジウム
「精神神経疾患のモデル動物とその応用」
(2010年11月)